ep5 ドラゴニア王子と初対面ですが、婚約しました。
このエピソードは、以前掲載していた同タイトルの第5話を改訂・再構成したものです。
よりテンポよく、感情の流れを意識して読みやすく仕上げました。
今回は、リヴェリアの姫・エルと、ドラゴニアの王子・シオンが出会うエピソードです。
エルとシオンの「運命的な出会い」と「一目惚れ」の感情が、より自然に伝わるように心がけています。
エルの“面食い設定”や、照れ屋な王子シオンの真剣な婚約申し出、そして──それをぶった切るチャラ男ファリスの登場。
では、どうぞお楽しみください!
「私は……エルミナ。エルと呼ばれています」
その瞬間、彼の瞳が揺れた。驚きと、何かを確信したような光がそこにあった。
「エルミナ……セレフィーナ家の令嬢だね」
セレフィーナ家であることを伝えていないのに、彼は知っていた。
不思議と嫌悪感はなかった。むしろ、心のどこかが温かくなる。
(……運命を感じた、なんて。安っぽい言葉だけど、今の私には一番しっくりくる)
喜びをかみしめるように、私は彼の翡翠色の瞳をじっと見つめた。
彼は視線を外し、ひとつ息をつく。
(……たぶん気のせいだと思うけど)その頬が赤く見えた。
そして──まるで腹を括ったように、私の目を真っすぐ見て口を開いた。
「僕は、シオン=ドラグニア。ドラゴニア王国の第一王子です」
(……えっ)
身分の高い人だとは思っていた。けれど、まさか王子、それも大国の第一王子だなんて──。
「あなたに会いに来ました。……婚約を申し込みたくて」
(……は?)
一瞬、耳を疑った。
けれど彼の顔は真剣で、緊張を押し殺すように唇を引き結んでいる。
「き、急すぎましたよね……」
あたふたと口元を隠す仕草も可愛らしくて、けれどその視線だけは私から逸らさなかった。
「どうして……私なんですか?」
私はただの小国の姫。しかも婚約破棄されたばかりの傷物。
俯きそうになる私に、彼は目線を合わせ、まっすぐに言った。
「信じられないかもしれませんが……あなたを一目見た瞬間、心が決まったんです。
あなたが誰であろうと、関係なく──婚約を申し込みたいって」
震えるような声。でも、隠しきれない真剣さがあった。
「と言いましたが……本当は、あなたが婚約破棄されたと聞いて連絡を取るつもりでした。
でも、一度会ってみようと思って……来ちゃいました」
照れたように頬をかく仕草に、私は思わず固まる。
(え、ちょっと待って)
シオンと会話したのは、名乗り合っただけ。なのに心臓がうるさい。
無意識に彼の顔をじっと見てしまう。
(顔……良っっ!)
それに、照れ笑いがとんでもなく可愛い。
身分も完璧。前の婚約者より何倍も高位。
(なにこの人、最高すぎない?)
そっと息を整え、私は微笑んだ。
冷静に考えようとしたけれど、やめた。
(仕方ないわ。だって私面食いだもの。)
心の中で言い訳をして、私はシオンに向かって口を開く。
「まだ会ったばかりなので、ひとまず……形式上の婚約なら、受けてみてもいいですよ」
本当は勢いで婚約しても良いと思う気持ちもあるけれど、シオンの事を知らないし両親の許可を得られるかもわからない。
(さすがに強気過ぎたかしら…)
一瞬の沈黙。シオンの様子に不安になったけれど、それは杞憂だった。
「……嬉しい。ありがとう!」
ぱあっと顔が明るくなり、真っ赤に染まった。
「形式上でもいいの?」
「今はそれで充分だよ。あとは僕が……君に、正式な結婚を受け入れてもらえるように努力すればいいだけだから」
あまりに自然に“結婚”と言われて、今度は私の方が赤くなる。
「……私が婚約破棄を求めたら?」
「その時は、受け入れるよ」
「……そう」
「でもね──」
「でも?」
「そうならないと思う。僕は全力で、君から正式な婚約を勝ち取ってみせるから」
そう言って笑った彼の顔に、また心臓が跳ねた。
優しげな顔の奥にある、王子としての誇りと少しの意地悪さ。
(私、きっとこの人を好きになる)
いままで誰にも、こんな風に「もっと知りたい」なんて思ったことはなかったのに。
──そんな空気を、ぶった切る声が響いた。
「いいところ、申し訳ないんだけど──」
「……誰?」
振り向いた先には、明るい茶髪を無造作にかき上げ、軽そうな笑顔を浮かべた青年。
顔立ちは悪くない。けれど、あまりに軽薄そうで逆に印象的だった。
「俺はファリス。よろしくな、姫さん」
「ええと…エルミナよ。よろしく。」
(だから、誰なのよ…)
名前を教えて欲しいわけではない。
混乱する私に、シオンが付け足す。
「ファリスは、僕の側近。
軽そうに見えるけれど優秀な男だよ。」
「褒めてくれありがとな。シオン。
そーゆーわけで、これから俺と姫さんは長い
付き合いになるってわけだ。」
「どうして私があなたと長い付き合いになるのよ。」
「なんでって…シオンと結婚するんだろ?」
「…正式な婚約もまだしていないのだけれど。」
「え?そうなのか?シオン。」
ファリスは驚いたように、シオンを見る。
「まだ、ね。
でも、そう遠くないうちに婚約まで漕ぎ着ける
つもり。」
シオンは少しふざけたように私を見た。
その笑顔に私は俯いて赤くなることしか出来なかった。
「やっと出番がきたーっ! 待ちくたびれたぜ。なあ、シオン?」
「ファリス、そういうこと言っちゃだめだよ。
皆さま、読んでくれてありがとうございます」
「お、そうだな。読んでくれてありがとう!
これから俺のいいところがどんどん出てくるから、楽しみにしててくれよな!」
「……そんなところ、ないわよ」
「姫さん、ひでー」
「ひどくないわよ」
「そうだよ、エルはひどくない。
あ、エルって呼んでもいいかな……?」
「え……うん。いいよ」
「ありがとう……」
「……」
「なに二人の世界に入ってるんだよ! 俺を置いていくなーっ‼︎」
「ご、ごめん……」
「謝らなくていいよ。……虚しくなるだけだから」
「ごめんね?」
「……俺も婚約者ほしくなってきた」
「皆、ブックマークもありがとう!
僕もエルも、ファリスも、とっても嬉しいです。
ぜひ、今後ともよろしくお願いします!」




