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ムーン・ライト  作者: 武池 柾斗
第二章 残党編 
12/95

プロローグ

 進路も決まり、ひとまず落ち着きました。今日から投稿を再開させていただきます。


 さて、この『ムーン・ライト』も第二章からいよいよ本番に突入! といった感じです。


 更新頑張ります。


 よろしくお願いします。


 とある家の台所に、テーブルを囲む三人の姿がある。彼らの周りには食器棚やシンク、ガスコンロ、炊飯器などがある。

 ……ごくありふれた光景。

 テーブルを囲んで椅子に座っているのは、大学生ほどの外見をした二人の男女と、紺色のセーラー服を着た小柄な少女が一人。

 男はワイシャツ、首もとで緩められた茶色のネクタイ、黒色のスラックスを着用し、茶色がかったやや長めの髪をオールバックにして整えている。

 大学生のように見える女は、下はジーンズ、上はワイシャツ姿であり、こちらも髪の色は茶色がかっている。セミロングのその髪は肩を過ぎた辺りからウェーブしている。

 紺色のセーラー服を着た小柄な少女は、白いソックスと膝上十センチほどの丈のスカートを着用。彼女の黒髪は肩にぎりぎりかからないほどの長さをしている。

 少女の左隣には見た目大学生の女が座り、彼女ら二人の前には男が座っている。三人の食事はホワイトシチューである。

 台所の窓から見えるのは夜の暗闇だけ。少女はそれを確認すると窓から視線をそらし、テーブルの上を眺め始めた。

 右手にスプーンを持ったままの彼女が、テーブル中央に置かれた醤油や七味の容器を見つめていると、向かい側に座っている男が口を開いた。

「……どうしました?」

 少女は男に目線を向けた。男は何気ない様子で少女を見ている。少女は少し目線を下げ、首を横に軽く振った。

「あっ、ううん。なんでもないです」

「……そうですか」

 男はため息をついたようにそう言うと、自分の前に置かれているシチューに目を向け、右手に持ったスプーンを使ってシチューを食べ始めた。

 少女は右手にスプーンを持っていたが、シチューにはありつかず、じっと今晩の食事を眺めていた。

 沈黙が食卓を制している。

「……あの」

 少女は再び顔を上げた。彼女の呼びかけに、男はもちろんのこと、これまで黙々と食事に専念していた女までもが顔を上げる。

 少女は続ける。

「……山坂浩二が……力を取り戻したようですね」

 少女のその言葉に男と女は眉をひそめた。

「やはり、香子と出会ってしまったからなのでしょうか?」

 少女がそう問い掛けると、男は苦虫を噛んだような表情をしながらも、向かい側の少女に顔を向けた。

「……ええ。おそらくは」

 男が応じると、今まで沈黙を守り続けてきた女が口を開いた。

「でも……力を取り戻したのは浩二君の意思だと思うわ。香子ちゃんだけに理由があるわけじゃないわね」

「確かに。……しかし、彼女がきっかけであることは間違いないと思います」

 男はそう言うと、左手で自分のあごを触りながら、

「……浩二さんは、退魔師としての自覚と誇りを取り戻したのでしょうか。でないと、霊力が戻ってくるはずがありませんし」

 と言った。

「さあ、どうでしょうね。でも、とりあえず、運命の歯車が動き出してしまったのは間違いないわね」

 女は左下に目線を下げて男の問い掛けに答えた。

「ワタシたちが今までにやってきたことが全て水の泡になってしまいましたね」

「……でも、僕らが運命から逃げてきたことには変わりありませんよ」

「そうよね。でも、香子ちゃんも気の毒よね。私たちの都合で十年間もつらい思いをさせてしまって」

「それについては仕方のないことです。もう、過ぎたことを考えてもどうにもなりません」


 三人の間にわずかな沈黙が訪れる。


「……それより、香子さんはいいとして、浩二さんのほうは大丈夫なんですか?」

 男は向かい側の少女に尋ねた。すると少女は男に目線を向け、そのまま何度かまばたきを繰り返した後、

「大丈夫……って、何がですか?」

 と尋ね返した。

「彼、ちゃんと戦えますかねぇ?」

「……満月の夜は別として、普段のあいつじゃ無理でしょうね」

 少女はため息をつき、

「記憶もなければ、霊力の扱い方もほとんど忘れてます。あの繊細な霊力操作ができない山坂なんて、ただの足手まといです。話になりません」

 と、『山坂』という人物をさげすむように言った。するとやや俯いていた女も、男に目線を向けて口を開いた。

「それに、香子ちゃんも香子ちゃんで先走って戦っちゃうでしょうね。あと、浩二君に必要以上の期待をかけて彼に負担を与えてしまうと思うわ。……あの子、今、相当ハイになってるはずだから」

 女は再び目線を下げた。

「だって、十年間も苦しんで、ようやく大切な人に会えたんだもの。気分が舞い上がらないはずがないわ」

 女の言葉を聞いた男は、右手に持っていたスプーンを皿の上に置き、

「……つまり、二人とも問題あり。と」

 と言いながら背もたれにもたれかかった。彼は腕組みをし、「う〜ん」と唸りながら少しの間考え込み、

「はあ、なるほど。わかりました。今夜、みんなに連絡をとって、それから全員集まって話し合いをしましょう」

 と告げた。

 すると、少女は再び男を見ながらぱちくりとまばたきを繰り返し、

「話し合いって……何を話すんですか?」

 と尋ねた。

 男は上半身をゆっくりと起こし、少女と目を合わせた。彼の表情には、かすかな笑みが浮かんでいるようにも思えた。

「運命に逆らうための第一歩、についてですよ。詳しくは今夜の……そうですね、九時開始の話し合いで説明します。この作戦の実行はなるべく早いほうがよさそうですから。……例えば」

 男は一呼吸置いた。


「明日の夜、とかね」


 彼の言葉に、女と少女はお互いに目を合わせた後、首をかしげた。











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