表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
11章:『盗賊恐れる宝物庫の悪夢』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

770/1000

770:5thナイトメア4thデイ-1

「ふあっ、おはよう。ザリチュ」

「お、おはようでチュ。たるうぃ」

 イベント四日目。

 朝目覚めるとザリチュが挙動不審だった。

 明らかに私と視線を合わせる事を嫌がっているし、手をどこに向けようか迷っているし、声に躊躇いが含まれている。


「んー、ザリチュ」

「な、なんでチュか?」

「今日の私はぶっちゃけ夢見が良かったとはお世辞にも言えないのだけれど、寝ぼけたりとか、寝相の悪さとかで何かやった?」

「な、何もやってないでチュ。たるうぃは何もやってないでチュ。当然でチュが、ざりちゅも何もやってないでチュよー」

 ザリチュは明らかに何かを隠していると言った感じで私の言葉に応える。

 その反応からして、私が何かをやったのはほぼ間違いなさそうだ。


「ふうん……」

 しかしだ。

 私が見た限り、私が寝床にしている拠点には何の変化も見られない。

 眠る前と物の配置は変わっていないし、取り繕った後も見えないのだ。

 本当にいったい何があったのだろうか?


「と、ところでたるうぃ? 夢見が良くなかったらしいでチュが、具体的には何処がどう夢見が良くなかったんでチュ?」

「え? そんな大した話じゃないわよ。夢の中でゆったりと休憩をしていたら、突然耳元で何かがギャアギャアと騒ぎだして、細かい虫みたいなものが肌の上を這いずり回るような感覚を覚えたとか、そんな奴だから」

「普通に悪夢じゃないでチュか……」

「最終的には偶々目についたトカゲみたいなものを叩きつけて、そうしたら静かになった上に虫の感覚もなくなったから、またゆったりと休憩を始めたのよね」

 悪夢……そもそも、私たちが今居る此処が悪夢だと言うツッコミは敢えてしないでおくとして。

 まあ、確かに一般的には悪夢としてカテゴライズされるような夢か。

 しかし、夢と言うものの役割を考えると……あれは私の主観時間において一昨日にアジ・ダハーカを見た影響とかなのかもしれない。

 トカゲとドラゴンなら無縁とまではいかないし、毒虫とアジ・ダハーカならなおさらだ。

 なお、トカゲ繋がりで『悪創の偽神呪』が出て来るかと言われると、それはないと思う。

 アレはトカゲの姿をしていても、別格過ぎる。


「ん? ああでも、あのトカゲにはどうしてか申し訳ないと言う気持ちは沸かないわね。普段この手の夢を見て、そういう事をしたら、多少なりとも申し訳なさを覚えるものなんだけど……」

「そうなんでチュかぁ……」

 しかし改めて考えると、なんだか今日は妙にすっきりしている。

 夢の中の私はよほどあのトカゲが目障りだったらしい。


「まあ、そろそろイベントの為に動きましょうか。食事をしつつ、掲示板の確認ね。夜中の内に何かが起きているかも……」

 私は満腹の竜豆呪を食べて満腹度を回復させつつ、情報収集のために掲示板を適当に覗き始める。


「思いっきり夜中の内に何かが起きていたわね」

「起きていたでチュねぇ……」

 そして直ぐに事件があったことを知った。

 どうやら夜中の内に昨日の黒い卵が孵化して、『収蔵の劣竜呪』ザッハークと言うカースが出現、暴れ回っていたらしい。

 で、出現後だが、固形物の吸収と言う厄介な能力を持つザッハークにプレイヤーたちは攻め手を欠き、そのままでは討伐不可能であると判断。

 まずはその能力が通用しない可能性があるかもしれない私の森へとザッハークを誘導したようだ。

 そしたら……あー、どうにも情報が錯綜している感じだが、私が読み解いた限りだと、手の形をした宇宙がザッハークの体の上に出現し、消滅させたらしい。


「いや、私には全く心当たりがないと言うか、私にはこんな事は出来ないんだけど」

「でチュよねー」

 で、どうしてか、このザッハーク消滅をやったのが私である事にされている。

 うん、流石にあり得ない。

 私が寝ぼけて、森の中に入ってきたザッハークに何かをやることまでは、寝ぼけていて前後不覚の状態である事やこの森の中で起きている事は全て把握可能である事から、あり得ないとは言わない。

 夢の内容とも完全にではないが、一致する部分もあるから、否定はしない。


「宇宙……宇宙ねぇ……」

 しかし、この手の形をした宇宙でザッハークを押さえつけ、消滅させたと言う未知の塊のような現象については意味不明だ。

 ダンジョンの壁と一緒に呪限無の内外を分ける壁まで破壊して、呪限無の外に出ると言う、一昨日にやった行動に近くはあるかもしれないが、アレでザッハークを呪限無の外に出そうとしたら、私は恐ろしい程の対価を持っていかれるはずだし、周囲に居たプレイヤーにも多大な被害が出ていたはず。

 しかし、掲示板で話を探る限り、プレイヤーは疎かNPCにも被害は出ていないらしい。

 これ、見た目は豪快そのものと言うか、極めて荒っぽい行為だが、実態は恐ろしい程の正確性を有する振る舞いではなかろうか……。


「ーーーーー!」

「ん?」

「たるうぃ! 緊急速報でチュ!」

 と、ここで遠くの方から咆哮のような物が聞こえて来た。

 同時にザリチュが警告を発し、ザリチュがその内容を言うよりも早く私は何が起きたのかを察した。


「ザッハークが出現したみたいね」

「ザッハ……早いでチュね……」

「だって、森の中で起きている事だもの」

 どうやら夜明けとともに、消滅していたはずの『収蔵の劣竜呪』ザッハークが再出現し、戦闘を始めたようだった。

12/27誤字訂正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 今更だけど この時お母様と繋がったんだなぁ
[一言] んんんん?これに就いては後に説明されるのかな? 理解力ないから詳しい解説に期待
[一言] 見たものが仕方ないとはいえザリチュがキョドり過ぎぃw 呪権は、もしかしたら某騎士の理力のように「考えるな、感じるんだ」の方が上手く扱えるのかも?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ