776:5thナイトメア4thデイ-7
本日は三話更新となります。
こちらは二話目です。
「宣言する。貴方を虹色の輝きに沈めてあげるわ」
「ノイツプッロク ヲ シニフ」
私は『呪法・呪宣言』を発動しつつ、私とザッハークの間とその周囲の空間を調整。
毒々しい色合いの木々を左右に移動させつつ、ザッハークに吹き飛ばされたプレイヤーが復帰しやすいように通路を設置。
黒い砂を敷き詰めた直線の空間を生み出し、砂を激しくかき混ぜる事で移動を阻害する。
なお、『呪法・呪宣言』の対象は敢えて明言しない。
私が狙うのはザッハークそのものではなくザッハークを操っている蔓の方であり、それを認識しているのが私だけで、私以外が認識すると別の問題が発生する可能性があるからだ。
「『inumutiiuy』……」
さて、他の呪法の発動もしていく。
呪詛の剣を三本作り出し、虹色の呪詛の円を作り出し、『呪憲・瘴熱満ちる宇宙』を混ぜ込んだ結晶の装填もしていく。
合わせて随分と久しぶりだが、やり方を思い出して『禁忌・虹色の狂眼』の発動キーを引き始める。
「『 a eno、yks nihuse、sokoni taolf、nevaeh esir』」
「ノイツプッロク ヲ シニフ」
「……。タルに近づけさせるな。此処が踏ん張りどころだ」
「言われなくても分かってます」
「やってやるでチュぉ!!」
ザッハークが私の方に向かって突っ込んでくる。
そこにロックオやライトリカブトと言った面々が襲い掛かり、数発で吹き飛ばされはするものの、確実かつ着実にザッハークの速度を落とさせ、時間を稼いでいく。
また、私が『禁忌・虹色の狂眼』を使おうとしているのを受けてか、一部のプレイヤーも同じような大技に取り掛かり始めている。
「『higanhe og ton od』」
「ノイツプッロク ヲ シニフ」
「させないわよ!」
「おらぁ!」
「ふんっ!」
しかしそれでもザッハークはこちらへ近づいてきている。
残りの距離は6メートル程度だろうか。
このタイミングでザッハークの剣をザリアが二度弾き、三度目の攻撃が来る前にブラクロが割り込んで四度弾き、そこへ更にスクナが加わり四度弾く。
恐るべきことにこれでザッハークは一歩も下がらず、体勢が崩れているのは仕掛けている側だ。
そして、ザッハークにとって重要なのは、体勢が崩れているザリアたちではなく、もう間もなく強力な攻撃を放とうとしている私を止める事だ。
「ノイ……」
だからザッハークは踏み込んだ。
ザッハークのスピードを考えると、このままでは『禁忌・虹色の狂眼』の発動は間に合わないだろう。
「もう何度見せられたと思っているの!」
「ツッ!?」
体勢を崩していたザリアが、体勢が崩れたままザッハークに追いすがり、武器を投げつける。
投げられた武器は正確にザッハークの武器を側面から捉え、僅かにだがザッハークの動きが遅れた。
「捉えました。『禁忌・猫神への貢ぎ物』」
「プッロッ!?」
その一瞬の遅れを捉えるようにザッハークの体が無数の鎖、箱、杭によって拘束され、一切の身動きが取れなくなる。
放ったのは検証班によって運ばれてきていたアイムさんであり、捕えられたザッハークの姿はまるで透明な袋の中に入れられた鼠の様だった。
だが、拘束そのものは直ぐに破壊された。
しかし、この少しの時間こそが重要だった。
「『禁忌・虹色の狂眼』」
「ク……!?」
私の生み出した呪詛の剣が動く。
だがただ動くのではない。
森を介した知覚を利用する事で、まるで地図上で駒を動かしたかのように呪詛の剣を動かす。
すると呪詛の剣は私の求めた通りに動く、音速の数倍の速さでだ。
呪詛の剣はザッハークの頭に一本、そしてザッハークの近くから私に向かって来ていた二本の蔓の根元に突き刺さる。
そして私の13の目が虹色に輝き、蔓は枯れ落ち、ザッハークの体は余波を受けて大きく怯む。
「「『禁忌・一時定義-妖刀盟神探湯』」」
「!?」
その怯みを誰も見逃さなかった。
まず先駆けとして刀に変形したクカタチを握ったマナブが現れて切りつけた。
その刃は首を半ばまで断つような威力であり、トドメにはならずとも、ザッハークから体を動かす自由を奪い取るには十分すぎるものだった。
「遠慮なしに仕掛けろ!」
「一気に仕留めるわよ!」
直後。
鉄の槍と爆炎が降り注ぎ、雷の柱が立ち上り、氷雪が荒れ狂い、ザッハークを囲むように現れた岩の壁がそれらの威力を増幅させる。
矢が放たれれば心臓を貫き、槍が投じられれば腹を串刺しにし、鈍器が振るわれれば両腕が潰れる。
光り輝く水が放たれて呪詛が薄まれば、それだけザッハークの動きが鈍り、黒い弾丸が足を貫ければ足を挽き潰すような勢いで呪いが体を搾り上げていく。
森全体を知覚している私でも詳細の認識が難しいレベルになってきているが、それでもまだザッハークは死んでいない。
夥しい数の攻撃の中から、私に向かって飛びかかろうとした。
だから攻撃はまだ続く。
「ーーー!」
「花開け!」
ザリアの剣がもはや全身を真っ赤に染めた人型の肉の塊にしか見えないザッハークを貫き、華が咲くようなエフェクトと共に打ち上げる。
「『禁忌・虹色の狂創』」
「!?」
打ち上げられたザッハークにザリチュが切りかかり、視界の変化が白黒になった後、虹色の爆発が起こる。
「まだ死んでいないとは、いっそ哀れだな。八割」
「ーーー……」
爆発の中へスクナが飛び込み、四本の刀によって虹色の爆炎ごとザッハークの体を八分割してみせる。
「誰も彼もが全力を振り絞っているこの状況。だったら俺も見せるものを見せないとな」
そしてブラクロがザッハークの頭上を取るように飛び上がる。
その手にはもはや穴のようにしか見えない黒い剣があった。
「孔よ黒を深めて黒すら飲め。『禁忌・陽呑』」
「!?」
ザッハークの頭部に剣が当てられ、当てられた場所の空間が歪む。
空間が歪んでいる範囲は直ぐにザッハークの全身へと広がっていき、その間にブラクロが着地する。
「うげっ……」
そして私は呻き声を漏らすようなものを知覚してしまった。
ザッハークとその周囲の空間にあった呪詛が剣があった場所に飲み込まれて消失していったのだ。
私の呪憲の支配下にあったにも関わらず、私の呪憲による支配の一切を跳ねのけてだ。
おまけにその場所には『七つの大呪』たちの干渉も及んでいないようであり、それ以下の呪いも当然入り込めず、少しずつ狭まってはいるが効果は持続している。
つまり最低でも私を遥かに上回るレベルの偽神呪でなければ干渉不可の領域が出来上がっており、それはまるで極小規模のブラックホールがそこに出現したかのようだった。
そうしてザッハークは完全消滅した。




