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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
12章:『泡沫の大穴』
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878:バブルホールL-5

「「「ングルゥ!」」」

「ま、アレよね。頭の数が足りてないわ」

 目に見えるだけで7体、目に見えないものも含めれば10は確実に超えるであろう虹蛇の贋魔呪が向かってくる。

 これが地上ならば、あらゆる方向から同時に詰められて逃げ場などないのだろう。

 だが、この戦場に地面はなく、私は好きな方向に移動する事が出来る。

 なので、まずは目に見えている7体の虹蛇の贋魔呪の攻撃を回避。


『見えないのはどうするでチュ?』

「見えない、聞こえない、嗅げない、けれど物理的な攻撃をこちらに出来る以上は触れるし、カースである以上、己の呪いの保持は第一。つまり、呪詛支配が及ばない場所に虹蛇の贋魔呪が居ると分かるわ」

 続けて目に見えない虹蛇の贋魔呪の攻撃をたぶんだが、避けていく。

 とは言え、こちらは口で言うほど簡単な話ではない。

 と言うのも、見えない虹蛇の贋魔呪の所在だが、どうにもブレが激しくて、所在が掴み切れないのだ。

 呪詛支配が及ばない範囲の感じからしてたぶん6体は居ると思うのだが……うん、断言は出来ない。


「「「ユルグルルンンンッ!!」」」

「む……『熱波の呪い(ドロクセルブ)』」

 とりあえずだ、どういう理屈で姿が見えなくなっているにせよ、こちらへと攻撃が出来るのであれば、こちらから攻撃をする事は可能。

 私はそう考えて『熱波の呪い』によるこの空間全域への攻撃を行う。

 対する虹蛇の贋魔呪たちはそれぞれの鱗の色と同じ炎を吐いてくる。

 見えない虹蛇の贋魔呪も含めて、全ての個体がだ。


「「「ユルグゥ……」」」

「そう、炎あるいは光ではあるのよね」

『右手を炭化させつつ言うセリフではないでチュよ。たるうぃ』

 虹蛇の贋魔呪が同士討ちを厭わずに撃ち込んでいたこともあり、流石に攻撃の密度が高すぎた。

 私は回避しきれず、右手に見えない炎が当たり、熱いとも呪詛に侵されたとも感じることなく、右手が炭化した。

 現象からして炎や光に類する力だとは思うのだが……いや、よく見たら炭化現象が線状に起きている?

 そういう事なら……少し試してみようか。


「「「ユルルルル……」」」

ekawa(エカワ)気絶の邪眼・3(タルウィスタン)』」

「「「ッ!?」」」

 私は推定13体居る虹蛇の贋魔呪に向けて『気絶の邪眼・3』を撃ち込む。

 それぞれの目から生じたエフェクトを見る限りでは、全員に気絶が入ったはずだ。

 だから私は、虹蛇の贋魔呪の動きが止まると同時に、呪詛の鎖を体に巻き付けての引き上げ、自分自身と言う呪いを支配しての強制移動、虫の翅による羽ばたき、『座標維持』に基づく移動、足裏にルナアポを生み出して踏み台にする行為、これら全てを組み合わせる事によって、今の私にとっての限界速度で上方へと移動する。


「ああなるほど。やっぱりそうね。次元の向き、あるいは偏光かしら? とにかく位置によって見える個体が変わるのね」

『奇妙なカースでチュねぇ』

 結果として、その理屈の詳細までは分からないが、虹蛇の贋魔呪が如何なる存在なのかが少し見えた。

 虹蛇の贋魔呪が動きを止め、その間に移動した私の視界には、変わらず7体の虹蛇の贋魔呪の姿が見えている。

 だが、その7体は先ほどまでの位置で見えていた7体とは一部が異なるし、色も変わっている。

 また、中には微妙な角度だからだろうか、まるで壁に描かれた絵のように厚みを感じない虹蛇の贋魔呪も居るし、線のようにしか見えない虹蛇の贋魔呪も居る。

 どうやら虹蛇の贋魔呪は、存在している座標や次元がおかしいようだ。


「とりあえず殴る!」

「ユグオッ!?」

『まあ、結局やる事はそういう事でチュよね』

 いずれにせよだ。

 そこに居るのは確かであり、居るのであれば倒す事は可能である。

 と言う訳でとりあえずルナアポを再生成、ネツミテの先端に生み出したそれを近くに居た虹蛇の贋魔呪の目に突き刺す。

 流れ込んでくる情報は……特にこれと言ったものは……いや、あった。


「ああなるほど。そういう理屈だったのね。本当にどうしようもない連中ね」

「「「……!?」」」

『チュアッ!? たるうぃ!?』

 それは何故異なる次元へのアプローチを求めたのかと言う記憶だった。

 正直な意見として、私はそれを見た途端に七割くらい冷めた。

 まあ、アレの存在を知った時点でそうではないかと予想していた部分ではあるし、そのための技術開発によって未知が生まれているから、完全に冷め切ったわけではない。

 だが、虹蛇の贋魔呪……と言うより、虹蛇の贋魔呪の内側に存在しているそれらに対して冷めた目を向けずにはいられなかった。


「まあ、いいわ。とりあえず虹蛇の贋魔呪。あなた自身にはもう特に未知はなさそうだし、早々に終わらせましょう」

「「「ユルルル……ングルゥ!!」」」

 虹蛇の贋魔呪が一斉に私へと攻撃を仕掛ける。


「あなたが何処に居るかも理解したことだしね」

「!?」

 そして、その全ての攻撃を私はすり抜けた。

 すり抜けて、13の蛇の胴体が集合している場所、13体になる前に撃った伏呪付きの『恒星の邪眼・3』によって重くなっている部分に近づく。


「宣言しましょう。虹蛇の贋魔呪、貴方は私の毒によってもがき苦しむ事になるでしょう。etoditna(エトディトナ)毒の邪眼・3(タルウィベーノ)』」

「!?」

 近づいて、ルナアポを取り出し、『呪法(アドン)増幅剣(エンハンス)』の発動をルナアポの斬撃にしつつ、他の呪法と『呪憲・瘴熱満ちる宇宙(タルウィ)』も乗せた『毒の邪眼・3』を撃ち込む。

 虹蛇の贋魔呪に撃ち込まれた毒は、表象に留まらず深奥にまで至り、蝕み、虹蛇の贋魔呪を苦しめる。


「ーーー!?」

『おっ、敵が弱くなったでチュね。じゃあ、これまで以上に暴れるでチュよ』

「ええ、好きなだけ暴れるといいわ」

 虹蛇の贋魔呪はもだえ苦しむ。

 それは毒による苦しみだけでなく、呑み込んだだけで処理が出来ていない化身ゴーレムが暴れまわっている事もあるだろう。

 私はそれを虹蛇の贋魔呪の間近で、けれど決して手に届かない位置で眺める。


「ーーーーー……」

 やがて虹蛇の贋魔呪は力尽き、倒れ、縮んでいく。


「チュアッハー!!」

「お帰りなさい、ザリチュ」

「ただいまでチュよ。たるうぃ」

 そして化身ゴーレムが虹蛇の贋魔呪の死体の中から現れ、私の手の内には虹蛇の贋魔呪の小さな亡骸だけが残された。

04/05誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] >それは何故異なる次元へのアプローチを求めたのかと言う記憶だった。正直な意見として、私はそれを見た途端に七割くらい冷めた。 タルが冷めたって事は淀み関連なのか。口の中に救いを求めて手を伸ばす…
[気になる点] 虹蛇の贋魔呪の小さな亡骸 まさに竜頭蛇尾な存在なのかな? でも、どうしようもない? なにが視えたのか。ちょっと私じゃ情報処理できない。気になるねぇ…
[一言] なんだかんだかなり器用にルナアポを使いこなしてるなぁ
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