822:ユーズオパール-6
「さて、詳細から見ていきましょうか」
「恐怖の眼宮はすっかり検証の場になったでチュねぇ……」
私は恐怖の眼宮に移動すると、そこで『魔憑きの指輪呪』トテロリと『虹憑きの根付呪』ニネナナの持つ呪術の検証をすることにした。
なお、恐怖の眼宮を選んだ理由としては、障害物が少なくて見通しが良い上に、出て来る敵が恐羊の竜呪と言う適度な強さと耐久を持っている種類であること、竜骨塔のギミックのおかげでその耐久が上がっているので実験対象にしやすい事などが要因である。
まあ、それはそれとして、呪術の詳細を見てから、仕様を確かめていこう。
△△△△△
『転移の呪い』
レベル:40
干渉力:140
CT:60s-300s
トリガー:[発動キー]
効果:指定したポイントに転移する。
転移します。空間と空間を繋ぎ、過程を無視して結果をもたらします。
結果には良からぬものが付くこともありますが、我らが主であれば些細なことでしょう。
注意:使用する度に最大HP低下(最大HPの1%)が付与される。
注意:転移先として指定可能なのは、術者の視点から5m以内かつ視界内である場所のみ。
注意:(リアルタイム1週間での『転移の呪い』の使用回数-1)%の確率で良からぬものを招く事があります。
▽▽▽▽▽
「5メートル……あ、ヤバいわこれ」
「ヤバいでチュねぇ。これは……」
一つ目、『転移の呪い』。
転移の指輪呪が持っていた呪術『短距離転移』とほぼ同じ感じだが、使おうとした時点で私はその危険性を理解した。
と言うのも、転移先として指定できるのが、私の目から5メートル以内の場所ではなく、術者の視点から5メートル以内だったからだ。
もっと具体的に言ってしまうと……眼球ゴーレムの視界を『転移の呪い』の起点に出来てしまった。
そして、それ以外に転移先を制限する項目はない。
「悪用すれば、何処にでも入り込めるわね……出来るだけ明かさないようにしておきましょうか」
「でチュねぇ……」
つまり、眼球ゴーレムさえ……いや、もしかしたら私の視点として用いれるものさえ入り込めれば、サクリベスの最深部だろうが、他人の呪限無の中だろうが、もしかしたら他人のセーフティーエリアにだって入れるかもしれないのである。
うん、余計な話が出てこないようにするために、出来るだけ隠しておこう。
良からぬものについては……出てきてから考えよう。
では次。
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『不明の呪い』
レベル:40
干渉力:140
CT:1s-5s
トリガー:[詠唱キー]
効果:術者の体の指定した部位に認識阻害の呪いをかける。
妨害します。あることは分かりますが、詳細は曖昧にします。
そこにある事に変わりはありません。分からないだけです。
注意:使用中、1秒ごとにHPが10減少する。
注意:使用を中止するには[詠唱キー]を唱える必要がある。
▽▽▽▽▽
「これは……私視点だと分からないわね。ザリチュ」
「不思議なことになっているでチュよ。たるうぃ」
二つ目、『不明の呪い』。
ザリチュ曰く『竜活の呪い』発動中に私の体に生じる認識阻害が、部分的に生じている感じであるらしい。
なので、目にかければ、そこに目があることは分かっていても、どちらを向いているかは分からない。
腕にかければ、そこに腕がある事は分かっても、指の状態、肘の位置、力の入れ具合などが分からない。
口にかければ、声は正常に聞こえるが、口を開いているか閉じているかは分からない。
全身にかければ、そこに私が居ることは分かっても、何をしているのかは分からないし、傍目には誰なのかも分からないだろう。
と言う感じになるようだ。
「まあ、便利呪術って感じね」
「でチュね」
ちなみに使用中止の詠唱キーだが、『熱波の呪い』の停止キーである『エサエレー』と一緒になっており、別々の詠唱キーを設定することは出来ないようになっている。
それも含めてのデメリットと言う事だろう。
では次。
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『選択する呪い』
レベル:1
干渉力:100
CT:10s-60s
トリガー:[詠唱キー]
効果:『呪憲・瘴熱満ちる宇宙』の効果対象、効果範囲、効果内容を選択できるようになります。
汝は敵、汝は味方、その地は我らがもの、かの地は汝らがもの、記す法に悩み定めるは主であり、我はただその助けをするだけのもの。
選択せよ我が主。
注意:使用中、1分ごとに満腹度が10減少する。
注意:使用を中止するには[詠唱キー]を唱える必要がある。
注意:現在は『呪憲・瘴熱満ちる宇宙』に対応中。対応する呪憲の変更をするためには『虹憑きの根付呪』ニネナナとの交渉が必要。
注意:使用中、認識できていない相手には呪憲は効果を示さなくなる。
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「これもまた普通に便利だけど……認識できていないものには注意が必要ね」
「そう書かれているでチュからねぇ」
三つ目、『選択する呪い』。
『呪憲・瘴熱満ちる宇宙』を使いやすくするためにあるような呪術である。
そのためか、レベルと干渉力の項目に詐欺が生じている気がする。
注意事項として、認識出来ていない相手に『呪憲・瘴熱満ちる宇宙』が効果を示さなくなるとあるので、相手が隠密能力に優れているのなら、使わないのも考えるべきだろう。
なお、使用中止の詠唱キーは、こちらも『熱波の呪い』と共用だった。
では最後だが……
「……」
「問題児でチュねぇ」
「やっぱりそうよね……」
「いやだって、どう考えてもそうでチュよ。場合によっては『竜活の呪い』や『禁忌・虹色の狂眼』よりも問題でチュよ。これ」
「まあ、そうよねぇ……」
四つ目、『虹霓外の瞳』は最大級の問題児だった。