748:5thナイトメア3rdデイ・タルウィハング・3-2
「あ、今回のゲストは無しなの」
「みたいでチュね」
視界が白一色から戻る。
そして見えてきたのは、もはや毎度おなじみとなった闘技場と化身ゴーレムの姿だった。
どうやら今回はゲストはなしで、ザリチュがパートナーになるようだ。
なので、私の頭の上にはザリチュが変わらず乗っている。
ただ、『鑑定のルーペ』と一緒にサンダルが消えているので、イベントの効果で得たものは全て消えているようだ。
「オファーは出した。が、断られた。まあ、今の状況を考えればおかしなことではないだろう」
「まあ、イベント中だものね」
「たるうぃの様に出来上がったなら状況に構わず挑む方が特殊なのは確かでチュよねぇ」
「ふふふ、どうなるかが楽しみですネ」
「「……」」
「アレは無視して構わんぞ」
観客の方は試験官である『悪創の偽神呪』の他、仮称裁定の偽神呪と『暗闇の邪眼・3』の時に見た推定偽神呪の二人、獅子の目の仮面を付けた『七つの大呪』の誰か入りの人形、それに邪火太夫か。
邪火太夫については気にしないでおこう。
この観客の面子なら、余計な手出しを仕掛けようとしても許す事は無いはずだ。
「と、ゲストが居ないなら、撮影は自前でやっておかないといけないわね」
「でチュね」
録画開始。
勝利した場合には『飢渇の眼宮』が開かれて、そこに今回戦った相手が現れる事になるはずだ。
なので、戦いの様子を撮っておけば、何かと役に立つはずである。
「では、そろそろ試練の相手を出すとしよう。ああそうだ。『虹霓竜瞳の不老不死呪』タル、貴様の思想に配慮して、今回の相手を倒すのに特別な手段は必要としないだけは予め伝えておくとしよう」
「そう、配慮に感謝するわ」
『呪憲・瘴熱満ちる宇宙』を使う必要はなし、と。
むしろ使ったら、ペナルティの類があるまでは考えておいた方がいいかもしれない。
そうなった理由は……まあ、呪憲なんて明らかに一般プレイヤーが手を出していい物じゃないと言うか、手を出せない物だし、そんな物を使う事を前提とした相手が邪火太夫以外に居ても、運営的に困るからだろう。
まあ、私は困らないので、使わなくていいなら使わないだけだ。
「さて……」
では、そろそろ試練に集中するとしよう。
『悪創の偽神呪』が集めた呪詛の霧は、いつものようにドーム状になっている。
そして今は少しずつ縮小していっている状態だ。
「角も尾も出てこないでチュね」
「そうね。普段ならもう見え始めるんだけど」
しかし、霧が縮んでも相手の姿は見えてこない。
ザリチュの言う通り、普段なら角、翼、尾と言った体から突出している部位が見えてくる頃なのだが、何も見えてこない。
つまり、相手の体が球体に近いか、元からそういうものであるかと言う事だ。
「チュア?」
「奇妙ね……」
やがて相手の姿が見えてくる。
まず見えたのは、枯れ木のように乾燥、ミイラ化した猿とも人とも付かない無数の腕。
次に見えたのは、目鼻口から暗い穴を覗かせる、腕と同様に乾燥しきってミイラとなった無数の顔。
数えたところ、顔の数は13、腕の数は42あるようで、この大量のミイラ化した顔と腕を組み合わせる事で、顔一つ分の穴が開いた奇怪な球体を形成しているようだった。
「竜の要素は何処に行ったのかしら?」
「そうでチュよね。今までにあった竜の要素が何処にもないでチュ」
敢えて分かりやすくまとめるならば、ミイラで出来た壺、と言うところだろうか。
まあ、カースらしく、腕も顔もきっちり蠢いており、こちらの事を睨みつけているのだが。
それにしても竜の要素は何処に行ったのだろうか?
あの邪火太夫にすらあったはずの竜要素が此処で唐突に無くなると言うのは少々考えづらい。
そうなると……やはり、そういうものである可能性を考慮しておいた方が良さそうか。
「まあ、まずは見える範囲を対処していきましょうか」
「……。分かったでチュ」
「では試練開始だ」
『悪創の偽神呪』が試練の開始を告げる。
「「「ディルルルルルルルゥ!」」」
「チュア!?」
「『熱波の呪い』」
直後、ミイラ壺が奇怪な鳴き声を発しつつ、一瞬にして闘技場の上空、おおよそ15メートル程度の高さまで、僅かに弧を描きつつ飛び上がる。
事前動作が存在しなかったことにザリチュは驚きの声を上げ、その動きに予想が補強された私は後方に向かって跳びつつ『熱波の呪い』を発動する。
「「「ディル……」」」
飛び上がった時とは全く別の軌道でミイラ壺の体が闘技場の地面に叩きつけられる。
狙われていたザリチュは咄嗟に飛び退いて回避したが、ミイラ壺の攻撃の衝撃で闘技場の地面の一部がめくれ上がり、隆起している。
「「「ハンガァ!!」」」
「ッァ!?」
「最初から容赦がないわね……」
そして、その直後にミイラ壺の無数にある口から暴風のような風が放たれ、いつの間にか風化し砂粒と化していた闘技場の地面だったものを巻き込みながら、周囲を薙ぎ払う。
どうやらある種のサンドブレスのようであり、生身の人間が至近距離で巻き込まれれば、一瞬で全身をズタズタに引き裂かれる事だろう。
「いや、本当にそうでチュね。最初からとんでもないでチュよ」
「まったくね」
とは言え、砂で出来ている化身ゴーレムは上手く風に乗る事で被害を最小限にとどめたし、距離を取っていた私には乾いた風が少し届いた程度で問題なしだったが。
「さて、ytilitref『飢渇の邪眼・2』」
「「「ディルゥ……」」」
では少しずつ仕掛けていこう。
私は呪詛の槍をミイラ壺に向かって放ち、伏呪付きの『飢渇の邪眼・2』を放った。
12/05誤字訂正




