試練を行く者、闇に住まう者
訳あって再度載せ直しました!二話を一つに合体させました。よろしければもう一度ご覧ください!久々の更新がこれで申し訳ありません(汗
コツコツ載せていけるよう努力いたします....。
ーーー.....長い長いトンネルを抜け、一際大きな金切り声を上げながら、列車は駅にその車体を落ち着けた。
「(ここがヤモンか.....。)」
ハシバとは全く雰囲気が違うここは、地底故に太陽の光がほとんど届いていないらしく、昼間だというのに夜中のように暗い。ただ、その暗がりを照らす、とある物が目に入った。
「わぁ...キレイ......!」
ラビーが思わず感嘆の声を漏らす程のそれは、どこか見覚えがある物だった。
「(そうだ、ガロと出会ったあの岩洞窟の.......。)」
清涼で穏やかな光を放ち、辺りを神秘的に照らしているのは、あの岩洞窟で見たような水晶だった。唯一違うのは、その大きさだろうか。目立つものでは俺の背丈程(180cm超)もある。
遠くの方からカン、カンと音がする。採掘でもしているんだろうか。 薄暗くてよく見えないが........。
「とりあえず町中に行ってみるか、買い出しも兼ねて。」
そう提案し、ワクワクしている様子の3人が頷いたのを確認し、町がある方向へ足を向けた。
「フェルド、後々また詳しい話を聞くとして、今は町へ行きたいんだがいいか?急ぐ必要があるなら...」
「別にそこまで急ぐ必要はない。.....そもそも、町へ歩き始めてから言うことじゃないだろう。」
「まぁそうだな。」
「........意外だな。お前、気を回せる男なのか。昨晩あんなことをしておいて....」
「語弊のある言い方止めろ。......あの時はあの時、今は今だろ。あと、あの3人には俺が何したか言うなよ。」
「言うわけないだろう。あんなことされて言えるわけが...」
「もうこの話やめようぜ!さっきから意味深に聞こえて仕方ねぇ.....。」
「お前の思考に方向がズレてるせいだろう。俺は別に狙ってるわけじゃない。」
......
「あの2人、いつの間に仲良くなったのかしら...。」
「仲が良いってこともねぇだろ。こんな短時間でどう仲良くなるんだよ。」
「昨日あったことが原因かしら....気になる.....!」
......
町中に入っていくと、流石に辺りには照明が付けられており、どこも明るかった。
ハシバの方とは違い、ヤモンの町並みは、良く言えば純朴、悪く言えばそれこそ粗野、という風だった。木造の古屋ばかりなのだ。
住人はというと、採掘の様な力仕事を生業としている者が多いからか、町を行き交う彼等の体躯は誰も立派だ。
「(エドワード以上にデケェ奴等ばっかだな.....。)」
ガロが周りを、少し恐々としつつも興味深げに見渡している。通行人が気になるらしい。
「....鍛冶屋が多いのね....。」
マヤがふと呟いた。
....確かにその通りだ。そういう店の主人は......やっぱりドワーフが多いな。
「(......父親を探していていたりして.....。)」
なんて考えてすぐに止めた。何を考えようとマヤの自由だ。俺が過干渉する必要は無い。協力を仰がれた場合は別だが。
旅の為の非常食や水、後は料理の為の、持ち運びしやすいという鍋も買って、早めの昼食を摂った後、また駅への道を戻っていった。
「次の地上の町....“ルーティオン“の郊外に出たら暫く歩くことになる。順調にいけば3日程で着くはずだが、道は険しいし、モンスターが出ないわけでもない。町が用心棒を雇っているぐらいだからな。」
「モンスターはともかく、道成が険しいのか?」
「ああ、切り立った地形が続いているんだ。ダンジョンは神殿の様な形をしていて、崖の下にあるらしい。」
崖の下だと?
「ということは、どこかで下りる必要があるんだな。」
「ああ。お前のその伸縮自在な鞭があれば、きっと一瞬で下りられるだろう。恐らくな。」
まぁ、できないことはないだろうがな。
「とにかくまずはルーティオンに行くことだ。......丁度列車も来たな。」
こちらへ徐々に近づいて来る列車に目を遣りながら、俺は昂る気持ちを深呼吸で落ち着かせた。
ダンジョン攻略....その余りにも甘美なロマンに人知れず酔い痴れながら、俺は仲間達とヤモンを後にした。
ーーーーーーーーーーーー
「ルーティオン〜、ルーティオンです。」
列車が止まると同時に、車掌の気怠げなアナウンスが車内で響く。
列車を降り、例によって涼しい駅のホームを出口に向かって歩いていく。
.....そういえば、フェルドがこうして同行してるってことは、コイツもダンジョン攻略に参加するってことでいいのか?....そうなると、コイツはあの仲間の中から1人、死ぬ覚悟を持って来たってことになるな...。
「...フェルド、一応聞いておきたいんだが....」
「なんだ?」
「お前も“挑戦者”として参加するのか?それとも案内してそこで一旦解散か?」
「参加はしない。」
しねぇのな。
「ダンジョン内で死んでしまえば、組織への連絡係が消えてしまうからな。....今回、俺は本当に助かったと思っているんだ。前も言った通り、ダンジョン攻略は組織の幹部と適当な下っ端で行われるものだ。その下っ端はダンジョン付近から召集される....だから俺も十分その可能性があったんだ。....危なかったぜ。」
「感謝することだな!」
「偉そうにするなクソガキ!フッ、お前が真っ先に死ぬんじゃないか?」
「んだとオイ!!」
「喧嘩しないで、見苦しいわ。」
「まぁまぁマヤちゃん!」
そんなことを話している間に、地上へ続く階段の中腹にまで差し掛かり、肌に外気の暖かさを徐々に感じ始めた。
「...、眩しいな。」
「ヤモンとのギャップのせいかしら、目がちょっと痛いわ...。」
目の前がいっぱいの光で満ち溢れている。
久しぶりに感じられるような気がする太陽の光の中へ、俺達は足を踏み入れた。
ーーーーーーーー
開け放たれた外の空気はどこまでも澄んでいて、陽の光が優しく辺りを包み込んでいた。
ルーティオンは、ハシバ・ヤモンとは違い、太陽の光をたっぷりと浴び、暖かでも涼しげな風が通う町だった。
郊外へ続く道をのんびりと歩いて行く。フェルドも何となく急いてはいるが、少々呆れながらも、俺達に合わせてくれているようだ。
この町は本当に綺麗だ。
白藍色の家々、海のように深い青色をした路、....ここの住人達は植物が好きな者が多いんだろうか、家の窓や壁、店先の鉢植え、至る所に植物の蔦や花が見える。種族達が和やかに会話する姿はなんとも平和で、自分達がダンジョン攻略に向かっているということすらつい忘れてしまいそうになる程だ。
.....確かに興奮していたはずだ。今でもしていないわけじゃない。それでも、この町の雰囲気に感化されたからか、欲は上手い具合にその形を潜めてくれていた。
「(もし.....、もし仮に、コントロールできるようになったなら......)」
それは本当に仲間達のおかげだろう。目をかける相手ができたことで、自分から目を逸らす時間が増えてくれた。
......なんてことを一々考えてたら元も子も無いな。完全に意識の外に追いやってしまえればな......。
「(長年付き合ってきた自分の性質は簡単に変えられない。だが、最近確かに現れてきたこの変化を、巧く育てていければ.......。)」
ポジティブな思考で終わらせたいがため、自分の分析はここで終了し、また街の風景を大いに楽しみながら郊外への道を進んだ。道中、ヤモンと同様に旅に必要なものを適当に買い足しつつ、買い食いも楽しみながら。
「(さて、後もう一息か。)」
ルーティオンを出るまで、後もう少し......。
ーーーーーーーーーー
「やっと出たーーー!!」
ガロがいっぱいに伸びをする。
時刻は午後4時頃、郊外に出るまで1時間強かかった。...にしても、微妙な時間だな.....。
フェルドから聞いていた通り、ルーティオンの雰囲気からかけ離れた地形が広がっていた。幼児が適当に組み立てたレゴブロックの様にあべこべな地形。フェルドが言っていた崖というのはもっと先にあるらしい。
「こんな所を通る人がいるのかしら.....私達以外に。」
「ほとんどは飛行船を使って行き来しているはずだ。ここをわざわざ行くのは、大方ダンジョン攻略に挑む無頼の輩だろう。」
マヤの問いとも言えぬ独り言にフェルドがそう答える。
「なんでもいいけど早く行こうぜ!」
「そうね!わたしも早く行きたいわ!」
ガロとラビーが目を輝かせながらそう急かした。整備され、舗装された道や土地よりもこの方が燃えるものがあるんだろう。実際俺もそうだ。
「よし、じゃあ行くか!」
意気揚々と、俺達はその切り立った世界へと足を踏み入れた。
ーーーーーーーーーー
ーーとある豪邸、深い深い山の中、辺りに濃霧を漂わせながら佇むその館には、とある大富豪が住んでいるという噂があった。
しかし同時に、その家主はとても恐ろしい人物であるという噂も流れていたため、誰も近寄ろうとはしなかった。もしそうでなくとも、そこまでの道のりが険しく、警備が過剰に思える程厳重なので、だれも立ち入ることすらできないだろうが。
......その館の主こそが、“ルチアーノ・ファルガス“.........闇の世界を統べるマフィア、通称、ルチアーノファミリーのボスである。
.........
“コンコンコン”
....地下4階、部屋の扉をノックする音に一言返事をしてやれば、我が優秀な部下であるルーツォが、礼儀正しくも、少し手持ち無沙汰気に入ってきた。
「......アレ以上の情報は、大して集められなかったのか。」
「はい.....あの、エドワード・バンディという人物は、本当に謎の多い男です。しかし一つ、あくまで予想に過ぎませんが....」
「言ってみろ。」
「彼は恐らく、境界から訪れた者だと思います。理由はまず、出生届がどこにも出されていないこと。僻地や“怪地”の出身であれば珍しいことではありませんが、フェルドらから聞いた情報によれば、どうもそのようには見えないとのことです。」
「そうだなぁ。アイツらから説明された容姿的にそれは考えられねぇ。事細かく聞いたから余計にな。」
黒い短髪に、190cm近くある身長、瞳は赤黒いが片方だけ変に色が抜けていて、瞳の縁と瞳孔だけが赤く、それ以外は不気味に白いらしい。
片肩下げの黒いリュックに、ネイビーブルーの上着、ズボンは黒く踝を出しており、頑丈な作りの靴を履いていたという。
そして何より、大蛇の様に狂おしく自由自在に畝る、恐ろしいまでの鞭捌き........。
襲われたのは暗がりで、しかも路地裏に引き摺り込まれ、あまつさえ媚薬や拷問云々で朦朧とした意識の中で、よくまぁここまで鮮明に記憶していたものだ。まぁ我がファミリーに属する者としては当然だが。
「身形もしっかりしていて、特有の方言も無し。身体的な特徴も特には見られないとなれば、当然だな。」
「ええ、私もそう思います。そして次に、リリンシータニーのクラウスという船頭が、このエドワードと接触したそうで、そのクラウス曰く、彼等は自分で、境界から来た者達だと名乗っていたということです。」
「なんだ、もう分かってるんじゃないか。」
「....しかし、船頭の話とは余りにも様子が違うのです。船頭はバンディの事を、人当たりが良くて穏やかな好青年だと口述していたそうで、フェルドらから聞いた人物像から、同一人物だとはとても....」
「性格なんて幾らでも偽れるだろう。...とはいえ、穏やかな好青年が、媚薬で拷問をするなどという“面白い手”を使うとはあまり思えないな。しかし、同一人物である可能性は高い。」
「そして、そのクラウスによると、同行者がいたそうで。」
「同行者?」
「小さな少女を連れていたと。マヤと呼ばれていたそうです。また、その少女の身体的な特徴、尖った耳のその形からして、恐らくドワーフであると。」
「他、容姿に関しての情報は?」
「白く短めな髪とオッドアイ....、右眼が淡い紫で、左眼がスカイブルーだったそうです。綺麗な子だったのでよく覚えていると。」
「ほう......。」
明らかに娘ではないな。一緒に境界から訪れたか.....?
「同行者といえば、昨晩の電話と、その場に実際に居合わせた組員からの情報から汲み取れるものが...」
「なんだ?」
「彼等はどうも、クドラの奴隷市場で暴れた挙句、奴隷達を逃したそうです。」
「ダッハハ!!なんだその馬鹿みたいな話は!!」
「全くです....しかしその時、見世物小屋にいたという赤毛のラットも逃げたらしいのです。」
「赤毛が?...どこへ。」
「郊外へまっしぐらに出ていくのを一瞬見たそうです。....まるでそっちに用があるみたいに。」
「....そうか.....。そうか.....。」
口がどうしても緩んでしまった。赤毛のラットを仲間にしたとすれば、まぁなんとも面白いパーティーになっただろう!
「....引き続き調べろ。特にフェルドだ。情報は度々伝えるようにしろと伝えろ。」
「承知致しました。我等が支配者。」
深く一礼しルーツォは去っていった。
しかし、エドワード・バンディか......。
「(中々面白そうな匂いがするじゃないか.....。)」
とにかく、今回のダンジョン攻略が上手くいけば、私の力はまさしく最強のものとなる。
今度こそ口や目元を歪ませながら、明らかに笑った。
〜試練を行く者、闇に住まう者〜
ご覧くださりありがとうございました!次回を早めに載せる予定ですので、是非よろしくお願いいたします!




