ep.4 改訂前 陰謀と王子との出会い
いきなりですが、私、婚約しました!
誰とって言われても…名前以外知りません。
性格?身分?素性?そんなの関係ない!
だって顔がタイプだったから…
今回は、超絶面食いな主人公が出会って3秒で求婚されて、さらに即答でOKするという、ハイテンション婚活(?)回となっております。
もちろんお兄ちゃんもエルには激甘です。
何度目かの気絶から目覚めたとき、ふと不安が頭をよぎった。
リヴァリア王国・王城の一室。
閉ざされた謁見室で、レオナルド王子は冷えたワインを口にし、静かに窓辺に立っていた。
「計画通り、婚約破棄は完了。王子の評判は多少落ちたが……許容範囲だな」
窓の向こうには何もない。だが、彼の目は何かを見据えるように遠くを眺めていた。
「“あの娘はやはり地味で鈍い”という印象を植えられたのなら、それで十分」
そこへ、控えめに扉がノックされる。
「お呼びでしょうか」
現れたのはエルの実兄、ジル。高慢な態度は影を潜め、レオナルドに恭しく頭を下げる。
「ああ。婚約破棄の場で姉を焚きつけてくれて助かった」
「王子こそ、感謝します。これで姉の評判は地に堕ちました。領主にもなれず、価値のない女に成り下がったでしょう」
ジルはほくそ笑む。時期領主としての地位が確実に近づいたと確信していた。
レオナルドもまた、不敵に笑う。
「お前が領主になった暁には、後ろ盾は任せておけ」
「ありがたきお言葉。……で、本日のご用件は?」
「お前には知っておいてほしくてな」
そう言って、レオナルドは部屋の隅にある厳重に封印された棚に手をかける。
カチャリ、カチャリと音を立てながら鍵を開けていき──取り出したのは、古びた一冊の書物だった。
「……それは?」
ジルの問いに、レオナルドは本を開いて一枚のページを示す。
『リリシア・ルキフェル──封印。
女神の力を奪うことに成功した記録。』
「これは、過去に神界から人の姿で降りてきた女神の名だ。
そして同時に、力を奪われ封印された哀れな存在の名でもある」
ジルの手が震えた。
「……まさか、それが姉と?」
「可能性はある。だが“今はただの人間”だ。記憶さえ戻らなければ、女神の力も眠ったまま」
「では……万が一、記憶を思い出したら」
「そのときは……。そうならないよう、お前には“姫を田舎娘のままにしておく”役割がある」
ジルは静かに膝をつき、深く頭を垂れた。
「承知いたしました。今後も婚姻の話も政からも、遠ざけてみせます」
レオナルドは満足げに頷く。
「頼んだぞ、弟君」
──
一方その頃、神界。
森の奥、午後の光が柔らかく差し込む白い小道を、アスガルドがご機嫌に歩いていた。
「神界と人間界って、時間の流れは違うの?」
手を引かれながら、私はずっと気になっていた疑問を口にした。
「んー? 変わらないぞ。それよりこの先に面白い湖があるんだ!」
振り返ることなく、先へ進むアスガルド。
(よかった……)
時差のようなズレがないと知って、少し安心する。
(そろそろ……帰らなきゃ)
「その湖も気になるけど、私、元の世界に戻りたいの」
「エルは神界でお兄ちゃんと暮らすんだろ? 帰らなくていいじゃないか!」
「そういうわけにはいかないの。私にはやるべきことがあるから」
「えぇ〜〜……エル、帰っちゃうのかぁ……」
アスガルドは今にも泣きそうな顔になる。少し後ろめたいけれど、やっぱり今は帰らなければならない。
「また戻ってくるから。ちょっと様子を見に行くだけだよ!」
「本当に……戻ってくる?」
「もちろん。会いにくる。だから、その時に湖に連れて行ってよ!」
「……よしっ。じゃあ、これをやるよ」
差し出されたのは、温かみのある木製のブレスレットだった。
「これ……?」
「お兄ちゃん特性のエル専用転移装置だ。好きな場所へひとっ飛び!」
「なにそれ便利すぎる! さっすがお兄ちゃん、大好き!」
「えへへ……エルに“大好き”って言われたら、お兄ちゃん、何でも作っちゃうぞ!」
もじもじと照れる彼に思わず笑ってしまう。
(ほんと、チョロい神様だなぁ)
「じゃあ、一旦帰ろうかな。じゃあね!」
「エルっ! ま、待っ──!」
アスガルドの声を背に、私は光に包まれて姿を消した。
──気づけば、実家の門の前に立っていた。
(……ほんとにすごい、このブレスレット)
けれど、そこにいたのは見知らぬ二人の男だった。
「……誰?」
私の小さな呟きに、二人の視線がこちらに向く。
一人は、柔らかな茶髪に、明るい金の瞳。
風に遊ばれるような髪と、飄々とした笑みを浮かべた、どこか軽やかで掴みどころのない青年だった。
そしてもう一人――
その姿を見た瞬間、時が止まった。
(……え。なにこの人……綺麗すぎる)
白磁のように滑らかな肌、翡翠色の瞳、透き通る長い睫毛。
王族のような気品と、近づきがたい静けさを纏ったその青年は、まるで神話の中から現れたようだった。
銀色の髪が風に揺れるたび、空気が少し変わる気がした。
(あれは……王族。それも、この辺りの小国のレベルじゃない)
彼もまた、私を見つめていた。
互いに言葉も忘れるほど、ただまっすぐに――
風が吹く。木々が揺れる。
世界が、私たち二人だけの空間になったような錯覚さえ覚える。
「……君は?」
低く、けれど穏やかに空間を破ったのは、彼の声だった。
私が答えられずにいると、彼はふと微笑み、名乗った。
「先に名乗るべきだったね。僕は、シオン」
どこか震えるような声。
でも、その瞳はまっすぐに私を見つめていた。
私もまた、その瞳をまっすぐに見返す。
心の奥が熱くなるのを感じながら、ゆっくりと名乗り返した。
「私は……エルミナ。エルと呼ばれています」
その瞬間、彼の瞳が揺れた。
驚きと、確信と――ほんの少しの安堵。
「エルミナ……セレフィーナ家の令嬢だね」
その言葉に、私は思わず息を呑んだ。
彼は、私を“知っていた”。
けれどそれは、過去の記憶ではない。今この瞬間に、何かが繋がったような――そんな不思議な感覚。
(どうして、名前を知ってるの? どうして、こんなに優しい目で……)
聞きたいことは山ほどあるのに、言葉が出てこなかった。
ただ一つ、確かなのは――
彼もまた、同じ気持ちで私を見ているということ。
そう思わせるだけの“何か”が、あの瞳にはあった。
「ねぇエル。君は、僕のこと……知ってたの?」
「え? 全然知らないけど?」
「知らなかったの⁉︎ なのに、どうしてプロポーズを受け てくれたの?」
「顔が好きだから。」
「…‼︎嬉しいよ。僕も君に一目惚れしたし。同じだね。」
「おいシオン、お前マジでそれでいいのか?
この姫さん、ちょっとヤバそうだぜ?
それに、お前姫さんと元から結婚する気だったじゃん か」
「ファリス! 余計な事を言うな。
あと、エルに向かって酷い事を言うな‼︎」
「この人だれ?(……っていうか、こっちもイケメン)」
「ファリス。僕の側近だよ」
「よろしくな、姫さん。で、あんた、変わってるって言 われたことないか?」
「ファリス! 距離が近い。エルに近づくな‼︎」
「……ゾッコンかよ。
あーあ。俺も恋愛したくなってきたな。
――あ、ここまで読んでくれてありがとな。
シオンたちと、オレのこと、今後ともよろしくな!
もしよかったら、ブクマや評価くれるとうれしいぜ‼︎」