改訂前 2自称兄の神様と神界へ!そして龍の国の王子が求婚⁉︎
前回はまさかの公開婚約破棄!
でもエルミナは負けません!
今度はイケメンの“自称兄”に神界へ連れ去られ――!?
そして同じ頃、リヴェリア王国には謎のイケメン王子が……⁉︎
波乱の第2話、始まります!
問答無用で手を掴まれた私は、光に包まれていた。
(ま、眩しすぎるッ……!)
目を開けていられないほどの強い光。ふわりとした浮遊感に、思わず叫ぶ。
「どこに連れていくつもりなの!? 離してッ!」
突然の事態にパニックになって暴れるけれど、鋼のように鍛えられた腕はびくともしない。
「大丈夫だ、エル! 怖くないぞ? ほら、もう着いた。目を開けてみろ!」
言われるまま、恐る恐る目を開けた瞬間――私は息を呑んだ。
そこはまるで、神話に描かれる理想郷だった。
風に揺れる木々は優しく鳴り、光は宝石のようにきらめいている。花々の香りが風に乗って舞い、空気は透き通るように澄んでいた。なのに、どこか時間の流れだけが曖昧で、すべてが夢のようだった。
「すっごく……綺麗……」
一瞬、さっきまでの混乱すら忘れて見惚れてしまう。
けれど——。
「今日から、ずっと一緒だぞっ!」
バカでかい声とともに、顔のいい男が私の手をぶんぶんと振り回してきた。
「ちょ、やめて! 気持ち悪くなるってば!」
「そうか、すまん!」
即座に手を放すあたり、悪気はないらしい。
でも、いきなり誘拐してきた人間(?)にしては、あまりにも軽すぎる。
「で、ここはどこ!? あんた誰よ!」
もう限界。面食いな私でも、この状況はさすがにブチギレた。
「エル! そんな怒らないでくれよ〜。ここは神界で、俺はアスガルド。そして、お前のお兄ちゃんだ!」
「……知らないんだけど。私の兄は、根暗で意地悪で、意地汚くて……っ!」
「お兄ちゃんは、意地悪なんかしないぞ?」
「それは、あんたじゃない!
私の、本当の兄よ!」
気がついたら、叫んでいた。
(王子に笑い者にされ、兄は慰めもしないで黙っていた……そのあと、いきなり誘拐……)
さっきまで封じ込めていた感情が決壊する。
あの最悪な舞踏会の記憶がよみがえり、私は涙をあふれさせた。
「私は……ただ、一生懸命頑張ってきただけなのに……。
家のため、国のため、王子に恥をかかせないように……全部我慢して、やってきたのに!」
兄は褒めるどころか妬んでいて、王子は見た目しか見てくれなかった。
誰も、私の努力を見てくれてなんかいなかった。
「ドレスなんて、領民のためにはならないの!
私は……綺麗に着飾って拍手されるより、役に立つことをしたかっただけなのに……!」
ドレスの端を握りしめる指先に、爪が深く食い込む。けれど痛みなんて、どうでもよかった。
「うわっ、泣くな泣くな! えーと……欲しいものは!? なんでもやるぞ!? お兄ちゃん、頑張るからな!?」
アスガルドは焦ったように私の頭を撫でてきた。
その手は、不思議とあたたかい。まるで、全部受け止めてくれるような……そんな感覚がした。
「……欲しいものって、なんでも?」
「お、おう。エルが泣き止んでくれるなら、何でもやるぞ。お兄ちゃんは神様だからな!」
「……神様?」
その言葉に、さっきまで滝のように流れていた涙が、ぴたりと止まる。
(冗談かと思ってたけど……もしかして本当に?)
この空間の神々しさ、彼の放つ不思議な雰囲気――全部がそう思わせるだけの説得力を持っていた。
「エルは神様が好きなのか?
お兄ちゃん、神様でよかったな!」
あくまでノリで言っているのかもしれない。
けれど、その笑顔を見ていると、なんだかもうどうでもよくなってしまう。
(神様が好きってわけじゃないけど……この人、嫌いじゃないかも)
「……本当にあなた、神様なの?」
「そうだぞ! 可愛い妹のエルのお兄ちゃんは神様だっ! 絶対に守ってやるから、安心しろ!」
にかっと笑い、親指を突き立てるアスガルド。
その顔を見た瞬間、心がふっと軽くなった。
「じゃあ、私も神様にならないの?」
冗談のつもりだった。
でもその一言に、彼の笑顔がふっと消える。
「……ああ。そうだな」
トーンが、がらりと変わった。
「え……なに?」
突然の変化に戸惑っていると、彼は静かに目を伏せた。
「……昔、俺には妹がいた。お前にそっくりで、よく笑って、よく泣いて……。
俺の自慢の妹で、優しい神だった」
アスガルドは、ぽつりとぽつりと、遠い記憶を語り出した。
***
一方その頃、小国〈リヴェリア王国〉。
城門を見下ろす丘に、ふたりの異国の男が立っていた。
ひとりは、透き通るような白い肌に翡翠の瞳を持つ、美しすぎる青年。
「……急がねば。婚約が成立してしまう。彼女を、必ず妃として迎えねば」
隣に立つのは、軽薄そうな茶髪の青年。
「マジでここ? 田舎すぎない? 城もちっさ!」
「やめろ、ファリス」
「でもさ、シオン。顔も知らない子に求婚って……王子の器だわ」
「……“王子”はやめろ」
「へいへい。じゃ、行きますか。未来のお妃様に会いに」
――それが、龍の王子との運命の始まりとも知らずに。
「お兄ちゃん、私って一体?」
「唐突だな。エルは。
さすが、俺の妹だ。」
「何言っても褒めてるよね。」
「俺の妹なんだから、当然だ!」
「まぁ、いいや。
それで、私は神様なの?」
「エルは、神様じゃないぞ?」
「全然会話にならない…。
わざとはぐらかしてるでしょ。」
「ま、それは次回のお楽しみだ!」
「じゃあ、私の実家に向かってきてる青年は誰?」
「何!?エルの恋人か?そんなのお兄ちゃん許さないぞ!」
「私は婚約破棄されたばかりで恋人なんていません。」
「そ、そうか。
ええとほら、ブックマークしてくれた人がいるぞ?」
「本当⁉︎ありがとう。
これからもよろしくね!」