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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
11章:『盗賊恐れる宝物庫の悪夢』
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775:5thナイトメア4thデイ-6

新年明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


本日は三話更新です。こちらは一話目になります。

「イ エヴィグロフ……ッ!?」

「ほう……」

「へぇ……」

「グハァ!?」

「ギャアッ!?」

 『傀儡の竜人呪』ザッハーク・イキイサンダ・タタロジマの名前を告げた瞬間、ザッハークの動きがほんの僅かにだが鈍った。

 まあ、鈍ったと言ってもブラクロとスクナが捌ける攻撃の回数が3回から4~5回に増えた程度の、本当に僅かなものであり、普通のプレイヤーはほぼ変わりなく吹き飛ばされ続けているのだが。

 しかし、その差で以って前衛プレイヤーたちとザッハークの戦いは一気に安定性を増して、遠距離プレイヤーからザッハークへ行われる攻撃の命中率も大きく向上した。

 ギリギリの戦いだからこそ、この差は大きいだろう。


「さて、名前は分かったけど……」

 さてこの場で『心動力式世界救済機構界境掘削竜』アジ・ダハーカの名前まで告げたらどうなるだろうか?

 運が良ければと言うか、何も起きない可能性はそれなりにあるとは思う。

 けれど何かが起きたら?

 決まっている、私たちにとって悪い方向に、それも致命的なレベルで、戦線が崩壊するに違いない。

 アジ・ダハーカは今の私たちの手に負える存在ではないし、迂闊に触れるには危険すぎる相手だからだ。

 だから、アジ・ダハーカの名前については黙っておくとしよう。

 不確定要素は入れず、ザッハークに専念させるべきだ。


『たるうぃ! 援護をお願いしたいんでチュけど!』

「あー、援護ねぇ……そうねぇ……」

 で、相手の名前が明らかになったことで、『瘴弦の奏基呪』の演奏効果は再びザッハークに届き始めている。

 だからこそヘイトを稼いでしまっているのだろう。

 ザッハークは前線プレイヤーと戦いつつも、少しずつこちらに近づいてきている。

 なのでザリチュは私の邪眼術による援護を求めてきているわけだが……。


「もっと優先するべき事があるから、そっちで何とかして」

「優先すべき事って……チュアアアァァァッ!?」

 うん、私の認識に存在しているものを考えると、そんな余裕はない。

 化身ゴーレムが森の中へと吹っ飛んでいくが、それを尻目に私は少し『瘴弦の奏基呪』たちから距離を取る。

 そして、私の認識に存在しているもの……攻撃的な呪憲によって、私の森を外から浸蝕しようとして来ている力に対処するべく、私の呪憲の強度を高めていく。


「……」

 さて、この攻撃的な呪憲だが、認識を視覚に直すと、シダの葉が生えた蔓のように見えている。

 出所は認識できる範囲だとザッハークの近くだが、ザッハークも前線のプレイヤーも飛び交う呪術も一切反応せずにすり抜けている。

 数は三本、一本はザッハークの脳髄に直接突き刺さっているように見え、残りの二本は私の森を侵食しようとしつつ、私の方へと向かって来ている。

 たぶんだが、この蔓と言うか、ほぼ垂れ肉華シダそのものの存在が『傀儡の竜人呪』を操る糸のようなものであり、呪憲の使い手に対してのみ行われる特殊な攻撃なのだろう。

 出元は一緒だろうし。


「防ぐことはできるが、切れはしない、か」

「ノイツプッロク ヲ シニフ」

「こいつ、タル狙いか!?」

「演奏よりも鑑定を嫌がるのか」

「タル! 適度に距離を取って!」

 改めて呪憲による干渉をしてみる。

 盾によって蔓を弾き、剣によって蔓を切り裂くと言うイメージの下に、垂れ肉華シダの蔓へと仕掛けてみる。

 が、盾で防ぐことはできたが、剣は通らなかった。

 そしてザッハークが私の方に近づいてくると、それだけ相手の蔓の強度も上がるようだった。

 うん、ザリアの言う通り、少しずつ距離を離していくとしよう。

 捕まったら碌な事にならないのが目に見えている。


「やっぱり呪憲を補助するための何かは作っておくべきね。後で何か考えないと」

『さっきからたるうぃの挙動が不穏すぎるんでチュが、何が見えているんでチュか……』

「まあ、色々と?」

『詳細は聞かないでおくでチュ』

 なお、今の私の行動は傍目には邪眼術も使わず、時折手を振りながら、フラフラと揺れながら後方に向かっていると言う理解しがたいものである。


「まあ、相手が使っているなら躊躇う場面でもないと言うか……ああいや、この場合は私が先に仕掛けたことになるのかしら? まあいいか、とにかく攻撃もしていきましょうか」

「ノイツプッロク ヲ シニフ」

 で、この挙動を何時までもしているせいで、垂れ肉華シダの蔓が他のプレイヤーに向かっても困るし、そろそろ慎重かつ冷静に仕掛けていくとしよう。


raelc(ラエルク)淀縛の邪眼・2(タルウィボンド)』」

 私は『呪憲・瘴熱満ちる宇宙(タルウィ)』を混ぜ込みつつ、呪詛の槍を数本作り出す。

 そして、三本の蔓に向かって射出。

 裏で何かが削れていくような気配を感じつつ、『淀縛の邪眼・2』を発動。


「エヴィトセッフェ」

「弾いた!?」

「んなアホな!?」

「今何か妙な……」

「ふむふむ」

 結果、ザッハークの脳髄に突き刺さっている蔓への攻撃はザッハークが振るった剣によって呪詛の槍が弾かれた事で無効化された。

 まあ、呪憲無しのただの呪術が垂れ肉華シダの方に通るはずがないので、これは仕方がない。

 しかし残り二本の蔓は明らかに動きが鈍った。

 どうやら呪憲の力の押し付け合いであっても、呪術が加わった方が力は強まるらしい。


「……。時間もなさそうだし、試しましょうか」

 ならば私が所有する呪術で最も強力な……それも偽神呪と言う呪憲を持っているであろう存在から授かった呪術を浴びせれば?

 試す価値はあるだろう。


「ザリチュ! 久しぶりに使うから、時間稼ぎを頑張るように!」

「久しぶりって……ああもう、やってやるでチュよ!」

 では、久しぶりに『禁忌・虹色の狂眼(ゲイザリマン)』を使うとしよう。

01/01誤字訂正

02/22誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] 運が良ければと言うか、何も起きない可能性はそれありにあるとは思う。 それありに→それなりに 誤字ですかね?
[一言] あけましておめでとうございます、今年も更なる飛躍をお祈りしています そしてタル様には更なる未知があらんことを
[一言] 最上位層の戦いでの僅かな変化は、劇的な変化と同義みたいなものですからねえ。 糸というか、有線式コントローラのケーブルかな? 鑑定よりも単純な脅威度が高いからだけど、呪憲を知らない他のプレ…
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