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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
12章:『泡沫の大穴』
829/1000

829:チャムパレス-1

「何故ここに居るのかしら、邪火太夫。それとそっちの兎黙の竜呪は……アカ・マナフでいいのかしら?」

「何故と言われても、楼主様が本体の下で作り直してきなさいと言ったからですヨ。あ、それとこっちの兎はここの門番兼警備でス。喋れませんけどネ」

「……」

 邪火太夫とアルビノの兎黙の竜呪が現れたことに対して、私たちは臨戦態勢を取った上で話しかけた。

 で、返答と態度からして、どうやら邪火太夫たちにこちらと戦う気はないらしい。

 尤も、この二人なら、私たちが動き出してからでも間に合うから、そういう素振りを見せていないだけかもしれないが。

 後、アルビノの兎黙の竜呪がアカ・マナフなのは否定しないらしい。


「そんな事、私は……言ったわね」

「言っていたでチュね」

「言ってましたね」

「……。言っていたな」

「言っていたら仕方がないわね……」

 それとここで私は『悪創の偽神呪』が邪火太夫に言質を取られたと言っていたのを思い出した。

 うん、こういう事だったらしい。

 つまり、今この場に邪火太夫が居るのは私のせい、と。


「はい、言いましタ。そして、作り直しを終えた私は楼主様の役に立つべく、此処、魅了の眼宮(チャムパレス)の管理運営を行う事にしたのでス。元より妓狼の竜呪たちのまとめ役でもありますしネ」

「そう。それで具体的には?」

「こういう事でス」

 邪火太夫とアカ・マナフが横に動く。

 それに合わせて、二人の背後にある扉がゆっくりと開かれていき、その向こう側が見えてくる。


「これは……」

「凄いでチュねぇ……」

「こんな場所が……」

「ほう、これは興味深いな……」

「おおおぉぉぉ……」

 そこを一言で表すならば歓楽街だった。

 ただ、建物はコンクリートやレンガではなく木造であり、時代的に言えば二百年か三百年ほど遡った感じである。

 だが明かりは蝋燭ではなく何かしらの呪いを利用したものであり、外の時刻に関係なく夜の装いとなっている空を照らしている。

 道行く影は疎らではあるが、邪火太夫によく似た、狼の被り物と着物を身に着けた女性たち……恐らくは妓狼の竜呪と思しきものたちが楽しそうにしている姿が見える。

 そして、不快感無く気分を湧き立てるような音楽が流れており、中に入る事を楽しみにしている自分が居る事を、私は感じ取った。

 さて、この光景を私は最初、歓楽街と称したが、もっと適切かつ簡単に表す言葉がある。

 それは……。


「吉原ね」

 かつて実在した花街である。


「ああ、言われてみれば……」

「確かに……」

「えっ、そういう事って出来るんですか?」

「出来ませんヨ。後、発言内容によっては怖いお兄さんと面談ですからネ?」

「「「アッ、ハイ」」」

 私の発言に一部プレイヤーがざわめき立つ。

 まあ、そういう事に興味があるプレイヤーが居るのはおかしなことではない。

 が、『CNP』はそういう事が出来るゲームではないので、雰囲気は似ていても全くの別物だろう。


「もしかしなくても、ここは街の扱いでいいのかしら?」

「訪れた方々が妙なことをしなければ、こちらも何もしない事は保証しまス」

「「「おー……」」」

 話を進めよう。

 妓狼の竜呪と思しき人々と、街の雰囲気からして、此処が戦場でないことは明らかである。

 そして、邪火太夫が妓狼の竜呪たちから仕掛けてくることがないことを保証した。

 完全に信用できるかは怪しいが、まあ、たぶん大丈夫だろう。

 となればだ。


「分かったわ。それじゃあ各自武器を収めて、街を探索してみようかしら。邪火太夫、貴方は私の案内をして」

「承りましタ。楼主様」

 街そのものの評価をするべく、とりあえず観光をしてみるとしよう。


「それじゃあタルさん! 私たちは私たちで動いてみますね!」

「俺はサイズ的に表通り限定になりそうだなぁ」

「検証班は三人一組で行動をお願いします。まずはマップ埋めからですね。私はタル様に付いています」

「まずはどういうお店があるかからか」

「私はタルと行動するから、シロホワたちは自由にしてて」

 はい、と言う訳で、私たちはそれぞれに行動を開始。

 私の周囲にはザリチュ、ザリア、ストラスさん、邪火太夫だけが残り、アカ・マナフは門の脇で静かに佇み、残りの面々は戦闘態勢を解除した上で街の中へと入っていき、三人か四人程度の少人数グループになって散っていく。

 

「では、早速だけど、鑑定っと」

「そこは私に聞いてほしいのですが、楼主様」

「こういうのは自分で確認してこそよ」

 で、残った私はとりあえずこの場そのものの鑑定をする。



△△△△△

虹霓(こうげい)鏡宮(きょうきゅう)の呪界・魅了の眼宮(チャムパレス)


限り無き呪いの世界の一角に築かれた虹霓に輝く城。

離宮の一つ、魅了の眼宮、そこは魅了に満ちた世界であり、如何なるものも霧を気にせずに済む世界でもある。

ひしめくは狼と魅了の力に満ちた竜の呪いであるが、彼女らは戦いを拒み、友誼を望む。


呪詛濃度:26 呪限無-中層

[座標コード]

▽▽▽▽▽



「はい、確認が取れたわね。やっぱり迂闊なことをしなければ此処は安全よ」

「楼主様、最初からそう言っているじゃないですカ」

「これまでがこれまでだから、信頼されないんでチュよ」

「そうですね。私もザリチュ様に同意見です」

「私は初対面だけど、これまでの話を聞く限りだと、こういう態度を取られても仕方がないわよね」

「およよよよ、楼主様とその友人方が酷いでス」

「ーーーーー……」

 なお、この場に邪火太夫の味方は居ない。

 初対面のザリアどころか、本来はそちら側であるはずのアカ・マナフすら邪火太夫の泣き真似に呆れ顔を向けていた。

 そして私たちは邪火太夫を半ば無視して、魅了の眼宮へと入っていった。

02/18誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] 道行く影は疎らではあるが、邪火太夫によく似た、狼の被り物と着物を身に着けた女性たち……恐らくは妓狼の竜呪と思しきものたちが楽しそうにしている姿が見える。 確か邪火太夫は狼の頭を模した仮面で下…
[一言] >つまり、今この場に邪火太夫が居るのは私のせい、と。 だが待って欲しい。貴方の眼には目の前の存在が「上手く言質を引き出せなかったので素直に諦めまショウ」などという殊勝な存在に見えるのだろうか…
[一言] どんな事ができるかとワクワクする、そんな未知が溢れる街づくりができているのかわざわざ帰ってきたんだからそれぐらいできているよなーという期待が重いぜ
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