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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
12章:『泡沫の大穴』

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834:エヴィカ-1

「ログインっと」

「ざりあからメッセージが届いているでチュよ。たるうぃ」

「ザリアから?」

 日が変わって木曜日。

 いつも通りに『CNP』にログインするとザリアからメッセージが届いていた。

 なので、早速見てみたわけだが……。


「あ、はい」

「なんだったんでチュか?」

「ハルワからの催促だったわ。サクリベス側の準備は勝手に整えたから、『ダマーヴァンド』側でも書類審査をする人員を用意しておくように、だそうよ」

 実質的に聖女ハルワからのメッセージだった。

 『交信の大呪』なのだから、直通で送ってしまえばいいのにとも思うが……まあ、こういう経路の方が都合がいい理由もあるのだろう。

 あの交渉で成立させた件については……あの後連絡を取らなかった私が悪いので、気にしないでおこう。


「人員でチュかぁ……どうするでチュかね?」

「そうねぇ……書類そのものはザリチュの鼠ゴーレムか『ダマーヴァンド』の鼠たちに運ばせればいいとして、書類と該当者の確認と『虹霓鏡宮の呪界』への入場許可処理を私たちの手を煩わせる事無く行える誰かが必要になるのよね」

 私たちはセーフティエリアの外に出ると、いつも通りにハオマから満腹の竜豆呪を貰って食べる。


「んー、ハオマは書類を見るのは無理よね」

「ーーー……」

 ハオマは蔓を動かしてバッテンを作る。

 目はあっても文字は読めないという事だろう。


「私に頼んでもいいのですヨ?」

「論外」

 何処からともなく私の背後に現れた邪火太夫をそう言う人員として使うのはなし。

 処理能力は十分すぎるほどにあるが、あまりにもリスクが高すぎる。

 と言うか、私の許可なしに魅了の眼宮(チャムパレス)から出てこないで欲しいし、本来の仕事に専念していてもらいたい。


「でもそうね。妓狼の竜呪を利用するのはありね」

「まあ、それが妥当でチュかね。ここも呪詛濃度は十分でチュし」

「楼主様が本当に辛辣でス」

 まあ、妓狼の竜呪たちが会話可能な存在であることを示すことで、彼女たちの安全確保にも繋げられるし、分かり易く人型である方が書類を提出する側にとっても楽だろうし、妓狼の竜呪を受付に使うのはありか。

 なので私は昨日も訪れた魅了の眼宮に居る素材屋に向かう。


「と言う訳なのだけれど、どう?」

「んー……幾つかの条件はありますけどー……いいですよー」

「そう、よかったわ」

 素材屋の店番をしている妓狼の竜呪は今日も眠そうにしている。

 ちなみに、妓狼の竜呪たちの中から彼女を選んだのは、彼女の作った妓狼の竜呪の珠を私が食べたと言う縁がある事もそうだが、彼女が他の個体と違って邪火太夫や私相手であっても物おじせず、マイペースに事を進めていたからである。

 実質的に門番でもあるこの役目は、私程度にビビっていたら務まらないのだから。

 そして、ありがたい事に好感触のようだ。


「それで条件と言うのは?」

「一つ目ー……私の待機場所ー……私好みに作って欲しいですー」

「ふむふむ」

「当然の要求でチュね」

 要求その一はザリチュに言われるまでもなく当然の要求である。

 ダンジョンの構造を弄る事で、噴水広場に専用の部屋を作ればいいだろう。


「二つ目ー……時々休みが欲しいですー」

「ふむふむ。代わりの人員は……」

「邪火太夫様でいいんじゃないですかー……? 楼主様の後ろでー……アピールしてますしー」

「ちっ、仕方がないわね。でも上は貴方の方よ」

「はーいー」

 要求その二も受け入れること自体に否はない。

 彼女が休んでいる間の仕事を邪火太夫に任せるのが少々不安になるだけだ。


「三つ目ー……私に名前が欲しいですー」

「名前?」

「個体名と言う事ですねー……そもそもこれがないと外に出れませんけどー……この三つでいじょうですー」

「ああなるほど」

 要求その三も求められたのなら、与えるとしよう。

 問題はどういう名前を与えるかだが……。


「そうねぇ……それじゃあ貴方にはエヴィカと言う名前を与えましょう」

「エヴィカ……良い名前ですねー……喜んで受け取らせていただきます」

 エヴィカ、アルファベットで書くなら、evitca。

 つまりはアクティブ……活発の逆さ読みだ。

 やる気をなさそうにしている彼女にはピッタリであると同時に、そう簡単には由来も分からない名前だろう。


「では楼主様。役所で手続きをお願いしまス。エヴィカの穴を埋める娘の手配も必要ですかラ」

「分かったわ。それじゃあ行きましょうか」

「はーいー」

「すんなりまとまって何よりでチュ」

 と言う訳で、私はエヴィカを魅了の眼宮の外に出すための手続きをし、『虹霓鏡宮の呪界』を出てすぐの場所にある噴水広場を改築。

 エヴィカの望んだとおりの個室を用意するとともに、呪怨台で様々なアイテムを作成したり、ストラスさんたちに必要なアイテムの回収してもらったりすることで、エヴィカの業務が滞りなく行えるようにしていく。

 なお、ストラスさんたちの支払いについては、今回の件で立ち入りの許可が個人制になるのだが、聖女ハルワの許可なしでも『虹霓鏡宮の呪界』に入れるようにするというもの、これまでの情報提供の見返り、後は普通にDCである。

 まあ、私としては楽でよかった。


「それではー……エヴィカの書類審査場ー……開業ですー」

「「「おおー!」」」

 そうして最後に此処『虹霓鏡宮の呪界』前の広場と外の間で書類のやり取りをするための鼠ゴーレムと『ダマーヴァンド』の鼠をそれぞれ数体用意して、準備は完了した。

 これで私がログアウト中でも、条件を満たしたプレイヤーたちが『虹霓鏡宮の呪界』に入れるようになるだろう。


 ちなみにだが、聖女様の用意する書類は紙はズワムの毛皮を元にしたもので、使うインクはアイムさんとクカタチの呪限無のボスカースの素材を元にしたものであるらしい。

 どうやら、聖女ハルワの好感度を十分に稼いだ上で、どういう経路にせよ先述の三つの素材を手に入れられる事を試験代わりにしているようだ。


 で、思っていた以上に時間がかかったため、いつもの作業を終えたところで私はログアウトしたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 聖女様、タルが側室作ったよw
[一言] 速報 タル、妓女を身請けする まぁもとからタルのもののようなもんの気もするが 受付業務をする邪火太夫を見たら聖女様はどんな顔するかしら
[一言] ちょっと気に入った子だったので名付けされたの嬉しい。
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