企みの気配
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ガロの企みとは.....?
ぜひご覧ください!
ガロは洞窟から持ってきた酒を、トロッコの中に置いてあった木製のリュックにしまい込み背負っている。
「コッチだ。この上。」
細い空洞に垂れた梯子を上って行く。
小さなランタンのオレンジ色の光が少しだけ眩しい。
一旦登り切ると、ホテルの廊下のような場所へと出た。
天井には同じくランタンが、岩壁には一定の距離を空けて扉がある。宿泊者用の部屋なのだろう。
「一番奥の部屋を使え。服は風呂場に放置してくれりゃあコッチで洗う。部屋着も置いてあるから、入浴後はそれ使え。」
「悪いな、色々と。」
「ありがとう。」
マヤと指定された部屋へ向かう。ガロはまた梯子を上って行ってしまった。
地下壕の中の雰囲気と暖かな灯りのせいか、もう日暮れ時のような気がしてくる。
「お前にも悪いことしたな、マヤ。汚れなければそのまま歩き回れたのに...。」
「良いのよ全然。急がなきゃいけないわけじゃないし。」
部屋の中はとても綺麗で、2人で使うには広過ぎるほどだった。
「風呂風呂〜。」[ ガチャ ]
「ソファーもある....。....フッカフカだわ。」
風呂場綺麗だな〜。木製.....いいな〜温かみあって。
服は....このまま放置で良いんだよな?どうせ洗濯するけど、マナーとして畳んでおく。
風呂の湯を入れつつシャワー....なんて贅沢なことは、例え宿泊所だとしても気が引けてしまう。
シャワーをちゃっちゃと浴び、その後部屋着に着替えつつ、風呂の湯を溜める。これでマヤは浸かれる筈だ。
もう今日はこのままここに泊まることになりそうだな。宿が見つかったのに出て行って野宿っていうのもなんだろうし。
十分に溜めたら湯を止め、自分が使った分の後片付けを済ませて風呂場を出た。
「マヤ、お前ももう入っちゃえ。今日はここに泊まるだろ?」
「そうね。じゃあ入ってくるわ。」
「部屋着ちゃんと持てよー。」
「勿論。.....子ども用を使うなんて屈辱だわ。」
2人ともかなり早めの入浴だけど...まぁいいだろ。
その分、後の時間をゆったりと過ごせる。
[ トントン! ]
「! (ガロか?) はーい。」
「よ。風呂入ったか?」
「あぁ。今マヤが入ってる。」
「じゃあ服は後で回収する。それより良いもの持って来たんだぜ!」
「良いもの?」
「あぁ!あ、宿代のことだけどな。大旦那に交渉してみたんだけど、やっぱりタダにはならなかったぜ。」
「そりゃそうだ!大丈夫、払えるぐらいはあるからよ。」
ガロを中に通してソファーへ促し、俺もテキトーに座る。
「そんで良いものってのが、コレだ!」
「....!?何だこれ!」
どっかで見たような感じだ........
! そうだこの感じ!餅だ!....餅?溶けてる餅?
「コレがどうしたんだ?」
「どうしたもこうしたも食べるんだよ。めっちゃウメェんだぜコレ。」
そう言うと、ガロは餅もどきに得体の知れない白い粉と、カラフルなザラメみたいな物体をかけ始めた。
そしてどこからか棒を取り出し、適度にかき混ぜると、綿あめよろしく棒をクルクルと回し持ち上げる。
棒には、まるで何かの繭のように ソレがボテッとふてぶてしく付いていた。
「ホレ、食え。」
おぉ.......
「ホラ!ヘイ!」
ソレを受け取り、
「い、いただきます。」
口の中へ......
「どうだ?美味いだろ!」
....食感としては、少し、粘り気と弾力が弱くなった餅のようだ。ザラメの食感が良いアクセントになって楽しい。
ミルクのように甘く、フルーティー.....ってことは、フルーツ牛乳っぽいのかな。
正直......
「うんまいなコレ!」
「だろ〜?ストレスが溜まった時とかはよく食うんだぜ!甘いの好きだし。」
「名前は?」
「ペプットゥカ。」
「言いにくいな!.....マヤにも食べさせたいな、いいか?」
「当たり前だろ!ていうかそのつもりだったしな。」
俺達はそのまま話をし始めた。
「お前ら境界人だろ?...ああやっぱりな。そんな気がしたんだ。境界ってどんなところなんだ?」
「そうだな〜、...なんというか、面白い世界ではあったよ。そういえば、ガロは生まれた時からここにいるのか?」
「ああ。でも、外の世界を見たことがないわけじゃないぜ。見回りとしてだけど、色々歩いてるからな。」
「じゃあなおさら聞きたいんだけど、ここら辺には、あんまりモンスターはいないのか?」
「いや?全然いるぜ? なんでだ?」
「ここに来る途中、全く遭遇しなかったもんだからさ。」
「アハハハハ!流石だな!」
「流石?」
「お前のオーラを感じ取ったんだよきっと。モンスターだって馬鹿ばっかりじゃねぇ。ダメだと思ったら逃げるんだよ。オレもやっぱりちょっと.....いや、いい。」
「?」
.......やっぱり逃げられてたのか......。
「......なぁ、話は変わるんだけど、楽しいか?そうやって色んな所を歩くのって。」
「ああ。まだまだ始めたばっかりだけど、かなり楽しいぜ。出てきてよかったと思ってる。」
「そうか.....。」
ーーーーーーーー
「美味しい!」
「な!美味いよな!」
風呂から上がって来たマヤに早速勧めた。
最初訝しげな表情を浮かべていたマヤだが、食べ始めると止まらなかった。
会話をしつつ、3人で仲良く平らげていく。
ガロの話によると、この地下壕の中には宴会場もあるらしい。お客が多い時はそこで色々なイベントを開催するらしいが、残念ながら今日は少ないためできないと言われた。
他にも レストランやパブ、小さいが図書館など、色々と施設があるんだとか。地下とは思えないほど充実していて、少し驚いた。何より図書館があるのが嬉しい。
製品の熟成や発酵は洞窟でないとダメだったのかと聞くと、どうも地下壕でいくら頑張っても作れない程の悪魔的な美味さが、洞窟のものにはあるらしい。
特別な青カビがなんたら言っていたが、結局のところ、詳しくは分かっていないらしい。
「レストランで食ってみりゃあ分かる。普通のチーズとは格が違う美味さだぜ。」
「なるほど...それは食ってみねぇとな。」
夕飯時になったら向かおう。
「食う時間まで図書館にいてもいいか?」
「ええもちろん。私も行きたいし。」
図書館にはぜひとも行っておきたい。
パブだのそういう酒が絡む所は、俺が後で1人で行こう。..........飲む為じゃねぇ、情報収集の為だ、うん。
「色々あるぜあそこ。ここら辺の地理の本とかな。読んどいたほういいぜ?結構ややこしいし、どこに出るかで行き着く街も変わるからな。(まぁ街じゃねぇ場合もあるけど。)」
「そうだな、それも読んでおかないと。」
そうして、ガロに案内され図書館へ。
色々読みたいのはあるが、とりあえずここら辺のことが書いてある地理の本を開いた。早いうちに行き先を決めておきたいからな。ここは貸し出しもできるらしいから、その他は後で借りて読むことにしよう。
「(谷底をそのまま進んで行くと村に出るんだな。岩壁を登って進んで行くとダンジョンのある街に出るのか....。)」
俺としては是非ともダンジョンに行きたいが....マヤはどうだろうな。多分同意見だとは思うけど、相談してみねぇと。
「.....んで、お前は仕事しに行かなくていいのか?ガロ。」
「他の従業員に言ってあるから平気だ。ここ人手が余ってるぐらいだから、サボったとしてもまぁ大丈夫なんだよ。」
人手が余るって良いな〜...。
「どこに行くんだ?」
「まだちゃんとは決まってないけど、俺的にはダンジョンの街に行きてぇなと。」
「あそこヤベェらしいぞ?帰ってきた奴いねぇって聞いたことあるぜ。」
「!そうなのか。」
帰ってきた奴がいない.......。ふっ、どっかで聞いたセリフだな。
「ま、大丈夫じゃねぇかな。マヤも俺も強いし。」
「大した自信だな...。まぁ主倒せたぐらいだしな。もしかしたら......。」
帰ってきた奴がいないおかげで、中の情報皆無ってのも良いな。色々夢が広がるぜ。
「.........。」
「?どうしたガロ。」
「......いや、悪りぃ、やっぱ仕事に戻るわ。」
「おぉ、そうか。」
やっぱりサボっていられなくなったか。
「(とりあえずマヤに相談しに行こう。)」
「マヤ、行き先のことなんだけどな。」
「....。ん?あぁ、何?」
ふふっ、すげぇ読み入ってたな。
「行き先だよ。色々あるんだが、俺的にはダンジョンの街がいいな〜と。」
「! ダンジョン!ダンジョンがあるならそこに行かないと。攻略してこそ冒険でしょ?」
「ハハッ!だよな。よし、じゃあ明日はここに向かおう。」
「えぇ。ふふふ、良いわね〜ダンジョン。響きもさることながらワクワクが違うわ。」
確かに。ロマンに溢れた響きだよな。
「明日は早起きだな。」
「ふふん、任せて。」
「......(朝早くか.....。)」
〜企みの気配〜
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