849:タルウィボンド・3-7
「際どい所がなかったわけではないが、終わってみれば碌に傷も負わずにか」
「傷がないのは当然よ。今回の相手の攻撃をまともに受け止めたら、その時点で詰んだ可能性が高いもの」
『悪創の偽神呪』が姿を現し、私に声をかけてくる。
「さてそれはなってみなければ分からんぞ? なんにせよ、この分では残りの試練も大した苦戦無く終わってしまうかもしれないな。『虹霓竜瞳の不老不死呪』タル」
「そっちもどうかしらね? 残りは出血、小人、石化、重石だけど、どれも嫌な予感しかしないのが本音なのよね。特に出血が」
「くくく、そうか」
アイムさんは……地面の上を宝箱がゆっくりと音もなくスライドする形でこっちに来ているか。
シュールな光景である。
「タルさん、お疲れさまでした」
「お疲れさま。アイムさん。最後の拘束は素晴らしかったわ」
「ありがとうございます。タルさんこそ回避盾と追い立てありがとうございます。おかげで、罠を張る事に専念出来ました」
私は近づいてきたアイムさんとお互いを褒め合う。
今回の相手である馬ドラゴンは、アイムさんが相方でなくても最終的には倒せた相手だとは思う。
だが、最後の畳みかけがあそこまであっさり決まったのはアイムさんの罠があってこそ。
だから、感謝の念はしっかりと伝えておかなければならない。
「それで、タルさんは『悪創の偽神呪』様と何の話を……」
「大した話じゃないわ」
「ああ、大した話ではない。くくくくく」
藪蛇をしてしまったかもしれない。
『悪創の偽神呪』が意味深そうに笑っている。
けれど、『出血の邪眼・2』の色が蘇芳色で、順番から言えば辰……ドラゴンと縁深いものになりそうであり、『悪創の偽神呪』が人型ではなくトカゲの姿を取った時の姿が蘇芳色の六本足のトカゲなのだから、警戒するなと言うのが無理な話だろう。
挑むのがいつになるかも分からないが、難敵にならない可能性の方が圧倒的に低いと考えて然るべきだ。
「では、試練はこれで終わりにしよう」
「分かったわ」
「はい」
≪呪術『淀縛の邪眼・3』を習得しました≫
≪タルのレベルが44に上がった≫
そうして私が警戒する中、試練は無事に終了。
私は『淀縛の邪眼・3』を習得するとともに、元の場所に戻された。
「あ、戻ってきたでチュ」
「戻ってきたわよー」
で、戻ってきた私は早速掲示板に動画を上げ、仮称淀縛の眼宮への進入を許可する旨を書き込んでおく。
「あれ? 先に探索させていいんでチュか?」
「馬ドラゴンとの戦闘がなんだかんだで結構な集中力を必要とするもので、休憩がしたいのよ。で、カレーの材料集めと制作で時間も結構経っていたし……ぶっちゃけ、そろそろ眠いのよ」
「ああ、それなら仕方がないでチュね」
なお、口には出さないが、馬ドラゴンと淀みの性格上、淀縛の眼宮に碌でもない仕掛けが張られている可能性は高く。
それを確かめてもらうための人身御供でもある。
口には出さないが。
大事なことなので、絶対に口には出さないが。
「と言う訳で、『淀縛の邪眼・3』の性能確認をしたら寝るわ」
「分かったでチュ」
では、性能確認といこう。
△△△△△
『淀縛の邪眼・3』
レベル:45
干渉力:145
CT:10s-20s
トリガー:[詠唱キー][動作キー]
効果:対象周囲の呪詛濃度×1の干渉力低下を与える。効果範囲を絞れば絞るほどに効果は上昇する。
第一伏呪
トリガー:[詠唱キー]
効果:『淀縛の邪眼・3』の効果によって生じた干渉力低下のスタック値が減少する度に、効果範囲が狭まった干渉力低下(減少したスタック値と同値)と第二伏呪を与える。この効果が付与されても第一伏呪、第二伏呪、第三伏呪は解除されない。
第二伏呪
トリガー:存在しない
効果:第一伏呪の効果によって生じた干渉力低下のスタック値が減少する度に、効果範囲が狭まった干渉力低下(減少したスタック値と同値)と第三伏呪を与える。この効果が付与されても第一伏呪、第二伏呪、第三伏呪は解除されない。
第三伏呪
トリガー:存在しない
効果:第二伏呪の効果によって生じた干渉力低下のスタック値が減少する度に、効果範囲が狭まった干渉力低下(減少したスタック値と同値)を与える。この効果が付与されても第一伏呪、第二伏呪、第三伏呪は解除されない。
貴方の目から放たれる呪いは、敵がどれほど堅い守りに身を包んでいても関係ない。
全ての守りは破れずとも、相手の守りの内へ直接枷を填め、流れを淀ませるのだから。
そして、幾度断たれようとも、淀みは残り続けようとする。
注意:使用する度に自身周囲の呪詛濃度×1のダメージを受ける。
注意:伏呪使用時には更に自身周囲の呪詛濃度×1のダメージを受ける。
注意:レベル不足のため、使用する度にHPが(45-使用者のレベル)だけ減少する。
▽▽▽▽▽
「ザリチュ、要約」
「チュアッ!? えーと、そうでチュねぇ……範囲を狭めつつ、本体、第一、第二、第三で、計四回干渉力低下が残り続ける感じでチュかねぇ……」
「まあ、そういう事よねぇ。実に嫌らしい仕様ね」
まるで淀みの嫌らしさを凝縮したような性能になっている。
解除しても解除しても解除しきれないこの呪いを断つならば、根っこから切除するか、最初から受けないようにするのが正解だろう。
で、恐らくだが馬ドラゴンの干渉力低下もこれと同じようなものと考えられるので……うん、やはり人身御供を頼んで正解だったかもしれない。
「たるうぃ、掲示板に早速悲鳴が上がり始めているんでチュが……」
「自己責任、自業自得、因果応報、実にいい言葉ね。じゃ、私はログアウトするわねー」
「でチュかぁ……」
今日の内に確認するべきことは確認できた。
と言うわけで、私はログアウトした。
△△△△△
『虹霓竜瞳の不老不死呪』・タル レベル44
HP:2,035/4,290 (-1,269)
満腹度:100/150 (-45)
干渉力:143
異形度:28
交信-[ID]、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪憲・瘴熱満ちる宇宙、遍在する内臓、劣竜式呪詛構造体(劣竜血、劣竜骨髄、劣竜肉、劣竜瞳、劣竜皮、劣竜角×2)
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の王』、『灼熱の達人』、『沈黙の名手』、『出血の達人』、『淀縛使い』、『恐怖の達人』、『小人使い』、『暗闇使い』、『乾燥使い』、『魅了使い』、『重力使い(増)』、『石化使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『3rdナイトメアメダル-赤』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『竜狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『偽神呪との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹霓竜瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』、『雪山侵入許可証』、『海侵入許可証』、『呪海渡りの呪人』、『泡沫の世界の探索者』、『確立者』、『崩界者』、『七つの大呪を排するもの』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・3』、『灼熱の邪眼・3』、『気絶の邪眼・3』、『沈黙の邪眼・3』、『出血の邪眼・2』、『小人の邪眼・2』、『淀縛の邪眼・3』、『深淵の邪眼・3』、『飢渇の邪眼・3』、『暗闇の邪眼・3』、『魅了の邪眼・3』、『石化の邪眼・2』、『重石の邪眼・2』、『禁忌・虹色の狂眼』
呪術・原始呪術:
『交信-活性』、『交信-抑制』、『交信-選別』、『風化-活性』、『風化-抑制』、『風化-排斥』、『魔物-活性』、『魔物-排斥』、『反魂-活性』、『反魂-排斥』、『転写-活性』、『転写-排斥』、『再誕-活性』、『再誕-排斥』、『蠱毒-活性』、『蠱毒-簒奪』
呪術・渇砂操作術-ザリチュ:
『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』、『鼠』、『化身』、『噴毒の華塔呪』、『瘴弦の奏基呪』、『禁忌・虹色の狂創』
呪術-ジタツニ:
『砂漠の呪い』、『抗体の呪い』
呪術-ネツミテ:
『太陽の呪い』、『熱波の呪い』、『埋葬の鎖』
呪術-ドロシヒ:
『虚像の呪い』、『貯蓄の呪い』
呪術-ドゴスト:
『竜息の呪い』、『竜活の呪い』、『埋葬の鎖』
呪術-トテロリ:
『転移の呪い』、『不明の呪い』
呪術-ニネナナ:
『選択する呪い』、『虹霓外の瞳』
呪法:
『呪法・増幅剣』、『呪法・感染蔓』、『呪法・貫通槍』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・破壊星』、『呪法・呪宣言』、『呪法・極彩円』、『呪法・呪晶装填』、『呪法・逆残心』
所持アイテム:
『竜鱗渇鼠の騎帽呪』ザリチュ、『地憑きの羽衣呪』ジタツニ、『陽憑きの錫杖呪』ネツミテ、『星憑きの玉輪呪』ドロシヒ、『竜憑きの袋呪』ドゴスト、『魔憑きの指輪呪』トテロリ、『虹憑きの根付呪』ニネナナ、鼠毒の竜呪の歯短剣×2、鑑定のルーペ、フェアリースケルズ、蜻蛉呪の望遠鏡、etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール、呪詛貯蓄ツール×5設置、『熱樹渇泥の呪界』・『入子屋敷の呪地』・『塩砂湖畔の呪地』接続済み
システム強化
呪怨台参式・呪詛の枝、BGM再生機能、回復の水-2、結界扉-2、セーフティ-2、長期保管用カプセル、『満腹の竜豆呪』ハオマ
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