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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
11章:『盗賊恐れる宝物庫の悪夢』
730/1000

730:5thナイトメア1stデイ-4

「む……まあ、仕方がないわね」

『あー、これは欠点でチュねぇ』

 周囲の呪詛濃度が上がっていく中、私は周囲の状況をきちんと確認するべく高速移動を止めようとした。

 が、私の移動方法にはブレーキの類はなく、基本的には空気抵抗による減速しか出来ないので、移動が止まるまでにはそれなりの時間がかかりそうだった。


『足で地面を擦る覚悟はあるでチュ? あるいは逆方向に引っ張る覚悟はあるでチュ?』

「ないわね。差し迫った危険がある訳でもないし、自然減速に任せましょう」

 なお、本当に無理やり止まるならばだが。

 サンダルの性能と自身のバランス感覚を信じて、足を地面に着けて減速する。

 呪詛の鎖を進行方向とは逆方向に伸ばし、巻き上げて、強制減速する。

 と言う方法はある。

 前者は体勢を崩したら地面との合い挽き肉に、後者は体の強度が足りなかったらバラバラ切り分けられる事になるので、私であっても緊急手段だが。


esaeler(エサエレー)

 そうして十分に減速したところで、私は『熱波の呪い(ドロクセルブ)』を解除し、一度大きく羽ばたいて、完全停止する。


「さて、完全にダンジョンね」

『でチュねぇ』

 周囲の光景は既にそれまでの荒れ地のような場所から大きく変化している。

 道は大理石のタイルが奇麗に張られたもので、壁に沿って折れ曲がり、先は見えない。

 コンクリートか漆喰かは分からないが、立派な壁と天井が進路を塞ぎ、金属と木材を組み合わせた豪勢な扉が壁には付いている。

 で、壁際には大理石で作られているように見える柱が周囲には何本も立っている。

 全体としてまとめると、白を基調とした巨大建造物の中に入ってしまったようだった。

 言うまでもなく、そんな建物に入った覚えなどない訳だが。


「まずは鑑定っと」

 では、この場が何処なのか、調べてみるとしよう。



△△△△△

宝物庫の悪夢-外縁


数多の宝物が収められた立派な倉庫。

入るばかりで出て行く事が殆どない倉庫は何かを恐れ始めた。

恐れた倉庫は入ってくるもの同士をぶつけてみる事にした。


呪詛濃度:12

[座標コード]

▽▽▽▽▽



『たるうぃ。化身ゴーレムがこちらに着くまでにはそれなりに時間がかかるでチュ。突然のダンジョン突入だったことも考えると、同じ場所に出られるかは怪しいでチュが』

「まあ、厳しいんじゃないかしら。このフレーバーテキストからして、ランダム転移ぐらいの要素はありそうよ」

 なるほど、ある意味では此処からがイベントの本番か。

 この宝物庫の悪夢の中を移動していき、アイテムを探し出し、入手しろと言う事であるらしい。

 そして、そんな場所であるからこそ、プレイヤー同士をぶつけて、争わせる方向で動く、と。

 まあ、他のプレイヤーを倒さなければ脱出できないと言った仕掛けはないようだし、他のプレイヤーに遭遇しても、お互いに敵意がない事をきちんと示せば、穏当に終わる可能性はそれなりに高そうだが。


「んー、扉の先を確認しつつも、とりあえず奥に向かいましょうか」

『その心はなんでチュ?』

「幸福な造命呪が居るとしたら、ダンジョンではなく呪限無よ。そして、呪限無は呪いが濃い場所にあるもの。となれば、外縁を突破した先にそういう場所がある可能性が高い。後はそうね。こんなに呪いが薄い場所に私が気に入るようなアイテムがあるとは思えないわ。確認はするけど」

『前者も後者も否定できないでチュねぇ』

 では、探索開始。

 なお、不意打ちに備えて、『毒の邪眼・3(タルウィベーノ)』のチャージはしっかりとしておく。


「うん、やっぱり、まだまだね」

『でチュねぇ』

 まずは一番手近な場所にあった扉を開けてみる。

 中にあったのは……なんか普通のモンスターの骨と鉄を使って作りましたと言う感じの剣が数本、飾られていた。

 鑑定を一応してみたが、レベル20にも満たず、特殊な能力もなければ、干渉力も普通。

 うん、本当に普通の武器だ。

 私が回収する必要はないので、放置して通路に戻る。


「奥は……こっちね」

『地味に久しぶりに使う技術でチュねぇ』

「それを言うなら、きちんと探索するべきダンジョンに潜るの自体が久しぶりなのよね。ここ最近は『虹霓鏡宮の呪界』以外には数えるぐらいしか出ていなくて、『虹霓鏡宮の呪界』は探索よりも戦闘が中心のダンジョンだから」

『言われてみればそうでチュねぇ……』

 私は呪詛が濃い方向に向かって移動を始める。

 そして、扉を見つける度に開けて、中を一応確認しておくが、これと言ったアイテムはなかった。


「うーん、外縁を抜けるまで扉と言うかアイテムは全無視もありかしら」

『かもしれないでチュねぇ。あ、ざりちゅももうじき突入できると思うでチュ』

「分かったわ」

 探索する事十数分、幾つかの分かれ道を通り過ぎ、扉やアイテムを見つける度に確認をしているが、やはり私が気に入るアイテムは見当たらない。

 目録にはそれなりの数の美術品が載っていた気がするのだが、そう言うのは多少奥にあるのだろうか?

 ちなみにだが、これまでにモンスター、プレイヤー、どちらにも遭遇していない。

 アイテムを取るまで出現しないようになっているのだろうか?


「ん? これはちょっと面白いわね」

 私はこれで気に入るものが無ければ、以降は暫く扉を無視して進もう、そんな気持ちを持ちながら扉を開けた。

 そして、興味深い物が見えた。


『ジョウロでチュか。でも見た目は実用品というより美術品な感じでチュね』

「でも中身もしっかりしているわ。腐食耐性と言うか、酸やアルカリ、その他危険な液体であっても、液体であるなら入れても大丈夫みたい」

 私が見つけたのは、金属製のジョウロだ。

 それも、持ち手や胴などに様々な装飾……花や木々の模様が施されて美しく彩られると共に、中に入れるものが液体である限りは大抵のものは入れられるように呪われているジョウロである。

 金銀宝石の類による装飾ではないのでザッハーク的には低評価なのかもしれないが、実用性も伴っているし、個人的には高評価なアイテムである。

 うん、回収しておこう。

 と言う訳で、私はジョウロをドゴストに入れる。


「「「ーーーーー!」」」

「あ、こうなるのね」

『まあ、妥当な流れでチュね』

 と同時に、黒の全身タイツに仮面のような物を付け、両手に刃物を握った人型の何かが何処からともなく、私を囲うように三体出現した。

11/17誤字訂正

11/18誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] 防犯装置つきなのね でもなんか戦隊ものの雑魚敵みたいな見た目で弱そう
[良い点] 気になっていたイベント後半が開催されて、今後の展開がとても気になります! [気になる点] 今後、呪詛支配と転移を完全に把握すれば鎖の高速移動を意のままにできるようになるんでしょうか。こっっ…
[一言] >まあ、厳しいんじゃないかしら。このフレーバーテキストからして、ランダム転移ぐらいの要素はありそうよ 相変わらずというかタルさん分断への警戒度低すぎじゃないです? 初心者も参加してるイベント…
感想一覧
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