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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
12章:『泡沫の大穴』

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874:バブルホールL-1

「使い……づらい!」

「グギャアッ!?」

 日付が変わって火曜日。

 私はいつもの作業を終えると、『泡沫の大穴』へとやってきていた。

 目的は底を目指すことと、狂記外天:森羅狂象・序文-ルナアポクリフ:オルビスインサニレ・キューケン……うん、やっぱり長いのでルナアポと略すが、ルナアポの実戦での運用を試すことである。

 不発弾と言えども、試さない事には今後どう扱うべきかも分からないからだ。


「たるうぃ、恒星竜の首を一刀両断しつつ言うセリフではないと思うでチュよ」

「いや、言いたくもなるから。本当に使いづらいのよ、ルナアポ」

 さて、現在は『恒星の邪眼・3(タルウィヘビィ)』を習得する事で出現するようになった灰色の鱗のドラゴン……恒星竜を撃破したところである。

 命中するとこちらの体が重くなり、碌に身動きが取れなくなるような超重力を発生させるブレスこそ厄介だが、基本的な性質については他のドラゴンと変わらないため、戦闘そのものは特に支障なく終わった。

 では、真面目にルナアポを実戦で使った感想について述べよう。


「チュー……具体的にはどんな感じなんでチュか?」

「そうねぇ。とりあえず重い」

「材料が材料でチュからねぇ」

 まずとにかく重い。

 ほぼ金属だけで出来ているので当然ではあるが、より正確に述べるならば、鉄だけでなく銀や金も混ざっているので、単純に質量があるのである。


「動かしづらい」

「たるうぃの干渉力に100を加えた干渉力、だったでチュか」

 次に動かしづらい。

 これはルナアポが私の干渉力+100の干渉力を持つのが理由である。

 『化身(ザリチュアバタ)』のコストも併せて考えると……今の私の干渉力の実数値が130で、ルナアポの干渉力が230。

 自分の倍近い干渉力を持つ物体なのだから、そりゃあ動かしづらいはずである。


「私は本来後衛だから、前衛として立ち回る能力が低いわ」

「後衛はドラゴンの炎と爪による攻撃をかいくぐって、斬首を実行しないでチュよ。たるうぃ」

「スクナやブラクロ、ザリアと比べたら低いじゃない」

「それは比較対象が一流なだけでチュ」

 私の立ち回りに剣と言う形態がそぐわない。

 普通の呪詛の剣は高速……やり方によっては超音速で飛ばせるのに対して、ルナアポは『座標維持』の効果で宙に浮かべ、ゆっくりと動かすことは出来るが、これは持ち運びにしか使えないレベル。

 なので、接近して直接切り付ける事になるのだが、私は接近戦が出来るタイプではない。

 ネツミテの先端や打撃部に刃だけを生成する事も可能だが、はっきり言って焼け石に水である。


「と言うか、前に出て剣で殴りつけるくらいなら、『呪法(アドン)増幅剣(エンハンス)』で強化した邪眼術で十分」

「相手が死ぬと言う結果に変わりがない事は否定できないでチュね」

 そもそも相手の懐に潜り込んだなら、呪法込みの邪眼術でも十分な火力は出せるのだ。

 わざわざ使いづらいルナアポを手にして、慣れない剣術あるいは槍術で敵を攻撃する必要性がないのである。


「でも、専用デバフは強いんじゃないでチュか?」

「いやあれ、かなり微妙よ……たぶん誤差レベル」

「そうなんでチュかぁ……」

 それでもルナアポを使って攻撃するなら、圧倒的な干渉力を利用した桁違いの破壊力を利用するか、ルナアポに付随している専用デバフ……“理解”の活用だろうか?

 この理解と言うデバフ、私が相手の事を理解すればするほど、こちらからの与ダメージと与状態異常は強化され、相手の攻撃による被ダメージと被状態異常が弱体化していくと言うものである。

 これだけ聞くととても強そうに見えるが……そう簡単な話ではない。

 この理解すればするほどと言うのが、相手の名前、レベル、HP、干渉力と言った分かり易い情報だけでなく、フレーバーテキストに記載されるような内容や、他人が知らない過去の事情、その個体特有の癖や性質なども含まれており、実用的なレベルで強化と弱体を入れるのはほぼ不可能に近いと言える。


「と言うか、場合によっては使わない方が強いレベルかも」

「本当に微妙になってきたでチュね……」

 おまけに、これは推測だが……理解すればするほど、理解していなかった部分を利用した、想定外の一撃と言う物に対して弱くなっていくのではないかと思う。

 それも無視できないレベルでだ。


「と言う訳で、総評としてはわざわざ使う必要があるのか分からないレベルで使いづらい。一般的評価としては産廃と言うやつね」

「身も蓋もないでチュう……」

 総論、使いづらい。

 いやまあ、まったく使い道がないとは言わない。

 圧倒的な干渉力を生かした解体作業と、刃に触れたものの情報を見れる事から情報収集には便利かもしれないし。

 が、戦闘で使えと言われたら、私なら基本的に拒否するだろう。


「まあ、完全な産廃でないだけマシと言えばマシなんだけど」

「具体的には何に使えるでチュ?」

「ドゴスト」

「あ、はい。察したでチュ」

 なお、ルナアポが私と同化しているからか、あるいは私の呪詛によって作り出されるためかは分からないが、作ったルナアポを一時的にドゴストへ収納する事は可能。

 そして、消費されても、呪詛さえあれば、また直ぐに作り出すことが出来る。

 という利点を持つことは判明している。

 なのでまあ、『竜息の呪い(クニルドセルブ)』で射出するか、『竜活の(エサエルセド)呪い(セルブ)』のコストとして消費するのが、実は正しい利用方法なのかもしれない。


「……。地上で撃つのは絶対に止めるでチュよ。たるうぃ」

「……。言われなくても分かってるわよ。ザリチュ」

 なお、その後試しに『竜息の呪い』でルナアポを射出してみたところ、複数体の竜と無数の樹木をぶち抜いた挙句に周囲へ大量の衝撃波を撒き散らし、近くに居たものは私とザリチュも含めて大惨事になった事を、ここに追記する。

 本当に使いづらい。

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― 新着の感想 ―
[一言] どこぞの錬金術師なら、使えそうですね。
[一言] 最後の射出後大惨事って部分を読むまで上空で構えて重さを利用して一緒に落下し突き刺す『メテオストライク』が出来るなぁって思ってましたが実際やると着弾時の衝撃などで自爆しそうですねー
[一言] ≫前に出て剣で殴りつける 斬るんじゃなくて殴るとか言っちゃうあたりいかに使えてないの察する 今のところ杖より魔攻が上がる剣、みたいな使い方も出来ないようだ 幸い切り札級の威力は出せるし悪…
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