表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真面目で何が悪い  作者: 桜庭


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/51

18話

 

 王都バルドブルクへの道のりを、カタコトと馬車で進む。


 馬車の御者に加え、二人の護衛役と身の回りの世話役としてドーリスが同行している。それでも尚広く感じる馬車は、きっとフンベルクに来た時よりも上等なものなのだろう。貴族の見栄なのか、リヒャルトの趣味なのかはわからないが、乗り心地の良さは言うまでもない。


 揺れる馬車の中、私は静かに目を伏せた。






 これから向かう王都バルドブルクは、コーネンプレッツェルの中では北方に位置する。フンベルク程ではないが、ヴァイツェンシュタットに比べると幾らか涼しい気候になるだろう。ブルク、と名のつく通り、いわゆる城塞都市で中心部は三重の城壁で守られている。

 その中心に、我らが国王レオンハルト王が居られる、バルド城がある。


 そして、バルド城と隣接する形で、王立学園アルバイテンは存在している。


 全寮制で、貴族を預かるが故に警備体制も厚い。

 そもそも王都の中心街へは、入る事は勿論、出る際にもめんど……基、厳重な審査がいる。都市そのものが、王族と学生を守る為の城と言っても過言ではないだろう。


 学生、というよりは、貴族の子——もっと言ってしまえば、魔力持ちの子を、だが。


 王位は代々魔力持ちが継ぐ。しかし、今のレオンハルト王には子供が居らず、親類縁者には魔力持ち——つまるところ跡継ぎがいない。

 故に、国は焦っているのだ。

 レオンハルト王も決して若いとは言えぬ歳になられる。そろそろお世継ぎを決めなければ、と。


 学園の立地は、こういう事があるからだろう。

 位の高い貴族の中で、魔力を持った賢い男がいないものかと、探しやすくしているのだ。コーネンプレッツェルの今後を任せられる、次期国王に相応しい若者を。


 …………まあ、いるんだけどね。攻略対象の中に。その男が。


 伏せていた目を開け、これから起こる様々なイベントを思い起こし、内心ため息をつく。

 面倒だなとか、関わりたくないなとかもあるのだが、何より、どうしようかな、という気持ちが一番強い。ちらりと視線だけで、左腕の刻印がある位置を見る。衣服に隠れてしまっているが、そこには確かにある。


 風の属性を持つ魔術刻印が。そう、風の。


 本当に、イベント……どうしようかな……。

 アメリアの魔力属性が水だからこそ、解決できたイベントが多過ぎる。ほぼ対極、最も水と縁遠いと言われる風の属性を持ってしまった私は、どうしたら良いのだろう。


 攻略対象たちの属性を一つずつ頭に思い浮かべ、私は静かに頭を抑えたのだった。誰一人として風と相性の良い属性を持っていないじゃないか!


 王都は日に日に近付いて来る。






 王都に着き、入学入寮手続きはとうに済ませた。もちろん、私ではなくドーリスが。荷物は寮で働く下女たちが全て運び入れてくれるとの事で、私は静かに明日の入学式を待つばかりである。


 学園まで送ってくれたドーリスたちは、最後まで本当に自分たちは要らないのかと確認して来た。


「伯爵家以上は、実家の従者を連れても良いとの規則です。せめて一人だけでも、」


「ドーリス、本当に大丈夫よ。私、これでもフォーゲル家に来る前は、なんでも自分でやっていたのだから。私の自主性を重んじて頂戴」


「しかし、アメリアお嬢様……お嬢様に万が一のことがあれば、旦那様に合わせる顔がありません」


「学園は、王城と同じくらい安全だと言われている場所よ? ここより安全な場所は、それこそレオンハルト王の御座くらいだわ」


 不服そうな表情を浮かべたドーリス。しかし、これまで越えて来た城壁の厳重な審査を思い出したのか、渋々といった様子で「そうですわね」と了承してくれた。


 手本のように美しくスカートを広げたドーリス。クリーム色の頭を下げると、彼女は門出の言葉を口にする。


「アメリアお嬢様。改めまして、王立学園アルバイテンへのご入学、おめでとうございます。明日の入学式、晴れの舞台をお目にかかれぬ事は至極残念で御座いますが、お嬢様の学園生活が栄えあるものである事を、従者一同心より願っております」


「……ありがとう、ドーリス。私、フォーゲル家の名に恥じぬよう頑張るわね」


「そのお言葉、旦那様もお喜びになるでしょう」


 ふわり、と顔を上げ、彼女は誰よりも愛らしく笑った。


「いってらっしゃいませ、お嬢様」


「いってきます、ドーリス」


 別れの挨拶を告げ、私は軽やかにスカートを翻した。

 本編スタートまでの猶予は六年間。



 さて、どうやって過ごそうか。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ