946:ドゴスト-1
「ログインっと……はい」
「来たでチュね。たるうぃ。そして早速でチュか」
本日は日曜日。
可能ならば今日で装備品のアップデートは終わらせてしまいたいところである。
と言う訳で、私はもう準備済みであったドゴストを呪怨台に乗せた。
「ドゴスト。『虹霓境究の外天呪』である私の蔵。竜を宿し、我が血を宿すもの。新たなる姿を私の前に見せなさい」
きちんとした作業をしなくてもいいのか?
という感じの視線をザリチュから感じているが、ドゴストに限ってはありである。
と言うか、前回の強化の時点でドゴストには好き勝手させていたのだから、今更である。
そして、自分で好き勝手に強化させるからこそ、昨日の内に虹亥の竜呪の胃袋を含む竜呪たちの可食部位、それに私の血をドゴストに入れて放置しておいたのだし。
で、呪い方についても、条件こそザリチュたちと同じにするが、細部についてはドゴストに任せた。
そちらの方が良いと判断したからだ。
「さて、問題はなさそうね」
「みたいでチュねぇ」
そうして無事に出来上がったドゴストが私の前に姿を現す。
見た目は……手のひらサイズ、蘇芳色の袋だ。
だが、これまでと違って六つの突起物が生えているし、袋の口が見当たらない。
「これは……やらかしたかしら? だとしたらちょっとお話が必要になるのだけど……」
「チュア……」
私は新たなドゴストを手に取ると、鑑定をしてみる。
結果は?
△△△△△
『竜憑きの外砲袋呪』ドゴスト
レベル:所有者のレベルと同じ
耐久度:100/100
干渉力:所有者の干渉力と同じ。
浸食率:100/100
異形度:25
竜、そして外天呪に由来する呪いを含む、数多の呪詛を利用して制作された、小物入れにしか見えない大きさの袋。
積極的に自己意思を示すような事は無いが、正当所有者の眷属として扱うべきではあるだろう。
この世ならざる者に通じる気配を漂わせており、正当な所有者以外が用いれば、恐ろしい呪いに襲われる事だろう。
どれほど危険な物でも中に入れてしまえば、取り出さない限りは安全。
どれほど重い物でも中に入れてしまえば、重量はなくなる。
どれほど大きな物でも、一部が中に入れば、容量が許す限りは入れられる。
その容量は所有者の土地に等しい。
物を出し入れするための口は自在に作り出せる。
所有者の身体に張り付き、引き剥がす事は難しい。
魅了完全無効化。
周囲の呪詛濃度に応じて強度が向上する。
周囲の呪詛、エネルギーの一部を吸収する事で耐久度が回復する。
耐久度が0になっても、一定時間経過後に復活する。
呪いの塊であるその身は幾つかの呪術を習得しており、所有者がトリガーを引くことで使用が可能。
『竜息の呪い』『竜活の呪い』『埋葬の鎖』
注意:この道具をタル以外が使用した場合、1回ごとに毒、灼熱、気絶、恐怖(使用者のレベル×周囲の呪詛濃度)が付与される。
注意:所有者は、満腹度のみを低下させる効果に対する耐性、抵抗性が低下する(極大)。
注意:ゲーム内時間で25時間以上、連続で入れていた物質は消滅します。
注意:入れた者が忘れた物質は取り出せません。
注意:袋が破壊された際には、入れていた物は全て消滅する。
注意:称号『虹霓境究の外天呪』を持たないものが使用すると、使用する度にレベル低下(1)が付与される。
注意:『陽憑きの外煌錫呪』ネツミテとリンクしています。
注意:この道具を低異形度のものが見ると嫌悪感を抱く(極大)。
▽▽▽▽▽
「あ、ごめんなさいドゴスト。超強化されてるわ。貴方」
「ああ、これはかなりヤバい強化がされてるでチュねぇ……」
鑑定結果を見た私は即座にドゴストに謝った。
これまでの機能にマイナスは生じさせず、謝るだけの価値がある強化がされていたからである。
実際のところ、強化内容としては容量増加、魅了完全無効化、私の身体に張り付くことが出来るようになり、口が表面の自由な場所に出せるようになった、デメリットの変更、これだけだ。
要約してしまえば、ほぼ自由度が上がっただけとも言える。
ザリチュたちのように、呪術が強化されたりはしていない。
だが、それでも十分すぎるのだ。
「考えてみれば、ドゴストの呪術に直接的な強化の余地なんてないのよねぇ……」
「むしろ、これ以上強化されたらいけない部類でチュよ」
そう、ドゴストの呪術は『竜活の呪い』も『竜息の呪い』も十分すぎるほどに強い。
そして今回、直接的な強化はなかったが、実は間接的な強化はされているのだ。
「うん、これ、背後に撃ったりも出来るわ」
「えげつないでチュねぇ……」
それが自由度の向上。
新たなドゴストは、私の体の好きな場所に張り付ける。
定位置は腰だが、必要ならば背中、腕、脚、翅の先、『竜活の呪い』発動中ならジタツニの伸びたスカートの先にだって張り付ける。
そして、張り付いた先で、自由な方向に袋の口……言い換えれば『竜息の呪い』の射出方法1の発射口を生成する事が出来る。
私が背後まで普通に見えている事も合わせれば、どれだけ酷い事になるかを、これ以上詳しく語る必要はないだろう。
「とりあえず無事にドゴストの強化は出来たから、いつもの作業をして、それからトテロリの強化をしましょうか」
「分かったでチュよ。たるうぃ」
では、ログインした直後にいつもではない作業をしたのが現状なので、いつもの作業に取り掛かるとしよう。
06/12誤字訂正