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ep.10 はじめての国で手繋ぎデート。ドラゴン王子と歩く未来へ

正式な婚約を経て、ついにドラゴン王国・ドラゴニアへ――

新しい未来に胸を躍らせるエルとシオンの、手つなぎ街歩きデート回です。

異国の文化と彼の優しさに触れて、彼女の心にも小さな変化が…。

ふたりの関係が一歩ずつ進む、ほのぼの甘めの幕間エピソードをお楽しみください!


朝焼けが静かに空を染めていく。


「準備、できたわ」


最後の荷物を抱えて、私は深く息を吐いた。


窓の外には、すでに用意された馬車と、待ってくれているシオンとファリスの姿があった。


「姫さん、出発するぞー!」


「ファリス、うるさいわよ……! シオン、待たせたわね」


「ううん。君が来てくれるだけで嬉しい」


照れくさそうに笑う彼の顔を見ると、少しだけ不安が消えていく。


私が選んだ道。この足で、未来を歩いていくんだ。



馬車に揺られて数日。王都を離れ、険しい山々を越えると――


「ここが……ドラゴニア?」


広がるのは、空と同じ色の巨大な湖。その周囲に築かれた、空へ伸びるような白い城。


その美しさに、思わず息を呑んだ。


「シオン、ここがあなたの国……?」


「うん。君を迎えるために、少し飾りすぎたかもしれないけど」


「……素敵」


本当に、夢みたい。


だけど、どこか現実離れしたその景色は、まるで“異界”に足を踏み入れたようで。


(ドラゴン族の世界って、こんなに……荘厳なのね)


「ようこそ、ドラゴニアへ。僕の妻として、女王として――君の居場所だよ、エル」


胸の奥が、熱くなる。



入城後、盛大な歓迎を受けたのち、私はひとときの休息を与えられた。


「ふう……疲れたけど、すごく優雅な空気。なんていうか、どこか“野生”も感じるのよね」


「そりゃあドラゴンだしな、俺たち」


「……なんか、ちょっと怖くなってきたかも」


「平気さ。怖くなったら俺が助けてやる。シオンには内緒でな」


「……冗談でも頼もしいわ、ファリス」


ドラゴニアでの日々が、どんな未来を連れてくるのかはわからない。


でも今は、この心の高鳴りを信じて、踏み出そう。


――私はもう、ひとりじゃない。

「さあ、今日はドラゴニアの街を案内するよ」


そう言って、シオンが差し出した手を私はぎゅっと握った。


「正式な儀式の前に、君にこの国を好きになってほしくてね」


「うん、楽しみにしてたの。シオンと街を歩けるなんて初めてだもの」


城を出ると、私たちは手をつないだまま、城下町へと歩き出す。


まず目に飛び込んできたのは、ドラゴンの鱗を模したような屋根の建物たち。

淡い青や紫の石材で造られた街並みは、どこか幻想的で、空の色と溶け合っていた。


「すごい……全部が異国って感じ」


「このあたりは水竜の一族が多く住んでいて、建物も涼しげだろ?」


「ほんと。空気まで透き通ってる気がするわ」


そう言いながら、ふと香ばしい香りが鼻をくすぐる。


「……この匂い、何かしら?」


「ふふっ、気づいた? あれは“火竜のパン屋”さ。香辛料をふんだんに使った、ちょっと刺激的なパンなんだ」


「お腹空いてきたわね。……買ってもいい?」


「もちろん。ここの焼きたては絶品だよ」


シオンが手際よく金貨を渡し、渡されたパンはほんのり赤く、見た目からして少し辛そうだった。


「じゃあ……いただきます」


ひと口かじると、外はカリッと香ばしく、中からほんのり辛いソースと甘いチーズがとろけ出す。


「んっ……! なにこれ、美味しい! すっごく香りが豊か!」


「気に入ってくれてよかった」


シオンの嬉しそうな顔に、私も自然と笑みがこぼれる。


その後も、空飛ぶドラゴン用の交通台を見たり、空中庭園の小さな湖で涼んだりと、観光はどれも新鮮で――


「ねぇシオン、ここって……デートって言ってもいい?」


私の問いかけに、彼は一瞬だけ目を見開いたあと、頬を少し赤らめてうなずいた。


「もちろん。今日は君を笑顔にする日だもの」


そんな風にまっすぐな言葉をくれる彼に、私はちょっとだけ胸を押さえる。


(……もう、“好き”なんて言葉だけじゃ足りないくらいかも)


夕暮れどき、私たちは最後に城の高台にある見晴らしのいい場所へと登った。


「ここから見るドラゴニアの夜景は格別なんだ」


日が落ちると、湖面に反射する街の光が星のように輝き出す。


「綺麗……」


「ねぇ、エル。ここで約束させて」


「……なに?」


「君を必ず、この国で一番幸せな花嫁にする」


少し緊張した声とともに、そっと私の手を握る彼の指に、どこか震えを感じた。


そのぬくもりごと、私は両手で包み込むように握り返す。


「……信じてる。だって私も、あなたの隣で、世界一幸せになるつもりだもの」


その瞬間、彼の金の瞳が夕焼けに照らされて、まるで宝石のように煌めいた。


――新しい生活は、優しい風とともに、静かに始まっていた。

「ねぇ、今回ってデート回でいいのよね?」


「……うん。手もつないだし、パンも一緒に食べたし」


「でも、相変わらず男としては…もがッ」


「シオン、そんな真っ黒な色のパンどこから出したの?」


「ちょっと、燃やしただけだよ。」


「ボリボリ…シオン、食べ物を無駄にしたらダメなんだぜ。」


「大丈夫なの? ファリス。パンではありえないような音鳴ってるけど。」


「ああ、姫さんは知らないだろうけどこいつの幼馴ーゴフッ」


「シオン! ファリスが死んじゃう!」


「これぐらいで死なないよ。」


「なら、いいけど。おさななってどういう意味?」


「そんなこと言ってた? さぁ、そろそろ行かなくちゃ。」


「シオン、腕引っ張らないでー!」


「…ゴホ。ブクマ…増えて嬉しいぜ。

 できたら俺のファンになってくれー!

 ブクマが俺の恋人だから。……バタン」


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