819:ユーズオパール-3
「今回の改修を機に、首のを安全に取り外せるようにした方がいいんじゃないでチュかねぇ……」
「却下。そう簡単には外れない方が重要よ」
「確かに首を落とさなければ外れないなら、装備解除はされないでチュねー」
遠い目をしているザリチュを無視して、私は両手首と両足首に着けているドロシヒも外していく。
確か前回ドロシヒを外した時は、このタイミングで周囲の呪詛支配が幾らか緩んだ覚えがある。
「私も強くなったものね……」
「まったく揺らがないでチュからねぇ」
が、今回は全く呪詛支配が緩まない。
どうやら私のレベルと私の呪詛支配に関するプレイヤースキル、その両方が組み合わさった結果として、ドロシヒの補助がなくても呪詛支配は問題なくなったようだ。
尤も、私の呪詛支配を邪魔する敵対者が居なければという前提の話なので、戦闘を考えたらドロシヒの必要性は少しも薄れないが。
「じゃあ、凧形二十四面体の蛋白石を……」
私はドロシヒに装着するべく、凧形二十四面体の蛋白石をドロシヒの輪の一つに近づける。
「溶けたわね」
「溶けたでチュね」
するとそれだけで凧形二十四面体の蛋白石はドロシヒの輪に飲み込まれて、消え去ってしまった。
「たるうぃは何かやったんでチュか?」
「何もやってないわね。たぶん、元からそういう素材だったんでしょう」
「怖い話でチュねぇ……」
二つ目の凧形二十四面体の蛋白石を近づけてみる。
するとそれもまた飲み込まれて消えてしまった。
「んー……」
凧形二十四面体の蛋白石は私の邪眼術を物質として固めたような物体である。
なので、多少の奇妙さを持っているのは当然とも言えるか。
「13個入ったでチュね」
「そうね」
で、結局凧形二十四面体の蛋白石はドロシヒに元々付いていた宝石と同じ数だけ入った。
では、呪ってみよう。
「むんっ!」
呪い方は先ほどのザリチュに対して行ったものに近い。
呪怨台の上に集まる呪詛の霧も三色ではなく虹色だ。
込める念の内容はドロシヒの強化もそうだし、ザリチュたちに追いつくようにと言う念もある。
「出来たわね」
「でチュね。ちょっとかかったでチュ」
そうして十数分後。
呪怨台の上に新たなドロシヒが現れた。
見た目としては……13枚の札が、錘と呼んだ方がよさそうな球体に……いや、違う、凧形二十四面体の蛋白石だ、これ。
とにかく微妙に変わっている。
では、鑑定をしてみよう。
△△△△△
『星憑きの玉輪呪』ドロシヒ
レベル:着用者のレベルと同じ
耐久度:100/100
干渉力:着用者の干渉力と同じ
浸食率:100/100
異形度:24
様々な素材を組み合わせて作られた、五輪十三錘十三玉で一組となる装飾品。
この世ならざる者に通じる気配を漂わせており、正当な所有者以外が着用すれば、恐ろしい呪いに襲われる事だろう。
沈黙無効化(装備者のレベル)、沈黙に対して中程度の耐性、沈黙に対して僅かな抵抗性を有する。
干渉力低下無効化(装備者のレベル)、干渉力低下に対して中程度の耐性、干渉力低下に対して僅かな抵抗性を有する。
恐怖完全無効化。
着けている輪の数に応じて、装備者の周囲に存在する呪詛の支配を助ける(1個:0.25km、2個:0.5km、3個:1km、4個:2km、5個:5km)。
装備者の周囲の呪詛を吸収して拠点に送り、拠点から所有者の周囲へと呪詛を送り出す。
呪詛出納ツール-『ダマーヴァンド』とリンクしている。
周囲の呪詛濃度に応じて強度が向上する。
周囲の呪詛、エネルギーの一部を吸収する事で耐久度が回復する。
耐久度が0になっても、一定時間経過後に復活する。
自己意思こそないが、呪いの塊であるその身は幾つかの呪術を習得しており、装備者がトリガーを引くことで使用が可能。
『虚像の呪い』『貯蓄の呪い』
注意:この装備をタル以外が装備した場合、1分ごとに着用者の最大HPと同値の恐怖が付与される。
注意:装備者の異形度が19以下の場合、1秒ごとに乾燥(1)、小人(1)、毒(1)の状態異常を受ける。
注意:装備者の異形度が19以下の場合、1時間ごとにランダムな呪いを恒常的に得て、異形度が1上昇する。
注意:装備者の異形度が19以下の場合、1秒ごとに最大HPの1%のダメージを受ける。この効果は一度発動すると、対象者が一度死ぬまで解除されない。
注意:着用中、光を利用した状態異常の視覚障害はあらゆる手段を用いても防御できない。
注意:この装備の周囲の呪詛濃度が10以下の場合、着用者の受けるダメージが増える(極大)。
注意:装備者は異形度の高い相手に認識されやすくなる。
注意:この装備を低異形度のものが見ると嫌悪感を抱く(極大)。
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「『出血の邪眼・2』」
「感想をちゃんと言ってから着用してほしいんでチュけど!?」
はい、鑑定完了。
とりあえず問題はないので、着用しよう。
で、着け終わったら感想を言う。
「私の森産の素材は極端な耐性を持たないと気が済まないのかしら?」
「気が済まないんだと思うでチュよ」
まあ、ツッコミどころは決まっている。
光を利用した視覚障害の防御不可……要するに、第五回イベントでゼンゼが使った閃光手榴弾のようなものが防御不可能になる点だ。
これは邪眼術が使えなくなるという点で、極めて厄介と言える。
まあ、眼球ゴーレムを仕込んでおけば、問題はないのだろうけど。
「こうなると、他の素材を使った装備品も耐性的には極端なものになるのかもしれないわね……」
「確かにそうなりそうでチュねぇ……まあ、仕方がないと思うでチュけど」
「後、ザリチュと同じで完全版でない気もするわ」
「それも仕方がないでチュねぇ」
個人的に気になるのは、手や腕などで目を覆い、目に光が届かなかった場合にどうなるかか。
そうすれば大丈夫になるのであれば、案外何とかなるかもしれない。
ならなかった場合の情報漏洩が怖いので、試すのは難しいが。
「ま、次に行きましょうか」
「でチュね」
ちなみにだが、『貯蓄の呪い』のストック状況については、錘の宝石の色合いで分かるようで、ストックしたHPの量が多ければ多いほど、鮮やかな虹色になるようだった。
今までより少しわかりづらいかもしれないが、慣れれば、問題はないだろう。




