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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
12章:『泡沫の大穴』
816/1000

816:ダイアログ-4

「ええそうよ。不老不死と言う名称は、私と彼らが交渉していった結果として、偽の名前として名乗る事に決めたもの。本当の名称は『交信の大呪』よ」

 彼ら……運営なのか偽神呪なのか……そこまでは流石に分からないか。

 聖女ハルワ視点だとどっちも同じようなものだろうし。


「さて、アンノウン。この事実に気づいた貴方には一つの権利が生じるわ」

「権利」

「ええそうよ。私、『交信の大呪』ハルワと戦い、打ち倒し、その権能を奪い取るという権利よ」

 聖女ハルワの纏う雰囲気が変わる。

 空気が冷え、張り詰める。

 同時に冷え切り、澄み切った、一つの想念だけで満たされているが故に清いと言える水で作られた帯と球体が聖女ハルワの周囲に出現し、宙に漂う。

 また、それほど大きくなかった部屋はいつの間にか学校の体育館程度には広くなり、足元には聖女ハルワの周囲に漂っているものと同じ水が溜まり始めている。

 恐らくだが、私が何かしらの行動を取れば、その時点で戦闘開始になるのだろう。


「え、なにその面倒くさい話。私、そう言うのは求めてないんだけど」

 だからこそ素でボヤいてしまうのだが。


「め……」

「え? と言うか聖女ハルワ? 貴方さっき私の事馬鹿とは言ったけど、今の貴方の行動は私以上に馬鹿げた行動よ? 私が聖女ハルワを倒したところで得られるメリットとか一切ないんだけど?」

 ボヤいてしまったついで畳みかけよう。

 このまま押し切ってうやむやにした方が、都合がいい。


「い……」

「ない。一切ない。この流れからして貴方が死んだら私が『交信』を継がないといけないんでしょう? 嫌よ、そんな面倒くさい仕事。もしかしたら、この世界のいろんな部分を自分の都合に合わせて改変出来るとかの特典が付くかもしれないけど、そこに未知がない以上は私にとってはデメリットしかないじゃない。継がなかったら継がなかったで『悪創の偽神呪』に巻き戻しからのグチグチ言われるか、ゲーム終了と言う最悪のパターンかのどっちかだし」

「ひ……」

「そもそも、私はついさっき聖女ハルワ、貴方に、『虹霓鏡宮の呪界』攻略のための人員選定を任せるという話をしたのよ? その仕事を聖女ハルワ以外の誰が出来ると思うの? 聖女アムル? 馬鹿言わないで、彼女が上役に立ったら、ザリチュとの言い合いだけで日が暮れるし、そもそも私の姿を目撃したら発狂しかねないでしょうが。他の連中に至っては論外よ論外」

「は……」

「それとも何? 『交信の大呪』ハルワを倒しても聖女ハルワには影響ありませんとでも言うつもり? だとしたら私を舐めすぎよ。その二存在が完全に分けることが不可能である事ぐらいは、ちょっと探るように見れば簡単に分かるわ。と言うかね。私は聖女ハルワとはそれなり親しく、友好的な付き合いが出来ていると思っていたのだけれども、それは私の思い違いだったと言う訳かしら?」

 聖女ハルワが何か言おうとしているが、遠慮なく上から畳みかける。

 勝っても負けても面倒くさい上に、未知のみの字も無さそうな戦闘を、親しい……と言われると正直怪しいが、それなりには付き合いがあると思っている相手としたいとは思えない。

 私は戦闘狂ではない。


「ちょっと黙りなさい」

「嫌よ」

 と、ここで聖女ハルワが水の帯を私の口めがけて伸ばしてきたので、私は『呪憲・瘴熱満ちる宇宙(タルウィ)』を全力で込めつつ裏拳を放ち、水の帯を弾く。

 後、このタイミングで気が付いたのだが、いつの間にか私の座る椅子や、テーブルの半分ほど、紅茶の入ったカップなどが木製に代わっているし、紅茶の中身が沸騰したものになっている。


「アンノウン。貴方は『七つの大呪を排するもの』ではないの? だったら、私は排除する対象でしょうが」

「はあっ? 確かにその称号は持っているけど、それは積極的に殺しに行きます、滅ぼしに行きますの決意表明じゃないわよ。相手が仕掛けてくるなら反撃はするし、今後私に挑む気が起きないようにする程度にはするつもりだけど、なんで称号如きに私がこれからやる事を指図されないといけないのかしら?」

「だったらどうしてそんな称号を得たのよ!?」

「知らないわ! 勝手に手に入っただけだし! と言うかね、称号どうこう言うなら、私の『交信の大呪』に対するスタンスは選別だから。その時の状況に応じてだから。もっと言うなら、『交信の大呪』ならフレーバーテキスト通りに受け入れなさいよ。招き繋いだものの責任は果たしなさい! いえ、と言うか『七つの大呪』とかどうでもいいから、最初に私が求めた仕事をしなさい!!」

 水が張った床から毒々しい色合いの木が生え、その幹から黒い砂が零れ落ちて周囲を満たしていく。

 部屋の中が木と砂の色の不自然さに目をつむれば、まるで南国のビーチのような状態になっていく。


「「……」」

 私と聖女ハルワが睨み合う。


「「……」」

 お互いに茶を飲み、茶菓子を食べ、それからまた睨み合う。


「アンノウン、貴方はタルウィでしょうが。(ハルワタート)と敵対しないでいいのかしら?」

 聖女ハルワがカップを置き、真剣な目つきで言葉を放つ。


「聖女ハルワ。私はタルであってタルウィではない。いいえ、もっと言えばタルですらなく、樽笊(たるざる)羽衣(うい)が本当の名前であり、未知を味わうために私は此処に居るの。ええそうよ……」

 対する私は自分を構成する呪いを制御することによって、その姿を変える。

 『CNP』のタルの姿ではなく、現実世界の樽笊羽衣の姿へと。

 そして、その上で言葉を放つ。


「既知で呪いでしかない神話(むかしばなし)など邪魔なだけ。私はそんなものはどうでもいい」

 堂々と、清々しく、嘘偽りのない心の底からの言葉を。


「……」

「と言う訳だから、私はとっとと帰らせてもらうわよ」

「そう、分かったわ」

 私は席を立つ。

 同時に空間に干渉をして、この場からの出口を作り出す。


「アンノウン、貴方は本当に訳が分からないわ」

「分からなくて結構。その方がお互いに面白いわ」

「そうね。では今後とも良い付き合いを」

「ええそうね。良い付き合いをさせてもらうと嬉しいわ」

 そうして私はその場を後にし……


「え……たるうぃが別人になって……いやでも姿だけで中身は……え……なんでチュかこれ……」

「ん? ああ、忘れてたわ」

 元の世界に戻ったところで、ザリチュに唖然とされたのだった。

 まあ、普段通りの姿に戻すのには一秒とかからなかったので、唖然とされただけだったが。

 で、それからログアウトした。



△△△△△

『虹霓竜瞳の不老不死呪』・タル レベル42

HP:2,961/4,230 (-1,269)

満腹度:105/150 (-45)

干渉力:141

異形度:28

 交信-[ID]、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪憲・瘴熱満ちる宇宙(タルウィ)、遍在する内臓、劣竜式呪詛構造体(劣竜血、劣竜骨髄、劣竜肉、劣竜瞳、劣竜皮、劣竜角×2)

称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の王』、『灼熱の達人』、『沈黙の名手』、『出血の達人』、『淀縛使い』、『恐怖の達人』、『小人使い』、『暗闇使い』、『乾燥使い』、『魅了使い』、『重力使い(増)』、『石化使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『3rdナイトメアメダル-赤』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『竜狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『偽神呪との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹霓竜瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』、『雪山侵入許可証』、『海侵入許可証』、『呪海渡りの呪人』、『泡沫の世界の探索者』、『確立者』、『崩界者』、『七つの大呪を排するもの』


呪術・邪眼術:

毒の邪眼・3(タルウィベーノ)』、『灼熱の邪眼・3(タルウィスコド)』、『気絶の邪眼・3(タルウィスタン)』、『沈黙の邪眼・3(タルウィセーレ)』、『出血の邪眼・2(タルウィブリド)』、『小人の邪眼・2(タルウィミーニ)』、『淀縛の邪眼・2(タルウィボンド)』、『深淵の邪眼・3(タルウィテラー)』、『飢渇の邪眼・3(タルウィハング)』、『暗闇の邪眼・3(タルウィダーク)』、『魅了の邪眼・1(タルウィチャム)』、『石化の邪眼・2(タルウィペトロ)』、『重石の邪眼・2(タルウィヘビィ)』、『禁忌・虹色の狂眼(ゲイザリマン)

呪術・原始呪術:

『交信-活性』、『交信-抑制』、『交信-選別』、『風化-活性』、『風化-抑制』、『風化-排斥』、『魔物-活性』、『魔物-排斥』、『反魂-活性』、『反魂-排斥』、『転写-活性』、『転写-排斥』、『再誕-活性』、『再誕-排斥』、『蠱毒-活性』、『蠱毒-簒奪』


呪術・渇砂操作術-ザリチュ:

取り込みの砂(ザリチュメモリ)』、『眼球(ザリチュサイト)』、『(ザリチュアーム)』、『(ザリチュラット)』、『化身(ザリチュアバタ)』、『噴毒の(カースゴレム・)華塔呪(ザリチュタレト)』、『瘴弦の(カースゴレム・)奏基呪(ザリチュオルゴル)』、『禁忌・虹色の狂創(アーリマンキス)

呪術-ジタツニ:

砂漠の呪い(トセロフセルブ)』、『抗体の呪い(スリブセルブ)

呪術-ネツミテ:

太陽の呪い(ノームセルブ)』、『熱波の呪い(ドロクセルブ)』、『埋葬の鎖(ボレヴァルグ)

呪術-ドロシヒ:

虚像の呪い(ラエルセルブ)』、『貯蓄の呪い(エサウセルブ)

呪術-ドゴスト:

竜息の呪い(クニルドセルブ)』、『竜活の(エサエルセド)呪い(セルブ)』、『埋葬の鎖(ボレヴァルグ)


呪法:

呪法(アドン)増幅剣(エンハンス)』、『呪法(アドン)感染蔓(スプレッド)』、『呪法(アドン)貫通槍(ピアース)』、『呪法(アドン)方違詠唱(ハイキャスト)』、『呪法(アドン)破壊星(ミーティア)』、『呪法(アドン)呪宣言(ロックオン)』、『呪法(アドン)極彩円(サークル)』、『呪法(アドン)呪晶装填(ブースト)』、『呪法(アドン)逆残心(スペルビア)


所持アイテム:

『竜鱗渇鼠の騎帽呪』ザリチュ、『地憑きの羽衣呪』ジタツニ、『陽憑きの錫杖呪』ネツミテ、『星憑きの玉輪呪』ドロシヒ、『竜憑きの袋呪』ドゴスト、鼠毒の竜呪の歯短剣×2、解き拒みの指輪、鑑定のルーペ、フェアリースケルズ、蜻蛉呪の望遠鏡、『虹霓鏡宮の呪界』の鏡扉除け、etc.


所有ダンジョン

『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール、呪詛貯蓄ツール×5設置、『熱樹渇泥の呪界』・『入子屋敷の呪地』・『塩砂湖畔の呪地』接続済み


システム強化

呪怨台参式・呪詛の枝、BGM再生機能、回復の水-2、結界扉-2、セーフティ-2、長期保管用カプセル、『満腹の竜豆呪』ハオマ

▽▽▽▽▽

02/09誤字訂正

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― 新着の感想 ―
重要な情報がぽろぽろ出てきて検証勢が昇天しそうな情報量なんかよりも、呪いや宣言において最重要事項が1つの名を本名使ったことにエモいとなってる。ゲームなどのアカウントという形で別名名乗れる中で本名名乗る…
[一言] 重要情報のラッシュな筈なのに…なんだただの痴話喧嘩(尊い)か背景に百合の花が咲き乱れてるようにしか見えないのよね…タルさんそっち方面の欲求はあった事にびっくりだよ。 はやとちり聖女可愛いな…
[一言] >『CNP』のタルの姿ではなく、現実世界の樽笊羽衣の姿へと。 これはつまり…羽がなくなったことでより背中があらわに!!(浄化 いやしかし現実だと腰までの黒髪だったか? …それはそれで(毒
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