3話 建設家の仕事
「あ~今日も配管工事かぁ・・・」
こう心の中で愚痴をたらすのはフータというこの塔にはありふれた名前の少年だ。
本名は塔颯太。
塔という苗字は建設家に多かったらしいが、大昔に迫害された時に殆どの建設家一家が処刑された。
なぜ迫害され処刑されたのかは未だに分からないが、迫害は今の管理局にも引き継がれ、建設家は下層に身を潜め、今もなお管理局から隠れるために塔という苗字は隠してきた。
「颯太、手を止めるな。殺されるぞ」
こう言うのは颯太の祖父。建設家のゴン爺だ。
彼はかつて上層に住んでいたらしいが、ある大罪を犯して下層に追放されたらしい。
フータ達は今日も明日も明後日も強制労働をし、毎日配管を修理している。
この塔は建設から2500年の時が既に経過しており、塔の至る所で老朽化や故障が頻繁している。
上位階層に住めない浮浪者や建設家、身寄りのない子供などはこうして建設家のアルバイトをして食い繋いでいる。
「ちゃんと仕事してるかぁ?ゴミ共」
軍の連中だ。
ただ銃を持って国民をいたぶる簡単な仕事をしている連中だ。
今回の担当ブロックでも、どこの階層に行ったとしても、軍はいる。
1つ例外があるとすれば塔基底部だろうか。
あの階層には重力炉があり、炉が生み出す重力で押し潰されそうになったり、重力炉が生み出す放射線で簡単に即死するため、生身の兵士が生きていける場所ではない。
よって監視がない訳だが。
「うわっ!熱!」
老朽化したお湯パイプから蒸気が漏れてきた。この塔ではよくあることだが、この日は運が悪かった。
軍の連中が見ていなければ直すだけで良かったのだが、この日に限って軍の奴らが見ていたのだ。
「おい!今お前がわざと壊したんだよな?」
全くのとばっちりもいい所だが軍に逆らうことは出来ない。
逆らったら最後、処刑される運命しか残されてはいない。
「勝手に漏れてきたんですよ」
本当の事を言った。
だが、軍の連中には言ったところで理解されるはずもなく。
「俺が間違ったとでも言いたい様だなぁ?」
案の定こうなった。
今までこのくだらないやり取りを何千回見続けてきて何人もの人が処刑されてきた。
アイツらは上級国民だの吐かしているが、この下層に来る時点で出世コースから外れた落ちこぼれだろう。どうせ処刑でストレス発散しようとしているに違いない。
だが、まさか自分の番が回ってくるとは思ってもみなかった。
「わーざわざお前らがゴミの掃き溜めと見下している下層に来た出世コースから外れた哀れな自称上級国民様風情が調子に乗っているご様子で。
どうせ上の階層で散々虐められて嫌になって下層に逃げて来たんだろーが」
捨て台詞のように咄嗟に思いついたことを並べて言う。
「お前・・・!!!このガヤルド様を愚弄する気か!?」
捨て台詞を吐いた後、右の腰辺りに付いていた工具をガヤルドと名乗った奴の顔面に向けて投げつけた。
そして、逃げるように入り組んだ集合管の中に飛び込んだ。