第三話 フルフルの封じ方(簡易版)
「悪魔……フルフル?」
私は落ちて来た本を手にとった。
ページをめくると、最初のページに鹿の顔が描かれている。
「やっぱりさっきのバケモノのことじゃない?」
栗原さんが本をのぞき込んで言う。
体育座りをしたままのレミナは
「やだぁ、悪魔なのに名前がなんかカワイイ!」
なんて笑ってる。
次のページをめくると、そこには
『フルフルの封じ方(簡易版)』
と書かれていた。
「簡易版?」
「正式な方法じゃないけど、簡単にできる方法ってことね……信じていいのかしら」
「何をしたらいいのぉ?」
「んーと…
【まずはフルフルを三角形で囲むべし。
そして三角の頂点でそれぞれ三つの呪文を順番にとなえるべし。
★テイヘンカ
★ケルタ
★カサワル二
さすればその姿は天使に変わり、封じた者の願いは叶えられるであろう】
…だって」
私がページを読み上げると、レミナが即座に手を上げた。
「じゃあ、あたしが『ケルタ』をとなえる!一番覚えやすいから」
「担当を決めた方が良いのかな?だったら私が『テイヘンカ』ってとなえるね」
「えっ!?ちょっと待って!私達があの鹿を封印するの!?」
慌てた様子の栗原さんに
「だって、封じた者の願いは叶えられるって、書いてあるでしょ?
フルフルがどこにいるのか分かんないけど、封印できれば家に帰してもらえるってことじゃない」
と答えると、彼女は「ぐぬぬ…っ」という感じで黙ってしまう。
お嬢様だと思ってたけど、そんな顔もするんだ……と、ちょっと驚いた。
「ねえ、マユちん。その本、他には何か書いてないのぉ?分厚いのに」
眉毛を八の字に下げたレミナにせっつかれて次のページをめくると、そこには…
ボタン型のスイッチが、ページをくり抜かれた穴に入っていた。
アニメなんかに出てくる、自爆スイッチみたいな、アレだ。
そしてボタンに向かって矢印が書いてあり矢印の根元には
『フルフルスイッチ』
と書かれている。
私達は顔を見合わせた。
「もしかして、これ…押したら、フルフルがここに来ちゃうの?」
「それか、私達がフルフルのいる場所に飛ばされるかも。ちょっと慎重になった方がイイんじゃない?」
「でも何もしなかったら、家には帰れないよねぇ?」
しばらくの沈黙のあと……
「「「……押しちゃう?」」」
皆の声が重なった。
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