ようこそ!スパイ組織、ブラックホワイトへ!
「やあ!私が赤坂 日南だよ!よろしく!」
先程とは打って変わった明るいトーンで話しかけられる。ショートにしてある真っ赤な髪も相まってコミュ力が高そうだ。
「えっと......これは......?」
周りの景色に目をやる。随分殺風景な空間に見えるが、よく見ると遊び心があちこちにちりばめられていた。
「ここはスパイ組織、ブラックホワイト!あなたは素質アリってことでここに入隊できることになったのよ!」
ニッコリ笑顔で大真面目に言い切られる。......スパイ組織?素質?入隊?
困惑顔な私を見て、赤坂さんはさらに説明してくれた。しかも、詳しく、長く。
この世界の裏には「魔法」のような存在があること。
それを扱える人間は限られていて、扱えるものは「素質アリ」とみなされ、適した組織に入隊すること。
今のところ「カムイ」「コタン」と、「氷牙」と言う組織があり、長きにわたり「カムイ、コタン陣営」と「氷牙陣営」に分かれて争っていること。
ブラックホワイトは中立の立場を守っていて、どちらにも加担する。しかし、今はカムイ、コタン陣営に傾いていること。
......など、など。話はかなり長かったが、眠くなることはなかった。
「んまあ、氷牙の目的は『世界の破滅』だしねぇ。昔はお偉いさんが氷牙の計画に賛同してて、氷牙から仕事をとってたりしたんだけど、今はもう仕事をとってないわ。」
と赤坂さんは言う。世界の破滅が目的って......まんま悪役やん...
成程。私たちが平和に暮らしている裏ではヒーローアニメのような激戦が繰り広げられていたと。
で、私もそこに参加できるわけだ。......でも、正直言ってやりたくないな。一人で黙々とゲームなり課題なりやってる方が好きだ。第一、命に関わることなのだろう?
「あ、言っておくけど、ここに来た時点で拒否権はないよ!」
「は?」
嘘だ......じゃあ連れてくるなよ!断ろうと思ってたのにっ!
「因みに、住み込みだから!大丈夫、ちゃんと親に話は通しておくよ。長期休暇の時は帰っていいし。」
更に爆弾発言。...す、住み込み...だと?!
「いやっ、でも、学校が......」
「もうじき卒業でしょ?うちで高校とそう変わらない教育も受けられるし!入試、やんなくていいんだよ~?それに、タダ!お給料だってもらえるし~」
その言葉に、グッと詰まる。たっ、確かに高校の授業料が不安だったが......
「どう?やる?」
「.................ッ、やります!!!!」
ここまで好条件を出されたら、断れないじゃないか......と言うかそもそも拒否権無いんじゃなかったのか......
*
「サイズどお?」
「ん、袖がちょいぶかぶかです。」
「それでいいんだよ。そーいう風にできてんの!」
あの後、あれよあれよと部屋の一つに通されて軍服に着替えていた。
全体的に濃い灰色だ。左胸についている正方形のワッペンは、黒と白で斜めに割れている。襟は首元が隠れる形で、十字に模様がついていた。
もみあげを伸ばして緩めに結い、完成だ。
だが、赤坂さんとは決定的に違う部分がある。
それは、十字部分の色とベルトの部分だ。
「あの......その、軍服の色は、私にはつかないのですか?」
そう言うルールなのだろうかと思ったら、赤坂さんはあまりにもあっけらかんとした調子で答えた。
「ああ、まだあなたの所属する隊が決まってないからよ。この後能力測定をして、それをもとに所属する隊を決めるの。隊の色や、隊長の髪色、瞳の色によって軍服の色は決まるの。」
「はあ......」
なんだか色々あるらしい。ひとまず、私は赤坂さんに案内されて能力測定の場へと向かった。