オーシャンビューが見えたなら
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「......ん?」
真っ先に疑問に思った。
「ここは....どこだ...?」
そこに広がっていたのは.....
「何、ここ.....。」
全くの 別世界。
淡い白の光を纏った蝶が、優しく幻想的な雰囲気に包まれた森を、ひらひらと舞っている。いや....
「蝶じゃない....精霊か...?」
ここはまるで、月のような世界だ。
深い森ならではの、暗く湿った空気は無く、青白く美しい世界が、そこには広がっていた。
「山爺さん!ここどこですか?俺達のいた世界とは思えないんですけど.....。」
洞穴の中へ呼びかける。
「山爺さーん!?ここどこですかー!?」
さっきよりも大きな声で呼びかける。
「爺さーーーん!!?ここどこーーーー!!?」
叫んでみるが.....
「返事がない...。」
「ねぇ...、私達、振り返らずに来たから分からなかったけど...、あのお爺さん、いつからいなかったのかしら。」
「いない?」
「だってそうとしか考えられないわ。あなたの声が聞こえなかったってことはないでしょうし。」
「.....だよな....。」
じゃあ余計、
「ここどこなんだ...」
[ キーーーーーーーーン ]
「ウ゛ッ!んだコレ!?」
「うぅ...何この音!!?」
酷い耳鳴りのような、耳を劈く音。
「何が起こって.....、!!?」
大地が、波打っている。
波紋を浮かべ、ドクン、ドクンと呼吸をしている。
時空が歪み、音が増す。
「クッ....!!!」
頭が割れるような音が鳴り響く。
「マヤ....!大丈夫か.....!?」
「ーーーーーーー」
マヤの声が聞こえないほどに強い耳鳴りに、思わず目を閉じた ーーーーーーー。
「出発しますよ!早く乗って!」
「「!!!?」」
人の声がして目を開けると、
さっきいた世界とは打って変わった、濃く鮮やかな色が目に飛び込んできた!
街、石造りの道、行き交う種族達、
なんか隣に元気な人いるしデカイ列車ある。
待て待て待て!いきなり情報量が多過ぎる!!
「!!?なんだここは!!?」
このセリフ今日だけで一生分言った気がする。
「さあお早く!もう出てしまう!」
声に促されるまま、傍らの列車に乗り込む。
名称はよく分からないが、なんかこう...外の空気に触れる車両と車両の間的な所に。
もう混乱がヤバい。語彙力追いつかねぇよ!
「ようこそ!お二方、もしやこの世界は初めてですね〜?申し遅れました!私、この列車でお客様に観光案内を致しております、ハーディーと申します!」
「エ、エドワード・バンディ。」
「マヤ・ルーツカ...。」
「エドワード様、そしてマヤ様!ようこそ!“バースリー” へーー!!」
明るく挨拶をされ、条件反射的に挨拶を返した。
聞きたいことは山ほどあるが、まず!
「この世界はなんなんだ?!この世界は初めてってどういうことなんだ?!」
「まぁまぁまずは落ち着いて!中の席はもう埋まってますので...まぁここでもよろしいですかね!えっと!質問に質問で返してしまい申し訳無いのですが、お二人はどうやってここに?」
「私達、山爺のナゾナゾに答えて、洞穴出て、白い世界に出て、音聞こえて頭痛くなって、ここ来た。」
マヤがカタコトになってる。
「やはり山爺ですね〜!あっははは!あの爺さんま〜たやったな!」
あっはははぁ!?何笑ってんだ!
「山の向こうへの近道だと言われましたか?」
「あ、ああ!言われた!」
「騙されちゃいましたね〜!あれは近道なんかじゃありません!ゲート、ワープゲートなんですよ!」
「「ワープゲート??」」
「ええ!あっ!列車が出ますね!しっかり、掴まっていてください!」
[ 〜♪〜〜♬〜♪〜〜 ]
発車のメロディが鳴り響く。
「さあ行きますよー!列車の旅へーー!!」
「「お、おぉおおおーー!!」」
拳を高く突き上げる。
ノりはしたが混乱しっぱなしだ。
「なんか列車で旅に出るらしいな、俺達。」
「わぁ。」
なんだよその死んだような返事.....
.......どういうことなんだコレ!!
ーーーーーーーーー
.....列車は今森の間を縫うように走っている。
目に鮮やかな緑が、ひたすら後ろへ後ろへと流れていく。
「もう少ししたら向こう側に海が見えますよ〜!」
確かに、さっきから微かに潮の香りがする。
...落ち着いたら段々話を整理できるようになってきた。
まず、ここはバースリーという地で、俺達のいた世界とは違う場所らしい。
次に、ここに来たのは山爺が原因なんだと。
「山爺と上級の魔道士だけなんですよ、界移動できるのは。他の種族は、まず界移動や他世界の存在を知りませんからね。まぁ認知においては、ここは別ですが。」
「!魔道士って上級と低級がいるのか?」
「ええ!そうですよ!だからここにいるのは上級ばかりですね!」
じゃああの変態元院長は無理なんだろうな。
「俺達は別にその、界移動?がしたくて山爺のもとを訪れたわけじゃねぇんだが、なんでさせられたんだ?」
「えっとそれは多分、山爺のナゾナゾに正解しちゃったからだと。」
「?マズいのか?」
「山爺こう言ってませんでした?“ナゾナゾに答えられたら通してやる”って。」
「ああ、言っていたが....あ!そうか!」
「?エド、私よく....。」
「つまり、あのナゾナゾは正解する必要がなくて、不正解上等の、テキトーになんか言ってれば良いだけのナゾナゾだったわけだ...。」
「....そういえば正解しろとは言ってなかったわね...。」
.....そんなん分かるか!
「でも、正解したからってどうして...。」
「さあ?“真面目に答えておもろいからコイツら送ったろ!”みたいな感じですかね?」
あのクソジジイ。笑ってたのもそういうことか。
「そもそも、他世界ってなんなんだ?異世界は異世界じゃないのか?」
「んーとですね...言葉で説明はちょっと難しいなぁ...ちょっと待ってくださいね!」
そう言うと、ハーディーは懐から手帳を取り出し、胸元に差していたペンをスラスラと走らせ始めた。
「実はこの世、上、下、そしてその間と、世界が別れているんですよ〜!」
そんな軽いノリで言わないでほしい。
「別れてるって....。」
こんな感じかな。と、ハーディーが手帳を見せてきた。
「お二人がいらっしゃったのは、間の世界、“境界”です。ここですね!」
上界
ーーーーーーーーーーー
境界 ← お二人がいた世界
ーーーーーーーーーーー
下界
「んで、お二人がちょっとの間滞在した白い世界は、境界と上界の間の、この線の部分、“狭間空間”で、今いるこの世界は上界です!上界の種族達は、界移動はできないにせよ、他世界の存在は認知しています。魔道士が多いからですかね。」
「そうなのね!どれくらいいるの?」
「そうですね〜、境界より住み心地が良いからって移住してきた魔道士もかなりいるので.....、もう今では数え切れないほどいるんじゃないですかね!」
「へぇ〜。」
........いや、まさか..... でも........。
「...なぁ、下界ってどんな所なんだ?」
「下界ですか?つっっまらない所らしいですよ〜!私友達に魔道士がいまして、そいつが下界に行った時の話を聞いたことがあるんですけど、境界上界と違って、人間やら家畜やらしかいないんですって!でも文明は中々進んでいるらしいですね。モンスターも出ないらしいですし、そこは平和で良いかも....。」
.....嘘だろ、マジかよ.......
下界って....
「俺のいた世界だ......。」
「?何言ってるの?あなたも私も境界の者でしょ?」
「あっ!ちなみに、人間が存在するのは、下界と境界だけなんですよー!でも、はっきりとした違いがあるんです!」
「そうなの?人間は人間なんじゃ?」
「いえいえ!下界人と境界人ではまた違うんですよ!境界人には魔力が存在しますからね!」
「! 下界人には無いのね。」
もう間違いなくそうだな....。
「そうか....。」
「....エド?」
「あっ!見てください!あとちょっとで海が見えますよ! 3......2......1......!」
[ サァァッッ! ]
視界が開けたその瞬間飛び込んできたのは、
鮮やかなシアンブルー。
雲一つ無い、快晴の空。
視界に収まり切らないほどの、鮮美透涼。
「......綺麗だな....。」
思わずそう呟いてしまうほどの絶景。
目を奪われ瞬き出来ないほどの、圧倒的な美しさ。
「さあ!この海が見えたってことは、もうすぐリリンシータニー、港町ですよー!」
「綺麗ね、エド。」
「....そうだな...。」
思い詰めてる暇なんてないな。
これから先、まだまだこんな出会いが待ってるんだから。
「...楽しみだ......!」
〜オーシャンビューが見えたなら〜
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