962:ダイヴプリペア-3
「それじゃあ行くわよ。『竜活の呪い』」
それでは検証開始。
まずはレベル1、異形度1、干渉力100と言う『ダマーヴァンド』の各所に生えているスパイスとしての用途しかない普通の草をコストとして使用し、『竜活の呪い』を発動。
102%だけステータスを上昇させると言う『竜活の呪い』としては最低限のものであり、最低限であるからこそか、私の姿の変貌も角が六本に増えたぐらいなものである。
「ザリチュ」
『何時でもいいでチュよ』
「では、『眼球』」
そうして変身したところで、適当な砂を対象にしてザリチュの渇砂操作術を発動。
眼球ゴーレムを作り出す。
「続けて『腕』……『鼠』」
無事に眼球ゴーレムが出来たので、CTが貯まるのを待って、腕ゴーレムと鼠ゴーレムも作り出す。
なお、CTの待ち時間では『路通しの薪』とアウタータブレットの量産や検証班への連絡などをしているが……まあ、置いておこう。
「さて、これで三体出来たわね」
『でチュね』
出来上がった三体のゴーレムは見た目には特に変化は見られない。
特別な砂を使ったりはしていない。
この三体のゴーレムを作成する呪術は、先日のザリチュの強化によって、干渉力の部分が使用時の私の干渉力そのままになっている。
なので、この三体のゴーレムに影響を与える要素があるとすれば、『竜活の呪い』の強化によって増した干渉力の分だけである。
と言う訳で、今回の検証は『竜活の呪い』使用中に生成したゴーレムについてである。
「ふむふむ……干渉力の影響は出ているみたいね」
『でチュねぇ』
結果は?
まず、どのゴーレムも動き回る能力が非常に上がっている。
眼球ゴーレムは普通に飛び跳ねているし、腕ゴーレムも結構な速さで這えるし、鼠ゴーレムに至っては縦三回転横三回転ぐらいの乱回転をしつつ綺麗に着地したり、床から天井まで平然と跳ねて見せたりしている。
と言うか鼠ゴーレム、これ、新人プレイヤー相手なら、一対一で圧倒するくらいは出来るのでは?
ちなみに干渉力が上がった副作用だろうか、眼球ゴーレムから送られてくる映像は今までよりも高精細になっているし、腕ゴーレムは指の回転スピードが非常に速くなっている。
「まあ、問題は此処からなんだけどね。『竜活の呪い』解除」
『そうでチュねぇ』
私は『竜活の呪い』を解除する。
すると『竜活の呪い』のデメリットが発動して、その内の一つである呪詛操作不可によって、ザリチュがゴーレムを操る事も不可能になる。
だが、ゴーレムが崩壊する事はなく、そのままの姿勢で止まっている。
「治ったわね」
『さて、どうなるかでチュねぇ』
デメリット終了。
呪詛操作不可が解除されて、ゴーレムの操作が再び可能になる。
さて、これで問題なく『竜活の呪い』発動中に作成したゴーレムが操れるのであれば、色々と有用なのだが……。
『あ、これは駄目でチュね』
「みたいね」
うん、見るからに駄目だった。
鼠ゴーレムは先程までの快活な動きが何処かに行ってしまったかのように、ゆっくりとした動きしか出来なくなっている。
腕ゴーレムは動きはゆっくりで、回転の最大速度は変わらないようだが、制御が甘くなっている。
眼球ゴーレムは……本体の動きはゆっくりの癖に、大量の画像データを私の意思を跳ね除けるように無理矢理送り込んできている。
これでは色々と駄目だろう。
「どうしてこうなったのかしらね。ザリチュ、貴方の感覚的にはどうなの?」
『んー、なんて言えばいいんでチュかね? ざりちゅが送り込む操作の情報がゴーレムの中に入り込むと同時に弱められて、逆にゴーレムから送られてくる情報は増強して届けられる感じでチュかねぇ』
「なるほどねぇ」
どうやらゴーレム作成時の干渉力は今もきちんと残っていて、ゴーレムたちが今の私たちの倍以上の干渉力を持っているせいで様々な不具合が生じてしまっているようだ。
こうなると普段使いする分には色々と問題があるので、使う訳にはいかない。
が、『竜活の呪い』発動中だけ使うゴーレムとしてストックしておくのは有りかもしれない。
「じゃあ、何処かに持ち歩くときはドゴストに……」
私はドゴストに三体のゴーレムを入れようとしてみた。
だがしかし、ここで更なる問題が発生した。
「お、重い……」
『干渉力の暴力でチュねぇ』
まず重い。
見た目から想像できる重量の倍は重い。
干渉力の影響を受けているようだ。
「ドゴスト……」
『きょ、拒否しているでチュ……』
次にドゴストが拒否している。
いや、口を開かないとか、背中側に勝手に移動して入れさせない、と言った直接的な行動こそ起こしていないが、全身から収納したくないオーラを出している。
まるで胃もたれを起こすので勘弁してくださいと言わんばかりである。
「ザリチュ……」
『まあ、仕方がないと思うでチュ。ただでチュね。たるうぃ』
「何かしら?」
『自壊命令も効かないでチュー……』
「おおう……」
最後に破壊手段だが、どうやら地道に壊す以外にないようだった。
そんなわけで、結局私は力を振り絞って噴水にまでゴーレムを運んでいき、噴水にゴーレムを沈める事で処分したのだった。
『あいるびーばああぁぁく、でチュね』
「そのポーズだけ淀みなく出来るあたりに色々と違和感を覚えるわね……」
なお、噴水に沈んでいく腕ゴーレムは、何故かこちらにサムズアップしながら沈んでいった。
06/28誤字訂正