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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
12章:『泡沫の大穴』
859/1000

859:バブルホールF-4

「何時か……その内何時か……はっ倒す……」

 私のHPは10を切っていた。

 だがそれでもギリギリ生き残ってはいた。


『そんな機会来るんでチュかねぇ……正直、レベルを上げた程度でどうにか出来る相手とは思えないでチュよ』

「それは分かっているけど、何処かで機会を見つけて、この借りは返すわ……」

 そしてギリギリであっても生き残れれば、それと使っている呪術さえ解除すれば、私のHPは急速に回復していく。

 私は満腹度を回復させると、周囲の状況を確認する。


「それにしても酷いことになっているわね……」

『でチュねぇ……』

 周囲にはほぼ何もなかった。

 木も砂も吹き飛んでおり、他の階層に移動するための階段、黒招輝呑蛙の置いていった小瓶、それに……形容しがたい色合いの天井や床と思しきものだけが見えている。

 どうやら黒招輝呑蛙の置き土産である桁違いの爆発は、『泡沫の大穴』本来の姿が見えてしまうほどの破壊力を有していたらしい。

 もしも、呪憲も利用した全力での防御を行っていなければ……まあ、どうなっていたかは考えるまでもないだろう。


「とりあえず回収するべきものは回収しましょうか」

『でないと得るものがなかったことになるでチュからねぇ……』

 私は黒招輝呑蛙の置いていった小瓶を持ち上げようとする。


「ん?」

 持ち上げようとした。


『どうしたでチュか? たるうぃ?』

「えー、えーと……ふんっ、むんっ、むぐぐぐぐ……」

 だが動かない。

 傾ける事すらも出来ない。

 まるで私の体の数倍はある岩を動かそうとしているような感触だった。


『ほ、頬が引き攣っているでチュよ。たるうぃ』

「そりゃあ引き攣るわよ……」

 見た目は本当にただの黒い液体が入っている小瓶だ。

 大きさとしては、私の手のひらに収まるようなサイズでしかない。

 けれど、重量が明らかにおかしい。

 同じサイズの金やプラチナと比較しても、まったく釣り合いが取れないと断言できるほどに重い。


「とりあえず鑑定しましょうか」

『でチュね』

 黒招輝呑蛙との戦闘で使った呪術の都合上、どのみち一時間はこの場から動けない。

 なので私は念のためにHPと満腹度を全快させ、呪憲による防御も施した上で、『鑑定のルーペ』を向ける。



△△△△△

黒招輝呑蛙の油

レベル:50

耐久度:255/255

干渉力:255

浸食率:100/100

異形度:19


黒招輝呑蛙、と言う存在が残した油……のような物体。

明らかに密度がおかしい、なのにその密度と質量が影響をもたらす対象が限定されている。

まるで影響を及ぼす次元が限られているかのようである。

ちなみに味と呪いは極めて濃厚。


注意:認識し、干渉できるのは黒招輝呑蛙に出会ったことのある存在に限られる。

▽▽▽▽▽



「……。あー……うん、はい。これ、次元干渉素材であり、異常高密度素材なのね……。そりゃあ、動かせないはずよね。ブラックホール……程ではないでしょうけど、普通ではあり得ない物体だもの」

『味についての表記があって、でも食用時の注意書きはない。不安になるでチュねぇ……』

 念のための対策は一切必要なかった。

 が、表示された鑑定結果も現状には沿っていると思う。

 さて、此処からどうしようか?


「『埋葬の鎖(ボレヴァルグ)』……は、微妙に範囲外ね」

『呪詛を吸収し、復活する可能性のある死体、ではないでチュからねぇ』

 とりあえず回収しない選択肢はない。

 明らかに貴重品で、有用な素材なのは間違いないのだから。


「『淀縛の邪眼・3(タルウィボンド)』。あ、反応したわね」

『でチュね』

 問題はどうやって回収するかだが、とりあえず干渉力を下げてみた。

 干渉力255もまた、黒招輝呑蛙の油がこの場から動かせない理由の一つであろうから。


「っう!? どう考えても干渉力100未満の状態の重さじゃないわよ!?」

『偽装表示でチュかねぇ? いや、それだけではなさそうでチュね』

 干渉力を下げたおかげで一応動かせるようにはなった。

 だが、それでもなお重い。

 私の腕力だと両手で持ち、翅と呪詛支配も含めて全力で動かして、ギリギリ持ち上げられるか否かと言うレベルだ。

 いや恐らくだが……。


「こ……の……ワザとね。ワザとこの重量に設定したわね……」

『ありそうでチュねぇ』

 干渉力を下げた状態でならギリギリ持てるサイズの油を黒招輝呑蛙は残していったのだろう。

 たぶんだが黒招輝呑蛙はそういうタイプの存在だ。

 やれるものならやってみろ的な。


「何とか……入ったわね……」

『でチュねー……』

 最終的にだが、私はドゴストを地面に置き、口を広げ、その状態で黒招輝呑蛙の油を持ち上げ、ドゴストの中に収納した。

 で、ドゴストの中に入れれば流石に重量はなくなるので、これで回収は出来たようだ。


『この後はどうするでチュか?』

「一度帰るのは確定ね。黒招輝呑蛙の油は色々と使えるだろうし、きちんと確保しておきたいわ。その後は……ちょっと疲れたし、魅了の眼宮(チャムパレス)で少し気を抜いていようかしら」

『それも良さそうでチュねぇ』

 と、ようやく一時間経過したらしく、『太陽の呪い(ノームセルブ)』と『砂漠の呪い(トセロフセルブ)』が解除される。

 そして私は『泡沫の大穴』から一度撤退する事にした。

 考えてみれば今日は化身ゴーレムを二度も破壊されたし、その原因となった二体は自分から退いたために倒せていない。

 もしかしたら、今日は全体的に流れの悪い日なのかもしれない。

 こういう日は何をしても上手くいかないものであるし、今日はもう休むとしよう。

なお、お仕置きモンスターとしては別格の優しさである模様。

絶対殺す系じゃないからですけどね。

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― 新着の感想 ―
[一言] >干渉力を下げた状態でならギリギリ持てるサイズの油を黒招輝呑蛙は残していったのだろう。 社長、最近出番無いからってこんなところに >ちょっと疲れたし、魅了の眼宮で少し気を抜いていようかしら…
[一言] ≫なのにその密度と質量 なにその密度と質量って見間違えて「鑑定さん!?」ってなった ≫味についての表記があって その味も「極めて濃厚」としか書いてないと言う ≫絶対殺す系じゃないから お…
[一言] 食べた時の表記はあるけど食べたら重すぎて顎取れそうですね あと濃厚とは書いてあるけど美味しいとはどこにも…
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