14話
一週間はあっという間に過ぎ去った。俺はいつも通り生活し、学校が終わってからの時間は全てアストロに費やしていた。
しかし意外だったのは、ジ・エンドにログインしてもレイヴを除くワルキューレからの直接的な接触がなかったことだ。レイヴを倒したことの恨みは買った様で、クエスト発注してまで指名手配されてはいたが、同時に俺が神器持ちであることもバレているようで、挑んでくる輩はいなかった。
「ふう」
今日も今日とて東の廃都で狩りをしている。3時間プレイして戦果は剣士3人、ランサー2人、そしてガンナーが10とちょっと。次の獲物を探していると、視界上にメッセージ通知が表示された。ヴァルキリーからだ。
『今日のアップデート情報公開の生放送フェス、暇であれば一緒に参加しませんか?』
内容を一目確認して、脳内で予定帳を開く。今日も現実での用事はないはずだ。
『いいよ』と返信するとすぐに既読がついた。しかし次のメッセージが到着する前に、目の前に槍が降ってきた。
「のわああっ!?」
「見つけたわよっ!!」
コンクリが吹き飛んでクレーターができ、戦闘開始のメッセージとHPバーが表示されるが、そこに表示されたのは見慣れた名前だった。
「なんだレイヴか」
「何よ、不満なわけ?」
「ヒルデが強襲してきたかと思った」
槍を地面に突き立てて腕を組み、尻もちをついた俺の目の前で仁王立ちしているのは、6人に増えた俺のフレンドの一人、レギンレイヴだった。
「なんか用?」
「私とフェスに行きなさい」
「断る。先約があるんでね」
そういった途端レイヴの顔に動揺が走る。こいつは何を考えてるんだか。
「まさかあの女!?」
「……ちげぇよ、リアルの友達だ」
「あんたに友達なんていたのね」
「ぶっ殺すぞ」
レイヴのこめかみにショットガンの銃口を突き付ける。図星だったが、念のためにヴァルキリーのことは伏せておく。
「まあ、今日は無理だ。どうせまた明日から攻略が始まるんだ、いいだろ」
「ええ、しょうがないわね」
ため息をついたレイヴは槍を掴んで飛んで行った。ふと思い出してヴァルキリーのメッセージ画面を見ると、新たに着信が一件入っていた。
『噴水広場で黒い服を着て待っています』
何で毎回スパイ映画の報告みたいな待ち合わせをするのだろうか。
「女運に恵まれねえな」