リリンシータニー
更新致しました!
ぜひご覧ください!
(※いい感じのBGMを流しつつお楽しみください)
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「リリンシータニー!煉瓦と水路の港町ぃ〜!」
朗々としたアナウンスが響く。
「さぁ!着きましたよ!ここがリリンシータニー!名物は、あそこ、ルナードゥオ海で採れたルナダ貝!バカウマですよ!特に生はね!ちなみに通貨は境界と同じなんで、ご心配なく!」
まるで秘密のことのように話すもんだから、おかしくなって少し笑ってしまう。
「色々とありがとう。飛ばされたのがあんたの所で良かった。」
「こちらこそ!お二人に出会えて良かった!」
[ 〜♪〜〜♬〜♪〜〜 ]
発車のメロディが鳴る。また大勢の人を乗せて。
「本当にありがとう!おかげで楽しく移動できた!」
「ありがとうハーディーさん!良い旅を!」
2人でハーディーへと手を振る。
「ありがとうございまーす!お二人も良い旅をー!お体には気をつけてー!」
ゆっくり走り出した列車は徐々に速度を上げ、あっという間に走り去ってしまった。
「...最初は混乱したが、いい人、いや、いい種族に出会えて良かった。」
「フフッ!言いづらいわね。でもその通りだわ。」
列車が去っていった小さな駅を、俺達も名残惜しく去る。
「素敵な町ね。ガヤガヤし過ぎてなくて。」
「そうだな〜。俺こういう雰囲気好きだから嬉しいわ。」
賑わってはいるが決して煩くない、穏やかな町だ。快晴の空がよく似合う。
「どうする?どこ行く?」
「こういう知らない町で行き先を決めてしまうのはもったいないな。テキトーにぐるっと回ってみようぜ!」
「ええ!ワクワクするわよね〜!知らない町を自由に歩くのって!」
「分かるぜ〜その気持ち!マップをあえて持たないのがいいんだよな〜。」
「そう!どこに何があるのか全く分からない状態で、ドキドキしながら見て回るのが良いのよ。」
「今日みたいな日和だと増して最高!」
「ふふふ!そうよね。」
気の置けない相手と回るってのもあって気分は高まるばかり。
んで、こういう時に食うその土地の名物がこれまた格別なんだよな〜!
「ルナダ貝だっけか?どこに売ってるんだろうな〜。」
「歩いてるうちに見つかるわよ、きっと。ねぇ、こうやって水路があるってことは、ゴンドラもあるのよね?」
「あるだろうな。乗り場があったら乗ってみようぜ。」
「うん!」
! フフッ、いくら大人っぽいとはいえ、やっぱりまだ子どもだよな〜。
「!ねぇ、あそこ乗り場じゃないかしら。」
「ん?おお!ホントだ!意外と早く見つかったな。どうする?乗るか?それとももう少し歩いてから?」
「乗りたいわ!」
「よしじゃあ行こう!」
急ぎ足で石造りの階段を降りて、船頭の下へ。
「2人なんだけど乗れます?」
「どうぞどうぞ!おっ!お兄さん境界の人?」
「ええ。やっぱり分かります?」
「分かりやすいですからね〜!いや〜でも珍しいな〜!魔道士に連れて来られたんですか?」
「いや、山爺に送られて。」
「山爺?...山爺に送られたってあんまし聞きませんね〜。」
...なんかちょっと恥ずかしいな.....。
「お二人で30フーロになりますが、よろしいですか?」
「ええ。」
「...自分で出せるわ。」
「こんぐらい任せとけ。」
フーロは境界と上界の通貨だ。
日本円でいうと、1フーロは100円、
30フーロで3000円だ。
「まいど〜!」
2人でゴンドラの前の席へ。
運がいいな。乗り物の席は1番前が好きだから嬉しい。
「お客さん多いのに前の方の席とれてラッキーね。」
「だな。」
普通の道路もいいが、水路ってなるとロマンの度合いが段違いに感じられる。
....何気に初体験だしな。
「さぁそれでは行きますよ〜!」
船頭の声と同時にゴンドラが動き出す。
柔らかい風を肌で感じながら、ふと水の中を見ると、
「マヤ、水の中に魚いるぞ。」
「あらほんと。.....やっぱり境界じゃ見たことないような魚ね。」
光に照らされ、緋色、オレンジ、翠と色を変えている。
「その魚トゥトゥっていいましてね、シンプルに塩焼きが美味いんです。」
「へー!ぜひ食べてみたいな。」
「食べるのお好きなのねお兄さん。」
「!」
後ろの席のご婦人が声をかけてきた。
耳の形からしてエルフだろうか。
「そうですね!食い意地が張ってるもので。」
「あらら!ウフフ。」
....あとでルナダ貝も探しつつトゥトゥの店も探さないとな。
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「ここ、リリンシータニーは、煉瓦と水路の港町って呼ばれてまして、その名の通り、煉瓦造りの建物と、町中に張り巡らされた水路が特徴です!自慢はやっぱり、この水質の良さと、新鮮で美味い海の幸!名産品はルナダ貝ですが、俺はヒライオが好きですね〜!淡白な味が特徴の魚なんですが、ハーブなんかと一緒に焼いたりするとま〜美味い!」
船頭の話し方が上手くて、話に引き込まれてしまう。
....この感じ、なんか知ってるぞ。マヤん時だな。
「エド。」
「ん?どうした?」
「後ろ見てみて。チラッとね。」
じっくり見たら変に思われるもんな。
「いいけど...なんか面白いもんでもあったか?...!」
理解してすぐに前を向き直す。
「分かった?」
「分かった。....魔道士が多いってことだろ?」
「そう。今まで、こんなに沢山の魔道士を 一気に見たことがないものだから、びっくりしちゃって。」
「まぁそりゃするよな。俺も驚いた。」
.....ホントに多いんだな、この世界。
「おっ!アレは...。」
船頭の声が指す方を見てみると、
「ゴンドラ...だけど、コレとは違う。屋台船ですか?」
「そうですそうです!アレは食べ物専用の屋台船ですね。他にも、アクセサリーだったり、服専門の屋台船もあるんですよ!」
「へー!食べ物専門の...。」
「良かったわねぇお兄さん♪」
さっきのマダムだ。
....俺そこまで食いしん坊じゃないからな?
「探す手間が省けました。まさか船の上で食べられるなんて。」
「ウフフ、そうよねぇ。」
....まぁ食いたいから食うけどさ。
「兄ちゃん!アンタ境界の人間だろ?」
「!ええ、そうですよ。」
元気なおっちゃんの魔道士だ。
「その横の嬢ちゃんは、アンタの娘さんかい?」
「まさか!俺の冒険の相棒です。」
「マヤです、おじさん。こんにちは。」
にこやかに挨拶を交わす。
....俺の時はそんな簡単に名乗らなかったくせに。
拗ねてるわけじゃないが、なんか納得がいかない。
「挨拶ちゃんとできて偉いねぇ〜!どれ!おじさんがなんか奢ってやろうか!」
「ホントですかやったぜ!」
「兄ちゃんじゃねぇよ!」
「「「「アハハハハハ!」」」」」
こういう他人とのやり取りなんかも、冒険の楽しみだよな〜。
.....今まで、なんで旅にすら出ようと思わなかったんだろうな...。殺しは勿論クソ愉しいが、旅に嫌悪感があるわけでも無かったのに.....。境界がつまらな過ぎたからか?
というか、
殺すのがそんなに愉しかったのか?
いや、愉しいってか、気持ちイイんだよな。麻薬ってこんな感じか〜ってのを体験できてたぐらいには。
今の状況とどっちが愉しいんだ?
そりゃあ、やっぱり........。
そういえば最近、人殺してねぇな。
「エド?どうしたの?」
「...........。」
「....?」
「屋台船来ましたよー!お客さん!」
「.......。」
「?お客さん?どうしました?」
「エド......?エド!」
「んあっ!?あぁ、なんだ?」
「屋台船!」
「へ?おお!いつの間に!」
「さっき呼びかけたのにお客さんボーッとしてて、気づかなかったんですよ〜!」
「あらららすいません!マヤもごめんな〜。」
「いいえ、大丈夫よ。」
やべぇやべぇボーッとしてた。
「エド!アレがルナダ貝ですって。」
「どれだ?...ああアレが!思ってたより小ぶりなんだな。」
「その分旨味があの中にぎっっしりですよ!」
「そう言われると買うしかなくなるな〜。」
まずはルナダ貝。2人分で8フーロ.....あ。
「おっちゃん!奢ってくれるんだよな?」
「嬢ちゃんにっつってんだろ!まぁいいわ!兄ちゃん面白いからまとめて2人分奢っちゃる!」
「おぉさすが!俺の見立て通り、その太っ腹は伊達じゃなかったな。」
「うるせぇクソガキ!ったくよぉ (笑)」
クソ“ガキ”......。
「マヤ、やっぱり俺が老けて見られてたとか、俺の布団からおじいちゃんの匂いがしたとか、アレ全部嘘なんだよな?」
「さ〜どうかしらね?」
冗談であってくれ....中身はともかく...せめて見た目は若々しくいたい....!
「ホレ!ルナダ貝2人分!」
「ありがとうございます。」
「ありがとうございますぅ。」
「キモッチワリィな!ぶりっ子するな!」
とか言いながら笑っている。気持ちのいいオヤジだな〜。
というか、この世界にもぶりっ子って概念はあるんだな。
「あとは自腹で〜....お!船頭さん、アレってもしかして...。」
「あっ!アレです!アレがヒライオ!串焼きか〜うまそ〜!」
「.....、すいません!ヒライオの串焼き5本!」
「あいよ!5本で15フーロ!....はい丁度!どうもね!」
まず一本をマヤに、
「ほれ。」
「いいの?ありがとう。」
「あいよ。」
そんで、
「どうぞ、船頭さん。」
「えぇ!?いいんですか!?」
「チップ代わりだと思って!」
「うわ〜マジかやった!ありがとうございます〜!」
でもって....、
「おっちゃん!ルナダ貝のお礼!」
「奢った意味ねぇじゃねぇかよ!(笑) ありがとな!」
あとは....、
「よろしければ。」
「あらいいの?ごめんなさいねぇ、ありがとう。」
「いえいえ。」
マダムにも一本。
これでよし。残りの一本は自分の分。
...2つともめっちゃくちゃ美味そうだな〜!
一番美味いらしい生のルナダ貝には、バジルソースが薄っすらかかっている。貝の味を消さないためだろうな。
「あふっ!」
「大丈夫か?」
「くひはひあふい.....(串焼き熱い)。」
「あはは!でも美味いだろ?」
「おいひい。」
そら良かった。っと、俺も冷めないうちに食べないと.....。
.....今日は本当にいい天気だな。こんな空の下で食べるって今までなかなか無かったかもしれない。異世界に転生してからは、特に。
「いただきます。」
....マヤに感謝だな。
「あ゛っづ!」
「あはははは!」
〜リリンシータニー〜
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