リリンシータニー2
更新致しました!前回に引き続き、いい感じのBGMとともにご覧ください!
(※いい感じのBGMとともにご覧ください)
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リシエンタの森を抜け、界移動して、上界に来て、列車に乗って、リリンシータニー観光....と、ここまでぶっ続けできたもんだから、今かなり眠い。
しかも外はポカポカ陽気。そこにゴンドラの心地いい揺れも加わって、どうぞ寝てくださいと言わんばかりの状況だ。
しかし寝てしまってはもったいない。ちゃんと起きてこの町を記憶に残しておきたいからな。
.....と俺が健気にそう思っている隣で、マヤは気持ち良さそ〜に俺に寄っかかってお昼寝中。
....まぁいいんだけどさ。
「エドワードさん眠そうっすね〜!」
「ねみーよ。でも起きてたいから起きてるぜ。」
「ぜひそうしてください!話し相手いなくなっちゃったら寂しいんで。」
そう言って後ろをクラウスが指差す。
クラウスってのは船頭の名前だ。今みたいに喋り続けてるうちに仲良くなれた。
「ん?あらら、皆つぶれてんなぁ。」
振り向くと、乗客が見事に全員居眠りをしている。
「2人っきりですよエドワードさん♡」
「きもいやめろ!」
「アハハハハ!」
とか言いながら、眠気覚ましがてら話をし始める。
「なぁ、クラウスは、鳥人族の天空階段って聞いたことあるか?」
「へぁ!?やめてくださいよ怖いなぁ!」
? 怖い?
「悪い、そんなつもりじゃなかったんだ。でも怖いってなんでだ?」
「えぇ!?知らないで聞いたんすか?...鳥人族の天空階段ってのは、上界中に伝わる怪談です。悪い行いをした者は、鳥人族にあの世へ連れて行かれるっていう話で....。寝ない子どもを無理矢理寝かしつけるための脅しによく使われてるんです。...もー!俺怖い話苦手なのに!」
「悪りぃ悪りぃ!そうだったのか...。」
なんだよただの怪談か....。マヤのやつ、俺をノせるためとはいえ.....いや、待てよ?
「(上界の怪談を、なんでマヤが知ってるんだ?)」
境界じゃ聞いたこともなかったから余計おかしい。だからこそあの時は胸が躍ったが....。
....今考えたら、より長く生きてる俺が知らないことを、あんなにポンポン出してきたのもおかしかったか....。気づけないなんてまさか俺ホントに歳........ま、まぁとにかく、
「(...マヤが起きたら聞いてみねぇとな。)」
ってことは、あの時マヤが話してたこと、全部疑わしくなるな....。
相棒を疑うのは心苦しいが.... 聞いてみるか。
「...ちなみに、人魚の海底都市は...。」
「..は、おとぎ話ですね。これも有名ですよ!本当にあったらいいんですけどね〜...。」
「無いのか...。」
「人魚自体は、いるにはいるんですけど...。」
「!マジか!」
一気に胸が高鳴った。マジかよいるのかよ!
「いるんですけど....。」
「ですけど?」
「....昔、人魚の血肉は不老長寿に効くってことで、乱獲されて....。一時期数がめちゃくちゃに減ったんです。それが今でも響いてて...。」
「......そうだったのか...。」
「ホント馬鹿ですよ、昔の商人。人魚の細胞が体に合わなくて死ぬ人が大勢出たのに、高く売れるからって狩り続けたんです。需要以上に狩って、需要が無くなっても狩り続けて....。今でも時々闇に出るそうです。上界中でご法度になってんのに...。」
....どこの世界にも馬鹿な商人はいるもんだな。
「まぁそういうことなんで、まず都市が作れるほどの数の人魚がいないんですよ、もう。....実は、おとぎ話以外に、諺にもなっちゃってるんです。」
「...どんな?」
「“笑う人魚”.......意味は、“ 絶対に不可能なこと ”。」
「....酷いもんだな...。」
「....しょうがないっすよ。.....ていうか!こんな暗い話したくねーんすけどー!」
「そうだよな!ごめんなー!」
まさかこんなに闇が深い話だとは.....。
マヤ、お前どこで知ったんだよこんなこと....。
......マヤも、本当のことは知らなかったりすんのかな。誰かから間違った情報を聞いて、それを俺に話した、的な.....。有り得なくはないが、だとしたら誰が.....。
とにかく、あと1つ。
「もう一つ聞いてもいいか?」
「全然いいっすけど....暗いのもう嫌ですよ?」
「ごめん100%(パー)暗いぞ。」
「えー!?なんすかも〜!」
暗いのはこれで最後!ごめんなクラウス...!
「”死の孤島“って 知ってるか?」
「...なんでそんな物騒なことばっかり知ってるんすか...。」
....俺だってびっくりだよ。
「死の孤島は、グレンゴドラ大陸、別名、“狂気の大陸” の沿岸にある島です。....行くつもりなら絶対にやめてください。あんな所に行くのは自殺志願者ぐらい...いや、そいつらですら、きっと泣いて懇願しますよ。“ 行きたくない〜っ!”って。」
「そこまで危険なのか...。」
「全てが異次元級だそうです。モンスターの強さも、自然災害の大きさも。...意思がある大陸だって言われてるんです。上陸した奴を確実に殺そうって意思が目に見えるとか。」
「誰が言ってたんだ?」
「上級の魔道士です。最初は10人ぐらいのチームで上陸したらしいんですが、帰ってきたのは1人だけ。しかもほぼ瀕死の状態でね。回復後も、精神的に病んでしまったらしくて...。」
「....狂気の大陸か....。」
マヤがいなけりゃ行ってたな。
「間違っても行かないでくださいね!!」
「分かってるって!マヤがいるのに行かねぇよ、大丈夫。」
「だったらいいんすけど...。なんか、嬉しそうに見えたから...。」
ヤベッ。
「あぁ、いや、俺怖いと何故かにやけちゃうんだよ。」
「なんすかソレ!も〜やだ!明るい話しましょうよ〜!」
「そうだな!じゃあ......そうだ。明日らへんにはもうここを出るつもりなんだ。なんかオススメの場所とか無いか?」
「もう出るんすか!?早いっすよ〜!まだ一緒に遊べてもねーのに〜....。」
「“冒険者”だからな!絶えず移動し続けてこそだろ?」
「え〜?マジかよ〜.....。でも、だったら船使えば良いっすよ!旅行船!
ここはバースリーと陸続きの島国で、しかも平和なんで、冒険は望めません。でも船なら、金はかかるけど快適だし、色んな場所に行けますし!」
「船か!良いな〜!」
金ならまだ余裕あるし、良いかもな!
「(マヤが起きたらこれも聞こう...。)」
「そろそろ宿がある通りに出ますよ!降ります?」
「ああ、降りるかな。色々ありがとうな〜!」
「いえいえこちらこそ〜!絶っ対また来てくださいね!」
「あははは!できたらな!」
「...んん?ふわぁあ....おはようエド....。」
「おはよう。って時間じゃねぇけどな。」
マヤが丁度よく目覚めた。ホントにぐっすりだったな...。
...さて、
「宿に着いたら色々聞きたいことあるからな〜マヤ。」
「んん...?」
さて、何からどう聞くかな。
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「何?話って。」
マヤが甘いものを食べたいと言うので、宿へ向かう前に近くの喫茶に立ち寄った。
マヤは苺の果肉入りのシャーベット、俺は迷った挙句紅茶ではなくコーヒーにした。....ミルクや砂糖を入れても、紅茶よか不自然じゃないからな。
「マヤが俺に話してくれた、あの鳥人族とかのことなんだけどな。」
「ああアレ。」
「あれ全部この世界のことなんだと。」
「.....そうなの!?」
本気で驚いている...。深くは知らなかったのか。
「船頭のクラウスから聞いたんだ。天空階段は怪談、海底都市はおとぎ話らしい。...それぞれかなり暗い話で、夢なんてなかったぜ。」
「嘘........。」
魂が抜かれたように固まっている.....夢を壊してしまい申し訳ないが、真実はちゃんと伝えておいた方がいいだろうしな.....。
「クラウスに驚かれたんだぜ?なんでそんな暗い話ばっかり知ってるんだって。」
「....私、話は全部お父さんから聞いたの。お父さんは旅人から聞いたって言っていたわ。だから話が不明瞭だったのかも。......それにしても、世間知らずが過ぎたわ。恥ずかしい。」
「いや、世間知らずは俺もだ。大人のくせに知識不足だった。」
もっとちゃんと本とか読んでいれば.....。
そんでやっぱり人伝いだったか。
...それにしても、お父さんか....。
「....なぁ、ずっと聞きたかったんだけど、“娘だった”って、どういうことなんだ?もし言いたくなければ、無理しなくてもいい。」
「...私のお父さん、話を私にしてから 1週間後にいなくなったの。...私がまだ3歳の頃だったわ。」
「....!失踪、ってことか?」
「そう。...農家の人が言うには、朝早く、どこかへ出かけていくのを見かけたらしいの。.....でもそれっきり。」
!......そうか...。
「死亡扱いにされたんだな...。」
「ええ。...でもどうかしらね。あのお父さんのことだから、意外と生きてるかもしれないわ。ひょっとしたら、私達みたいにあの森に入って、山爺のナゾナゾに正解して、この世界に飛ばされたのかも。」
.....ポジティブだな。改めて、強い子だ。
俺はまだ、自分の親のことを引きずってるってのに......。
前世は虐待のせいで親に尊敬の念なんて抱けなかったし、今世はまず親がサッサと消えちまったからなぁ。
転生したというからには、俺にも勿論親がいた。
お利口さんを演じきれていたから、俺が原因ではないと思いたいが、両親とも、バラバラに家を出ていってしまった。
つくづく親には恵まれねぇが、そう言う俺も、前世、ろくな親にはなれなかった。蛙の子は蛙ってやつなのかね。本当に嫌になる。
.....気分が一気に下がっちまったな。
連想力が豊かなのかなんなのか、つい過去のことに今を結びつけて、どんどん繋げて広げてしまう。明らかな悪癖だ。直そうとしてもどうしても直ってくれない。
.....まだ子どものマヤがあんなに強いのに、大人の俺がこんなに弱いなんて、本当に情けない。
「エド?コーヒー冷めるわよ?」
「え?ああ!そうだな。」
「あなた時々ぼーっとするわよね。悩みとかあるの?」
「いや、ただ呑気なだけだ。大丈夫。」
「そう?ならいいけど。」
心配までされて......!お前本当に大人かよ馬鹿野郎!
「(強くならないと....。」
「?あなたもう十分過ぎるほど強いでしょ。」
「ッ゛!!? 」
「ちょっとぉ。」
危うくコーヒーをこぼしかける。
声に出してたのか俺!?うわキモい!!
他人に興味持てるようになってから、自分のことはとんと嫌いになるばかりだな...。
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宿に着き、それぞれ大浴場で入浴を済ませてゆっくりした後、マヤに旅行船のことを話した。
丁度宿の窓から船着場が見える。船の灯りがとても綺麗だ。
「船!良いわね!乗りたい!」
「そうか!じゃあ明日は船だな!」
今日だけでなんか色んなことが分かったな〜...。
情報量の多い1日だった.....。
「明日は早起き?」
「しなくていいぜ。ぐっすり寝ろよ〜。」
色々あったが、なんだかんだ楽しかったな。
....明日も楽しみだ。
......眠れない.....遠足前か!
〜リリンシータニー2〜
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