871:ぅぴぉhそyrm:どmtsぅぴづぴ-1
タイトルについてですが、お使いの機器は正常です。ご安心ください。
「さて、まずは材料を並べましょうか」
『でチュねー』
『CNP』にログインし、いつもの作業を終えた私は、自分のエリアで今回のために集めた材料を並べる。
つまりだ。
『で……』
メイン素材である呪隕石・虹霓鏡宮。
サブの素材としては……私が必須と考えたのは、『ダマーヴァンド』の毒液、私の血、私の角の欠片、凧形二十四面体の蛋白石、霓の螺旋。
ザリチュの求めで、渇猿の竜呪の泥、渇猿の竜呪の赤泥、渇猿の竜呪の角。
これらに合わせると良さそうと言う事で、淀馬の竜呪の金貨、淀馬の竜呪の銀貨、淀み、恒葉星の竜呪の角、牛陽の竜呪の角、『泡沫の大穴』に居る飢渇竜と灼熱竜の角。
それと何故か対価なしに渡された千支万香の灌木呪の枝葉。
以上、17種類の素材である。
うん、これだけの素材を集めるのと、施設のアップグレードもしていたから、昨日は本当に時間がかかったのだ。
『本気でこれを全部使う気なんでチュか……』
「そうだけど、何か問題でも?」
『いやだって、たるうぃはこれらの素材を使った上で、本気で作る気でチュよね? そうなったら、完成品は絶対にざりちゅには扱えない武器になるでチュよ……』
「そうなったらそうなったでの話よ。具体的には呪隕石・恒葉星の方で適当に作るから安心して」
『これから作るものが出来上がった時点で大惨事になりそうでチュから、安心なんてできないんでチュよねぇああああああぁぁぁぁぁぁっ!?』
心配するのは構わないが、最後の言葉は流石にどうかと思ったので、抓っておく。
では、作業を始めよう。
「えーと、鍛冶関係の施設はっと。アップグレードはされてるわね。では、『熱波の呪い』」
『竜呪素材マシマシの鍛冶施設で、しかも淀みによって火力も増しているから、相当でチュよねぇ……』
『熱波の呪い』と『呪憲・瘴熱満ちる宇宙』を全力で展開。
炉の炎を虹色に変える。
そして虹色の炎の中に、呪隕石・虹霓鏡宮、淀馬の竜呪の金貨と銀貨、淀みを投入し、溶融させ、余計な成分だけを『風化-活性』と『風化-排斥』で飛ばし、他の『七つの大呪』も利用することで、私が望むような金属……強固で頑丈な金属を作り上げていく。
「虹色の鋼ってところね」
『見た目よりも内包している呪いに注目して欲しいでチュ……』
そうして出来上がった虹色の鋼をインゴットの形にし、『ダマーヴァンド』の毒液と私の血を混ぜたもので冷却。
品質に問題がないことを確認したら、炉にインゴットを投入して、再び溶かす。
で、十分に溶けたところで、私の角、渇猿の竜呪の角、恒葉星の竜呪の角、牛陽の竜呪の角、飢渇竜の角、灼熱竜の角を粉状にした上で、投入。
よく混ぜ合わせていくと共に、先ほどと同じように余計な呪いは排除して、その内に秘める呪いを強め、高め、濃くしていく。
「はい、流し込みます」
『ああもう、不安しかないでチュ……』
私は虹色の液体を渇猿の竜呪の泥と赤泥を使って作った型へと流し込む。
型へと流し込んだ虹色の液体が固まる前に、私の血を多量に、『ダマーヴァンド』の毒液を少量混ぜ合わせる。
同時に呪詛の剣を作る予定の剣の形と一致するように生成し、それを型へと重ね、溶け込ませていく。
その数は……とりあえず100本分は流し込んだだろう。
「はい、固まったわね」
『ヤバいでチュ。絶対にヤバいでチュよこれは……』
こうして無事に虹色の液体が固まり、型の中から虹色の剣状の物体が現れた。
が、この剣には刃が付いていないので、腕ゴーレムによってよく研ぎ、刃を付けていく。
「後は凧形二十四面体の蛋白石を嵌めて、千支万香の灌木呪の枝葉の皮を持ち手に巻いて、その上から霓の螺旋を巻き付けてっと」
『……』
刃が付いた虹色の武骨な剣に、三つの素材で持ち手と装飾を付ける。
見た目としては、刃の色が虹色であることを除けば、ごくごく普通のロングソードのようなものになっただろう。
うん、何となくだが、まだ足りない気がする。
だが此処から手を加えるとなると……こうするしかないか。
「それは渇きてよく燃えるもの」
私は『呪法・呪晶装填』の要領で呪詛の結晶を作り出し、それを呪詛の剣に装填して、剣に撃ち込む。
「虹霓の外、知られざる域より来るもの」
「幾百の剣を重ね、幾千の骸を重ね、幾万の意を重ねたもの」
「星の海を、輝きの陽を、黒き穴を、虹霓の境を裂き得るものよ」
「得た血を、地を、知を、その身に啜り、綴りて納めよ」
「二頭の竜の威光を呑み、太陽の如き牛を呑み、淀みに満ちた馬を呑み、渇きに苦しむ猿を呑み、空に浮かぶ竜の華を呑み、虹色の炎を解して抗え」
「知りし赤の血、橙の肉、黄の脂、緑の路、空の骨、青の腸、紫の魂を喰らい尽くせ」
虹色の鋼の剣が纏う呪詛……否、力が強まっていく。
不思議なことに今の剣が纏っている力には、淀みと言うか呪いと言うか、そう言うのはまるで感じられない。
だからと言って清浄と言う訳でもないのだが。
なんにせよ、後告げるべき言葉は一つだ。
私の奥底から湧き上がってくる何かが、その名を叫べと告げている。
だから私は告げた。
「汝が名は……ぅぴぉhそyrm:どmtsぅぴづぴ!」
「……はい?」
『ああ、遂にたるうぃがバグったでチュ……』
告げた結果として私は首を傾げた。
私は……そう、名前を告げたはずだ。
この剣の名前を告げたはずなのだ。
けれどどうしてか私の口から出た言葉は、発した当人であるはずの私にすら理解できない言葉だった。
響きは多重になって聞こえ、単語を為さず、私の脳が理解を拒絶していた。
いや、そもそも言語だったのだろうか?
もっと根本的な、私の根っこに眠っている何かの欠片がそのまま外に出て来たような……。
いやうん待って欲しい、ちょっと理解が追い付かない。
「え、えーお、っう!?」
『!?』
そうして困惑している間に剣は跡形もなく砕け散り、そして私に取り込まれた。
まるでそれがあるべき形であるかのように。
「……。ザリチュ」
『なんでチュか?』
「呪隕石・恒葉星で手抜き品を作るから、それを使ってもらっていいかしら?」
『構わないから安心するでチュ』
あらゆる意味で理解が追い付かなかったので、私は逃避する事にした。
03/29誤字訂正




