表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
11章:『盗賊恐れる宝物庫の悪夢』
771/1000

771:5thナイトメア4thデイ-2

「えーと、現在はどうなっているんでチュか?」

「とりあえずザッハークが出現。様子見なのか何かしらの情報があったのかは分からないけど、出現地点近くに居たプレイヤーと戦っているわね」

 私とザリチュは拠点の外に出ると、ザッハークが居る方に向かって移動を始める。

 なお、私は戦闘が起きているのが森の中であるために詳細を把握しているのだが、この力を抜きにしても既にザッハークの咆哮やら爆発音の類は聞こえている。


「……。急がないんでチュか?」

「急いでいかないと倒される程度の相手なら戦う価値なしでいいわ。現地で何が起きているかは正確に把握できているし」

「あー、半分くらい観戦モードに入っているでチュね。これは」

「いやだって、超大型ボスのように個体名は持っているけど、ザッハークだし、劣竜呪だし、観測手段はあるしで……ねぇ?」

「うん、確かに急ぐ必要はなさそうでチュね」

 なお、私もザリチュも移動はゆっくりとしたものである。

 理由は色々と言ったが、これに付け加えるなら『収蔵の劣竜呪』ザッハークとの戦闘を始めたのは他のプレイヤーたちなので、彼らだけで問題なく倒せるなら、それに割り込むのは良くないと言う判断もある。


「ちなみに現在の戦況はどうでチュ?」

「えーと、近接組は私の森の中から逃がさないように立ち回っている感じね。遠距離組は樹の影からこそこそと撃ち込んでる。ザッハークは樹をなぎ倒しながら進むことで、森からの脱出を狙っている感じかしら」

「たるうぃの森をざっはーくは吸収できない、と言う事でチュか」

「そうなるわね。耐性がそれなりにあるみたいだから、毒とかは入ってないようだけど」

 ちなみに森の中に居るプレイヤーの中で私の知り合いと言えるのは、検証班と『光華団』のメンバーぐらいだが、名前までは知らない顔見知りぐらいのプレイヤーである。

 そして、援軍が続々と森の中に入ってきているわけだが……。


「たるうぃ、掲示板経由で森の熱気や毒気を弱めて欲しいと言う依頼が来たんでチュが」

「無理。この森の完全制御が出来ているなら、そもそもこんな森は出来てないわ」

「でっチュよねー。適当に返事しておくでチュ」

 まあ、援軍の幾らかはこの森への対策が不十分だったらしく、ザッハークに辿り着くまでもなく倒れている。

 後、今更の話だが、昨晩私が眠り始める時よりもまた森が広がっていて、そのせいで消滅場所に再出現したザッハークの下に辿り着くのが多少難しくなっているようだ。


「うーん、仕方がないわね……ちょっと弄りましょうか」

 と、ここでザッハークが被弾を無視した突進によって脱出を試み始めたのを私は確認した。

 と言う訳で、近くの適当な樹に手を当てて、森の構造を少し操作する。


「「「ーーーーー!?」」」

「何をしたんでチュ?」

「ザッハークが居る場所の地面を少し窪ませて盆地にしたわ。その上で盆地を囲うように樹の柵を作り、枝葉を伸ばさせて、ドームに近い感じにしたわね。で、突進そのものは一時的に樹の壁の後ろへ大量の砂を集める事で無理やり止めたわ。それと、外からのアクセスを少ししやすくもしたけど……」

「十分使いこなしているじゃないでチュか……」

「出来そうだからやってみたら出来たわ。でもこれ以上をしろと言われても困るわね。呪憲の操作の一種だから。裏で色々と削れている感じがあるのよ」

 結果、ザッハークは強固な壁に体当たりをしたような形となって動きを止め、盆地と言う遠距離攻撃を非常にしやすい地形になったこともあり、遠距離攻撃によって一気に削られていく。


「「「ーーーーー!」」」

「HPだけは竜呪並みたいねぇ……」

「確かにまだ死んでないみたいでチュねぇ」

 が、まだまだ元気であるらしい。

 咆哮が聞こえて来た。

 しかし、私が森の中に樹の道を作ったことで、外の拠点からザッハークに攻撃が仕掛けられる場所までたどり着きやすくなったことで、新たなプレイヤーたちが参戦し、攻撃の密度は減るどころか増していく。

 後、ザリアやブラクロと言った最前線組も到着して、それぞれに出来る事を始めているようだ。


「これ、本当にざりちゅたちが辿り着く前に終わりそうでチュね」

「そうねー」

 さて、これまでの戦闘を見る限り、ザッハークには遠距離攻撃の手段がないらしい。

 いや、流石にそう断定するのは早計か。

 現状だと、火や水、雷と言った固形物ではない攻撃をザッハークは使えない、これくらいまでしか言えない。

 そんな私の考えとは無関係だろうが、戦場に変化が起きた。


「「「ーーーーー!」」」

「チュア!?」

「あー、面倒な事をしてくれたわね……」

 響いたのは爆発音。

 同時に森を通じて私に情報が入ってくる。

 ザッハークの腕が爆発して、構成物だったものが散弾のように撒き散らされたと言う一次情報。

 そして、撒き散らされた構成物が着弾点で小さなザッハークに変化してプレイヤーに襲い掛かる、または……森の外への脱出を試み始めていると言う二次情報をだ。


「ザリチュ、掲示板に情報。小型のザッハークが森の外に逃げ出そうとしているわ。たぶん、森の外に出られたら、そいつが本体になるわよ」

「至急書き込むでチュ」

 私もザリチュも移動スピードを上げる。

 どうやらザッハークであるからとか、劣竜呪であるからとかで、舐めていていい時間は終わってしまったようだ。

 だからこそ、私が見たことがない未知が見られるのかもしれないので、期待も高まると言うものだが。

06/13誤字訂正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「えーと、近接組は私の森の中から逃がさないように立ち回っている感じね。遠距離組は樹の影からこそこそと撃ち込んでる。ザッハークは樹 をなぎ倒しながら進むことで、森からの脱出を狙っている感じかし…
[一言] 関係ないけどそういやタルの言う呪憲使った時の感覚って晩飯のおかずで焼き肉出された時の俺の感覚と一緒なのかな?こう見えないところで大事な何かが削れてく様な…そして俺の場合はなんというかこうその…
[一言] ちびザッハーク……これはマスコットの座を狙ってますわ 穴あけて治る前に森の木の枝を突っ込んで森から蹴り出したいなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ