882:ボーダー-3
「アアア暗アアァァ損ァァァ……!?」
『竜活の呪い』の発動によって私の姿が変わっていく。
背中から生えている六枚の虫の翅が巨大化し、13の目の瞳孔が龍のものになり、鱗が体の各所に生える。
爪は黄金色に変化した上で鋭くなり、角は巨大化すると共に三つに分かれて三対六本となる。
髪は長く長く尾のように伸び、呼気に虹色の炎が混ざる。
そしてこれらの変化を隠すかのように私の体はノイズを纏い、虹色の燐光も纏う。
「虹霓竜憧の鏡怪呪」
「!?」
だが、ルナアポを使ったからか、あるいは真の神との邂逅を果たしたからか、変化はこれで終わらなかった。
『地憑きの羽衣呪』ジタツニのスカート部分が大きく広がり、伸び、伸びた部分の内側から蔓、枝、葉、あるいは触手が伸びて、周囲の呪詛を食む。
『陽憑きの錫杖呪』ネツミテの打撃部の中心部分が恒星のように真っ赤に輝くと共に、打撃部が13に分かれて惑星のように公転軌道で回り始める。
『星憑きの玉輪呪』ドロシヒの13の錘が輝きだすと共に、5つの首輪が星雲と化して物理的な束縛が無くなる。
『竜憑きの袋呪』ドゴストは半透明の四肢、翼、頭、尾を得て小さな竜の姿となり、私の腰にしがみつく。
『魔憑きの指輪呪』トテロリは剣呑なオーラを纏うと同時に少女のような笑い声を周囲に響かせ始める。
『虹憑きの根付呪』ニネナナはその身を瞳とした虹色の蛇と化し、ドゴストと同じように腰へと絡みつく。
「好きにしなさい。結末は変わらないから」
『そうでチュねぇ。どう足掻いてももう変わらないでチュ』
「……」
そして『竜鱗渇鼠の騎帽呪』ザリチュは……全体が竜の鱗に覆われ、膨大な量の砂塵を生み出し、私と虹霓竜憧の鏡怪呪の双方を囲むように砂の輪を展開する。
それは巨大な魔法陣のようにも見えるが、同時に太陽系の小惑星帯のようにも見えるものである。
私と共にザリチュたちまで変化したのは、此処が特殊な場であることも影響しているだろうが、ザリチュたちが私の一部であるのも理由だろう。
まあ、詳しい理由については今は考えなくてもいいし、今後明らかにする必要があるかも怪しい。
今するべき事はただ一つだ。
「来なさい。狂記外天:森羅狂象・初稿-ルナアポクリフ:オルビスインサニレ・ターゲスアンブルフ」
私は名が変わったルナアポをネツミテの先端に生み出す。
その刃は長大で重く、禍々しいが呪いではない力を纏っており、虹色と漆黒が入り混じる炎のようなオーラを放ちつつ、時折だが夜明けのような眩しい光を迸らせている。
「アア暗アアアアァァァ嫌ァァァァアリ離リリリエエ獲エェェナナ無ナナナ……」
その輝きは虹霓竜憧の鏡怪呪には恐ろしく、怖ろしく、悍ましく、震えが止まらないものであるらしい。
無数の目を大きく見開き、逸らす事も出来ず、全身を震わせ、この場を何とかしようと思索を重ねるも結局は何もできない状態にあるようだった。
まあいい、何もしないなら、何も為させないままに切り伏せるだけの話である。
「etoditna……」
「!?」
故に私は一歩踏み込む。
それは私にとっては普通の一歩であったが、虹霓竜憧の鏡怪呪にとっては目にも留まらぬ一歩であり、認識する事以外を許さない一歩であった。
そして、そのまま呪詛の剣でもあるルナアポに私が持ち得る全ての力を込めながら振りぬく。
「『毒の邪眼・3』」
「アッ……」
加えてルナアポが虹霓竜憧の鏡怪呪を切り裂くと同時に、『毒の邪眼・3』を撃ち込む。
虹霓竜憧の鏡怪呪の身を守る境界はルナアポに切り裂かれて意味を為さず、虹霓竜憧の鏡怪呪の身に注ぎ込まれた毒はその全身を一瞬で巡った。
結果。
「ま、こんなものよね」
『でチュねぇ』
虹霓竜憧の鏡怪呪の全身は一瞬にしてドロドロに崩れ落ち、呪詛と淀みに変換され、それらは他の大呪が食らう暇も与えずに純粋なエネルギーとして変換、私の糧となった。
≪タルのレベルが46に上がった≫
≪称号『到達者』、『越境者』、『虹霓境究の外天呪』を獲得しました≫
≪外天呪と付く称号の取得に伴い、称号の整理が行われます≫
「む……」
『結構な変化があったみたいでチュねぇ』
「ええそうね。結構な変化があったわ。とは言え、まずはこの場の脱出ね」
インフォメーションが流れる。
その詳細を早く知りたくはあるが、今の私は『竜活の呪い』の効果によって一時的に力を得ている状態で、その一時が過ぎれば身動き一つまともに取れなくなる。
こんな足場もない場所でそんな状態になるわけにはいかないので、早いところ安全な場所まで移動するとしよう。
「……。いや、整理とは言ってたし、『CNP』のシステム的にそこまでの問題は無いんでしょうけどさぁ……」
『なんか、以前にも見た覚えのある光景でチュねぇ……』
そうして移動し、『竜活の呪い』の効果が切れ、ザリチュたち含めて元に戻ったところで各種鑑定を行った結果。
私は『竜活の呪い』の副作用以外の理由でもって、突っ伏すことになった。
△△△△△
『虹霓境究の外天呪』・タル レベル46
HP:4,252/4,350
満腹度:125/150
干渉力:145
異形度:28
交信-[ID]、虫の翅×6、増えた目×11、座標維持、呪憲・瘴熱満ちる宇宙、遍在する内臓、劣竜式呪詛構造体(劣竜血、劣竜骨髄、劣竜肉、劣竜瞳、劣竜皮、劣竜角×2)
称号:『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『3rdナイトメアメダル-赤』、『呪い狩りの呪人』、『竜狩りの呪人』、『偽神呪との邂逅者』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『雪山侵入許可証』、『海侵入許可証』、『七つの大呪を排するもの』、『虹霓境究の外天呪』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・3』、『灼熱の邪眼・3』、『気絶の邪眼・3』、『沈黙の邪眼・3』、『出血の邪眼・2』、『小人の邪眼・2』、『淀縛の邪眼・3』、『深淵の邪眼・3』、『飢渇の邪眼・3』、『暗闇の邪眼・3』、『魅了の邪眼・3』、『石化の邪眼・2』、『恒星の邪眼・3』、『禁忌・虹色の狂眼』
呪術・原始呪術:
『交信-活性』、『交信-抑制』、『交信-選別』、『風化-活性』、『風化-抑制』、『風化-排斥』、『魔物-活性』、『魔物-排斥』、『反魂-活性』、『反魂-排斥』、『転写-活性』、『転写-排斥』、『再誕-活性』、『再誕-排斥』、『蠱毒-活性』、『蠱毒-簒奪』
呪術・渇砂操作術-ザリチュ:
『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』、『鼠』、『化身』、『噴毒の華塔呪』、『瘴弦の奏基呪』、『禁忌・虹色の狂創』
呪術-ジタツニ:
『砂漠の呪い』、『抗体の呪い』
呪術-ネツミテ:
『太陽の呪い』、『熱波の呪い』、『埋葬の鎖』
呪術-ドロシヒ:
『虚像の呪い』、『貯蓄の呪い』
呪術-ドゴスト:
『竜息の呪い』、『竜活の呪い』、『埋葬の鎖』
呪術-トテロリ:
『転移の呪い』、『不明の呪い』
呪術-ニネナナ:
『選択する呪い』、『虹霓外の瞳』
呪法:
『呪法・増幅剣』、『呪法・感染蔓』、『呪法・貫通槍』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・破壊星』、『呪法・呪宣言』、『呪法・極彩円』、『呪法・呪晶装填』、『呪法・逆残心』
所持アイテム:
『竜鱗渇鼠の騎帽呪』ザリチュ、『地憑きの羽衣呪』ジタツニ、『陽憑きの錫杖呪』ネツミテ、『星憑きの玉輪呪』ドロシヒ、『竜憑きの袋呪』ドゴスト、『魔憑きの指輪呪』トテロリ、『虹憑きの根付呪』ニネナナ、鼠毒の竜呪の歯短剣×2、鑑定のルーペ、フェアリースケルズ、蜻蛉呪の望遠鏡、etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール、呪詛貯蓄ツール×5設置、『熱樹渇泥の呪界』・『入子屋敷の呪地』・『塩砂湖畔の呪地』接続済み
システム強化:
呪怨台参式・呪詛の枝、BGM再生機能、回復の水-2、結界扉-2、セーフティ-2、長期保管用カプセル、『満腹の竜豆呪』ハオマ
???:
狂記外天:森羅狂象・序文-ルナアポクリフ:オルビスインサニレ・キューケン
狂記外天:森羅狂象・初稿-ルナアポクリフ:オルビスインサニレ・ターゲスアンブルフ
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