818:ユーズオパール-2
「んー……これは……」
「あー……でチュねぇ……」
新たなザリチュの鑑定結果はこんなものだった。
△△△△△
『竜鱗渇鼠の騎帽呪』ザリチュ
レベル:着用者のレベルと同じ
耐久度:100/100
干渉力:着用者の干渉力と同じ
浸食率:100/100
異形度:25
竜由来の呪いを含む、数多の呪詛を取り込むことでカースと化した三角帽子。
自己意志を持っており、勝手に動き、鳴き、嗅ぐが、使い手以外には聞こえず、望めばたぶん静かにはなる。
資格なき者が身に付ければ、世にも恐ろしい結末を迎えることになるだろう。
着用者よりもレベルまたは異形度が低いものが放つ低位の攻撃に対して、ダメージ無効化(極大)、極めて高い耐性、極めて高い抵抗性を有する。
着用者が認識出来た攻撃によって受けるダメージを軽減する(小)。
乾燥完全無効化。
周囲の呪詛を操作し、着用者が生存するのに適した呪詛濃度に近づける効果を持っており、呪詛濃度を最大12まで増減させられる。
周囲の呪詛濃度に応じて強度が向上、耐久度が回復する。
耐久度が0になっても、一定時間経過後に復活する。
身に着けているものの全身にこれらの効果の一部が発揮される。
この装備のレベルと干渉力は装備者の物と同じ値になる。
非生物でありながら動き回るため、ある種のゴーレムでもあるが、成長の余地も存在する。
着用している生物が望んだ範囲、あるいは自分の意志で体を動かせない状態にある時、この帽子の意志で体を動かせる。
乾いた砂を操る呪術……渇砂操作術の習得が可能。
渇砂操作術:『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』、『鼠』、『化身』、『噴毒の華塔呪』、『瘴弦の奏基呪』、『禁忌・虹色の狂創』
注意:着用者の異形度が24以下の場合、体の制御権を奪われる。
注意:着用中、浄化属性への耐性が低下する(大)。
注意:着用中、状態異常の睡眠はあらゆる手段を用いても防御できない。
注意:弱点部位を貫かれる攻撃を受けた場合、着用者の受けるダメージが増える(極大)
注意:この帽子を低異形度のものが見ると嫌悪感を抱く(極大)
注意:この帽子の周囲の呪詛濃度が15以下の場合、この帽子が発動中の呪術は解除され、着用者に干渉力低下(50)が強制付与される
▽▽▽▽▽
「ほぼ同一よね」
「でチュね」
とりあえずザリチュを着用。
そして改めて鑑定結果を確認。
うん、ほぼ変わらない。
だが、変化した箇所の変化は大きい。
「乾燥の完全無効化と言う事は、どうあっても乾燥の状態異常は受け付けないという事よね」
「そう判断していいと思うでチュ」
「代わりに睡眠については、シロホワの呪術のような状態異常無効化バフや、他の耐性付きの防具で守りを固めても防げない。と言う事よね」
「まあ、そういう事になるでチュねぇ」
乾燥の完全無効化と睡眠の防御不可。
前者についてはジタツニの状態異常耐性を考えると意味があるのか怪しい部分もあるが、私が呪法による全力強化を行い、他のプレイヤーからのバフなどももらって放ったような『飢渇の邪眼・3』であっても防げるなら、意味はあるか。
後者については……ザリアたちも含めて、他のプレイヤーには絶対に漏れないようにするしかないか。
睡眠ならザリチュが私の体を動かせばいいだけなので、まだ致命傷ではないかもしれないが、それでも睡眠ハメが可能だと言うのは知られていい情報ではない。
「でも全体でみるとマイナーチェンジに近い感じよね。『幸福な造命呪』の心臓含めて色々と使ったのに、どうしてこうなったのかしら?」
「んー……」
私の言葉に化身ゴーレムは首をかしげる。
そして、しばらく悩むそぶりを見せてから、答えを出す。
「たぶんでチュが、たるうぃ自身の強化が済んでいないからじゃないでチュか?」
「私自身の強化が済んでいないから……ねぇ。まあ、否定は出来ないわね」
ザリチュの言葉に私は納得を示す。
実際、私の強化はまだまだ先があるからだ。
邪火太夫に勝てず習得できていない『魅了の邪眼・3』は言うに及ばず、それも含めて参の位階に至っていない邪眼術はまだ6種類も存在しているのだから。
そして、6種類の邪眼術が習得できていないために『虹霓鏡宮の呪界』は眼宮も奥地も未完成であり、それらが未完成であるからこそ、得られる素材もまた未完成であると言える。
いや、そちらが未完成であるなら、第五回イベント中にあの森で得た素材もまた未完成であると言えるか。
そうなると、今回のザリチュの強化が未完成で終わるのも当然か。
「でもそれなら、今後私の強化が終わった後に必要なものを集めてくれば……」
「ざりちゅは大きく強化されるはずでチュね。そう考えると化身も後回しでいいかもでチュ」
裏を返せば、まだまだ伸びしろがあるという事だが。
「なるほどね。だったらドロシヒの強化や、新しい装備品の強化も後回しにした方がいいかしら?」
「何をする気でチュ?」
「ん? 大したことじゃないわよ?」
私は頭の中にある自分の構想を口に出していく。
具体的に言えば、長らく強化をした覚えがないドロシヒに凧形二十四面体の蛋白石を装着する事での強化、転移の指輪呪と解き拒みの指輪を組み合わせる事をメインとした何か、後は……呪憲制御補助用の何かと言う感じか。
で、話した結果。
「その三つはやっておいていいんじゃないでチュか? 特にどろしひとか急に強化しすぎたら、逆に駄目になりそうな予感がするでチュ」
「そう? だったら今日はそっちに専念しておこうかしらね」
その三つの強化と作製をすることにする事になった。
「じゃ、とりあえずドロシヒを外しましょうか。『出血の邪眼・2』」
「あ……あー、忘れてたでチュうううぅぅぅ……」
なので私はドロシヒを外すべく、とりあえず自分の首を刎ねてどかした。
なお、血は素材として使えるので、風化しないようにした上で保存しておいた。
では弄っていこう。




