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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
2章:『聖女が想う悪夢の宴』
82/1000

82:1stナイトメアアフター-2

「まあ、頑張ったわね」

「そうね。頑張ったと思うわ」

「兄は頑張ったと思います」

「前評判を考えたら、大戦果と言っていいだろう」

 結論から言ってしまえば、ブラクロは敗北した。

 ただし、その戦闘時間は5分を超えたもの。

 しかもだ。


「惜しい所までいったのは確かですよね」

「そうだな。一つか二つ、相手にミスがあれば勝ってた」

「……」

「まあ、そのミスをしてくれないのがスクナなんだけどね」

 一瞬の休みもなく切り結び続け、傷つけ合い、最終的には紙一重の差でブラクロの攻撃よりもスクナの攻撃が先に決まった事によってスクナが勝利したというものである。

 私の時には見事としか言わなかったスクナが勝利の際に雄たけびを上げていたくらいである。


「悪い、負けちまったわ」

 と、ブラクロが帰ってきたか。

 私たちはそれぞれに労いの言葉をかける。

 掲示板の反応にしても、高評価が大半で、誰もが決勝に相応しい戦いだと判断したようだ。


「いやぁ、あの人本当に強いわ……てか、戦っている間にドンドン動きが洗練されていって、早く、鋭くなっていくんだからな。戦っている側としてはたまったもんじゃない」

「いや、それに付いていくブラクロもブラクロだから」

 なお、ブラクロは悔しそうにしているが、色々と見出だしてもいるらしく、軽く肩を回したり、跳ねたりしている。

 うん、今後ブラクロとやり合う時が来たら、出来る限り距離を取るようにしよう。

 やっぱり私にとって近接戦闘はやむを得ない時だけに行う物だ。


『楽しんだかああぁぁ! 化け物共おおおぉぉ!!』

 と、どうやら閉会式が始まるようだ。

 テレビに海月アバターの万捻さんが映る。


『はい。と言う訳で運営の万捻です。さて、今回のイベントはどうだったでしょうか』

 万捻さんが今回のイベントについて語り始める。

 まあ、内容としては……トップ同士の戦いが見れて楽しかっただろう? とか、普段出会えない人と会えて色々と話が出来たでしょう? とか、これまで秘匿されていた技術が表に出てきたでしょう? とか、そんな感じなので、聞き流す。

 それよりも重要なのはこの後だった。


『さて、今回のイベント。実は聖女様の夢の中なんですよね。と言う訳で聖女様ー』

『……』

「おおっ! アレが聖女ちゃん!!」

「兄ぇ……」

 万捻さんが横に移動し、水色の髪に群青色の瞳を持った少女が現れる。


『不老不死の呪いを受け、勇猛果敢に戦う呪い人の皆様。貴方方の戦い、この目でしかと見させていただきました。貴方たちがより一層成長されることを、そして、その力によって世界を救われることをお祈りしています』

『はい、ありがとうございましたー』

「ふうん……」

 聖女様は儚げな雰囲気を纏いつつ、プレイヤーたちに言葉を授けている。

 ただ、予選前に聖女様と会った私からすれば……今のテレビに映っている聖女様は何重にも仮面を被り、本音あるいは本性を隠し、理想の聖女を演じているようにしか見えないが。


『では、上位入賞者に賞品を授与させていただきまーす!』

≪称号『1stナイトメアメダル-3位』を獲得しました≫

「あら」

「普通に来たわね」

「おー」

 称号は事前の告知通り、何の効果もない記念称号、と。



△△△△△

『1stナイトメアメダル-3位』

効果:効果なし

条件:第一回公式イベント『聖女が想う(呪う)悪夢の宴』3位入賞。


3位入賞おめでとうございます!

『貴方のような呪限無の化け物が3位になるだなんて、本当に悪夢だわ……』

▽▽▽▽▽



「……」

 フレーバーの二行目については私個人に対するコメントか。


「あの、タル様? そんな笑みを浮かべて……」

「あら、ごめんなさい。ちょっと面白いことがあったから、ついね」

 私はつい笑みを浮かべてしまい、ストラスさんに指摘されてしまった。

 うん、やっぱりイベントが終わったら、一度街の方を目指すとしよう。

 上手く行けば聖女様に会えるはずだ。


「おおー、なんか良さげな短剣が来た!」

「私の方は……金属と木と革を組み合わせた盾みたいね」

 と、設定の方にエクスクラメーションマークが出ているか。

 どうやら、アイテムの方は設定から受け取れるらしい。

 で、受け取って実体化させたら……黄色い輝きを放つ金属製の輪が四つ出てきた。

 とりあえず鑑定してみるとしよう。



△△△△△

真鍮の輪

レベル:1

耐久度:100/100

干渉力:100

浸食率:100/100

異形度:1


真鍮で出来た細い輪。

呪いによって強度が向上していて、歪んだり曲がったりがしづらくなっている。

▽▽▽▽▽



「ふうん……」

 かかっている呪い含めて悪い物ではない。

 ただ、そのまま利用するよりかは、これを基にして呪いを追加、より良いものに変える方向性の方が妥当な気がする。

 まあ、とりあえずは手足に一つずつ着けるとしよう。


「基本的には装備品と言いますか、それぞれが求めている物が来ている感じですかね?」

「そんな感じね。たぶんだけどアバター作成のセミオートと同じような技術で、上手くマッチングさせているんじゃないかしら」

「それっぽいなぁ。この短剣は二本とも、今の俺が使っている奴の完全上位互換みたいなものだし」

 ストラスさんたちの言葉はたぶん正しい。

 『CNP』ならそれぐらいはやっていても驚かない。


「まあ、無用の品が来ないのが良いことです」

「確かに」

「だなぁ」

 あ、久しぶりに私のステータスも鑑定しておこう。

 久しぶり? うん、久しぶり。

 ちょっと時間感覚がおかしくなってるだけ。



△△△△△

『蛮勇の呪い人』・タル レベル10

HP:652/1,090

満腹度:72/100

干渉力:109

異形度:19

 不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊

称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・1』、『毒を食らわば皿まで・2』、『鉄の胃袋・2』、『呪物初生産』、『毒使い』、『呪いが足りない』、『暴飲暴食・2』、『呪術初習得』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの支配者』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』


呪術・邪眼術:

毒の邪眼・1(タルウィベーノ)


所持アイテム:

毒鼠のフレイル、呪詛纏いの包帯服、『鼠の奇帽』ザリチュ、真鍮の輪×4、鑑定のルーペ、毒噛みネズミのトゥースナイフ、毒噛みネズミの毛皮袋、ポーションケトルetc.


所有ダンジョン

『ダマーヴァンド』

▽▽▽▽▽



『では続けて、アイテム交換の方も一挙にやってしまおうと思います。あ、今は目録だけで、実体化はメンテナンス終了後になりますので、ご了承ください』

「ふむふむ」

 アイテム交換会の方も行われて、私の手元に何と何が交換されたのかと言う目録が届く。

 ザリアたちもそれなりに出していたのか、視線を動かす度に一喜一憂と言う感じだ。

 で、私の交換の結果は……


・毒噛みネズミの毛皮を単品で3枚→真っ赤な動物の毛皮1枚、ぶよぶよの皮のようなもの1枚、2メートルほどの木材1本。

・毒噛みネズミの全身の骨一式を3セット→モンスター解体用のアイテム一式、細工用のアイテム一式、裁縫用のアイテム一式。

・垂れ肉華シダの葉1ダースを短い蔓でまとめた物を3セット→紐で束ねられた正体不明の草の葉2ダース、箱入りの怪しげなキノコ1ダース。

・約2メートルの長さの垂れ肉華シダの蔓1ダース→深緑色の怪しげな宝石1つ。


 んー、目録に付いている写真と名称だけではよく分からないのがツラい。

 とりあえずアイテム一式3つだけでも大勝利なのはほぼ間違いないだろうし、よしとするか。


『さて、これにてイベントは終了ですが、メンテナンスが明けるのは18時の予定となっています。それまでは交流マップをお楽しみください。どうかこれからも『CNP』をよろしくお願いします』

 こうして私の初イベントは中々の戦果を挙げて終わる事となった。

 とりあえず今日は一日中キツい戦いを続けて疲れたので、もうログアウトする事にしよう。

04/23誤字訂正

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