759:5thナイトメア3rdデイ-7
「「ナイスバルクッ!!」」
「うぼぉ!?」
『たるうぃぃぃぃぃぃ!?』
「キレてる! キレてるよー!!」
「素晴らしい張りと艶でした!!」
「マッチョ様ー!! 素敵ー!!」
二体の筋肉像がフロントダブルバイセップスポーズのまま私の頭部を挟むように突進。
これまでの攻撃で翅にも足にもガタが来ていた私にこの攻撃を避ける事は出来ず、石で作られた太い腕に挟み込まれた私の頭は見事に弾けた。
私は頭が弾けた程度で死ぬような体はしていない。
だが、『遍在する内臓』を持つカースと言えども、死ぬまで殴られたら死ぬしかないのである。
と言う訳で、私は死に、二体の筋肉像……最初からいた猛々しい男性のマッチョ像と、顔を美少女に変えバランスも整えられているがそれ以上に筋肉美に優れた女性のマッチョ像が、周囲に居る他の人形たちに称賛される中で死に戻りしたのだった。
「うん、アレは無理……」
『まあ、無理でチュねぇ……』
で、森の中の拠点に戻された私の第一声がこれだった。
ザリチュも力ない感じにだが同意してくれる。
そして思い出すのは、先ほどの戦闘光景である。
「完全に私の天敵だったわね」
『天敵だったでチュね。開戦時の距離が既に射程内だったのもあるでチュが、アレは天敵でチュ』
筋肉像の能力は極めてシンプルなものだった。
私の意識が筋肉像から逸れれば逸れるほどに素早く接近し、素早くポージングを変える。
ただこれだけだった。
だが、その能力と私の戦闘スタイルの相性が悪すぎる。
「私、全方位を見ているけど、全方位を見ていると言う事はそれだけ注意を割り振っていると言う事なのよね……」
『そして、その注意の割り振りですら能力の発動条件を満たすんでチュからねぇ……』
あの能力を破るためには筋肉像以外には僅かな注意も払えない。
僅かでも注意を他所に向けたら、その瞬間に能力発動で殴られる。
そして、私の場合は……『増えた目』の性能を生かすべく、極自然に注意を他所に向けているのだから、もうこれだけでもどうしようもない。
「邪眼術の選択でも注意が逸れるのよねぇ……」
『たるうぃは選択肢が多いでチュからねぇ……』
では、無理やりにでも筋肉像にだけ注意を向ければいいのだろうか?
残念ながら、私の戦闘スタイルだと次にどの邪眼術を使うかを常に取捨選択しなければならず、その取捨選択の瞬間ですら注意を逸らしたと判断してくるのがあの筋肉像である。
つまり、何を使うか考えただけでも、殴られるのだ。
「しかも、チャージが終わっていざ発動しようとしても的確に潰されたし」
『本当に的確だったでチュよねぇ……』
おまけにだ。
邪眼術及びネツミテやドロシヒの呪術を発動するためには動作キーや詠唱キーを発する必要があるのだが、あの筋肉像はどうやってか発動の為に欠かせない動きや発音を正確に読み取り、それを潰すように攻撃を仕掛けてくるのだから、どうしようもない。
そんな中で唯一発動できたのが動作キーによる『気絶の邪眼・3』だが、あのポーズを変える動きは筋肉像が気絶していても問題なく出来るらしく、本当にどうしようもない。
「劣竜血は効果がなかったし……」
『ネツミテは当たらなかったでチュねぇ……』
そんな状況下で私が出来る他の攻撃手段と言うと劣竜血による反撃とネツミテによる直接攻撃の二つぐらい。
しかし劣竜血は生物限定なのでそもそも効果が出ず、ネツミテはそもそも当たってくれるような相手ではなかった。
「おまけにあの場は筋肉像以外にも色々と居たし……」
『と言うか筋肉像、途中から二体に増えていたでチュよね?』
「増えていたわね。少女の顔をしたのが」
そもそもあの場には筋肉像以外にも様々な人形が居た。
その中には当然ながら攻撃能力を有しているものも居て、筋肉像から注意を逸らすと言う事は、別の人形からの攻撃を甘んじて受けると言う事で、そこまで耐久能力があるわけではない私がそれを許容するのは無理だった。
しかも途中から、猛々しい筋肉像とは別に、少女の顔をした筋肉像が戦闘に加わっていた。
こうなると、どちらかの筋肉像に注意を向けたら、もう片方の筋肉像に殴られるループが完成してしまうため、一人ではもう完全にどうしようもない。
死ぬまで殴られて死ぬだけである。
『で、実際のところ、アレをどうにかする事は出来るんでチュかね?』
「あの状況に追い込まれたら、呪憲を使う以外に脱出は出来なかったでしょうねぇ……」
『でもさっきは使わなかったでチュね』
「だってあの場はまだ負けても取り返しがつくもの。呪憲が使えない相手に呪憲を使うのは、それこそ負けとしか思えないし」
『頑固でチュねぇ』
「使わないと取り返しがつかない時は使うから問題はないわ」
さて、反省会はこれぐらいにして、対策を考えてみるか。
一番手っ取り早く、私に合っているのは射程圏外から攻撃する事だろう。
相手の間合いで戦えば、百戦百敗しかねない程度には相性が悪いが、私の距離で戦えば、相手がテレポートでもしてこない限りは私が勝てるはずだ。
後は本当に筋肉像にだけ集中して戦うと言う方法だが……これは私の戦闘スタイルと技能では不可能なので却下する。
それが出来るのはブラクロやスクナであって、私ではない。
それと『竜活の呪い』によるスペックの暴力で無理やりと言う手もあるが、スマートさには欠けるだろう。
必要なら躊躇いなくやるが。
「とりあえず掲示板には上げておきましょうか。宮殿の庭園には人形たちのオリジナルが居るが、筋肉像と言う凶悪な能力持ちも居るって」
『でチュねー』
では、デスペナと『化身』のコストが回復するまでは、掲示板を眺めつつ拠点で待つとしよう。
12/16誤字訂正




