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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
11章:『盗賊恐れる宝物庫の悪夢』
733/1000

733:5thナイトメア1stデイ-7

『たるうぃ、奥の『噴毒の華塔呪』が破壊されたでチュ』

「そう」

「回復を急げ! 相手は一人なんだ! 舐められて堪るか!」

 お互いを分けるように遮蔽物が生成されたから小休止?

 いいや、相手は既に動いている。

 最低でも二人が、遮蔽物の左右から挟み撃ちをするように、こちらから迫ってきている。

 しかも、リーダーであろう男の声をブラフにしてだ。

 最初に投じた眼球ゴーレムは遮蔽物生成の余波で破壊されていなければ正確な位置も把握できたが、分からない物は仕方がない。


「この辺かしらね」

 私は呪詛の剣を8本ほど生成して、狙いを付けておく。

 邪眼術の準備も既に済ませてある。

 この後を考えて、『瘴弦の奏基呪』を一体ドゴストから取り出しておき、遮蔽物の方にゆっくりと移動させる。


「「「ソニ……」」」

 PKたちが現れた。

 足音通りに遮蔽物の左右から二人ずつ。

 そして、何かしらの方法で音もなく遮蔽物を飛び越してやってきた一人。

 先ほど私に叩きこまれた速度補正を得る呪術による攻撃の構えを既に取っている。


pmal(プマル)……」

「「「ック……」」」

 『呪法(アドン)方違詠唱(ハイキャスト)』を行いつつ、呪詛の剣を三人に向けて射出する。

 同時に一人につき目一つ分の『気絶の邪眼・3(タルウィスタン)』を発動。

 稲光が三人の体に走るが、気絶についてはさっきも使われた状態異常無効化手段によって弾かれたようだ。

 しかし、稲光と言うエフェクトによる目くらましは出来ているし、呪詛の剣による突撃の方向制限も出来ている。


「『暗闇の邪眼(タルウィダーク)・3(シェード)』」

「スラッシュ……!?」

「ピアース……!?」

「スマッシュ……!?」

 PK三人が突っ込んでくる。

 同時に私はその場で跳躍し、私の正確な位置を見失っていた三人の攻撃を避けつつ、三人の胸に呪詛の剣を突き刺した上で目三つ分の『暗闇の邪眼・3』によって焼く。


「シイッ!」

「甘いわよ」

 そして、その成果を見届けるよりも早く呪詛の鎖で体を引っ張り上げ、いつの間にか復活したらしい銀髪の少女の短弓による攻撃を紙一重で回避。


「っう!? まあ、万が一の手を三手も考えておく辺りは流石だと思うけど」

「ふんっ!」

 だが直後に天井から氷柱のように岩が突き出て、私の頭部を強打。

 床にまで叩き落され、このタイミングでリーダーの男が私に向かって冷気を纏った短剣を投げつける。

 完全に狙いすましたタイミングだ。


「っ!? ザリチュ、無差別演奏開始よ」

『了解でチュ』

 が、これは『竜息の呪い(クニルドセルブ)』の射出方法2による『噴毒の華塔呪』の召喚でガード……しようとしたが、貫通力を強化した投擲だったのか、それとも水の類でもまとっていたのか、普通に『噴毒の華塔呪』を貫いてきたので、咄嗟に首を捻ってスレスレで回避。

 肌で感じた冷気からして、直撃していなくても凍結の状態異常を与えられそうだったが、そちらは『抗体の呪い(スリブセルブ)』の効果で防げたようだ。

 これらの行動と同時に『瘴弦の奏基呪』が無差別対象で攻撃的な演奏を開始。

 周囲に洋琵琶の音が響き始める。


「演奏攻げ……」

「とめ……」

「させる気はないわ」

 リーダーの男の顔が『瘴弦の奏基呪』の方を向く。

 心臓に伏呪付きの『暗闇の邪眼・3』を撃ち込まれた三人は既に死んでおり、三人が居た場所では漆黒の炎が燃え上がっている。

 銀髪の少女がリーダーとは別方向から飛び出し、音源への攻撃を開始しようとしている。

 他のメンバーの位置は分からないが、この場から逃げ去っているような足音が一人分聞こえる。

 恐らくは収奪品の運び屋、この状況では無視するしかないが。


「!?」

「なんだその連射速度!?」

 銀髪の少女にネツミテを振るうのと同じ速度で放たれた『噴毒の華塔呪』をぶち当てる。

 そして、吹っ飛んでいた先でそのままプレスさせるが……少なくとも一人は遮蔽物の向こうに残っているはずなので、長くは保たないだろう。

 しかし時間は出来ている。


「そういう呪術なのよ。便利でしょ?」

「そうだな! 便利そう……ぐうっ!?」

 だからその時間でリーダーにネツミテで殴りかかり、『熱波の呪い(ドロクセルブ)』によって攻撃能力を持っている呪詛の剣を叩きつけ、動きを止めつつダメージを稼いでいく。

 で、このタイミングで『瘴弦の奏基呪』の演奏効果発動。

 私含めて音が届く範囲に居る全員にダメージと状態異常を与えるが、その被害の差は目に見えて明らかであり、私はほぼ無傷なのに対して、リーダーは一気に体調を崩す。


「トド……っ!?」

 私はリーダーにトドメを刺そうとする。

 だがそれよりも一瞬早く、白煙が私の方に迫ってくる。

 この白煙の効果は未だに不明。

 ただの煙幕ならばいいが、そうでない可能性も十分ある。

 そう判断した私は白煙から逃れるように一気に移動していく。


「……。痛み分け……。いいえ、私の方が被害は大きいかしらね」

『あの場にあったざりちゅのゴーレムは全て破壊されたでチュ』

 『瘴弦の奏基呪』の演奏が途絶える。

 私への追撃はない。

 今の戦いの結果は……私は生き延びると言う最大の戦果は得られているが、敵の撃破は出来なかった。

 そして、相手の手札は多少切らせたが、消耗については微妙なところであり、対する私の方はザリチュのゴーレムを何体も消費している。

 うーん、負けに近い引き分けと言うところだろうか。


『しかし、あのPKたち、たるうぃが奪い取れるアイテムをジョウロ一つしか持っていないと知っていたら、どうしたんでチュかね?』

「変わらないと思うわよ。最初から仕掛けて来ていた辺り、PKガチ勢の類だと思うから」

『そう言えばそうだったでチュねぇ……』

 まあ、一対七以上の状況から生き残れたのだから、それでよしとしておこう。

 私は戦闘の場から離れるように更に移動していった。

11/20誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[良い点] 多数で奇襲仕掛けてきた敵に対して半数討ち取って撤退させたら勝利では? ゴーレム消費といえばあれですが、そのゴーレム砂ですよね? 再利用が容易な消耗はあまり問題にならないような。 [気にな…
[一言] PK達の敗因は「堅実過ぎた」事かね? 多分最適解は【状態異常無効バフ】を複数人で行使してクールタイムの隙を無くし 近接回避盾一人を前に立てて遠距離【物理攻撃】のラッシュで削り切る辺りだろう…
[一言] >うーん、負けに近い引き分けと言うところだろうか。 ではここで一度お互いの勝利条件を確認してみましょう。 PK達:恐らくタルを倒すことそのもの。多分箔付け。戦利品があればラッキーな感じ。 タ…
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