723:タルウィロウ-4
「で、結局たるうぃは何をやったんでチュ? あ、出来る限り簡単に説明をお願いするでチュ」
「そうねぇ」
『ダマーヴァンド』に帰還した私は竜の遺骨を手にしたまま、セーフティーエリアに戻る。
なお、帰り道にブラクロやストラスさんからは、どうやって竜の遺骨を回収したのかと聞かれたが、何処までが話しても大丈夫か分からない内容なので、禁則事項とだけ返している。
で、ザリチュの質問に対する答えとしてはだ。
「私と言う世界を定義し、その世界に不要なものを排すると共に侵入を阻止するようにした。と言うところかしらね」
「簡単にって言ったじゃないでチュかぁ……」
「いや、これでもかなり簡単に言った方よ。これで駄目なら……呪いを動かして、私にとって不都合なものは私に干渉できないようにした。と言うところかしら」
「何をしているのかは理解できたでチュけど、どうしてそれが出来るかが理解できないでチュよ……」
ああ言えばこう言う、とでも言えばいいのだろうか?
うんまあ、私自身もそういう物であると理解し、感覚的に出来ているだけで、理論的にどうしているのかと問われたら困るので、これ以上の問答は無しにしておくとしよう。
「別に理解出来なくていいわ。重要なのは、これが出来ないと邪火太夫や屋敷巨人のカースには絶対に勝てないと言う事。攻撃にしろ防御にしろ、これが出来る相手に対しては、同じことが出来ないと一方的にやられるだけになるわ」
「でチュかぁ」
さて、それでは持ち帰った竜の遺骨を加工するとしよう。
えーと、サイズ的には私の肘から手首ぐらいで、私が作ろうとしているものを考えると、ちょっと大きすぎるか。
よし、一度砕いてから焼き固めるか。
「ん? でも、アレでチュね。たるうぃにとって不都合なものからの干渉を防ぐと言うのは……たるうぃ的には微妙なんじゃないでチュか?」
「ものすごく微妙よ。だから、練習を除くと、無いと勝負にならない戦闘以外で使う気はないわ」
「でっチュよねー。たるうぃにとって不都合なものと未知なるものは紙一重でチュもんね」
「そういう事ね。まあ、重要そうなものが色々と裏で削られていそうというリスクの面もあるけどね」
と言う訳で、私は呪いが飛び散らないように注意しつつ、竜の遺骨を粉になるまで砕いていく。
そして、砕けたものに『ダマーヴァンド』の毒液や暗梟の竜呪の油塊と言った幾つかの素材を混ぜ合わせ、粘土のように捏ね上げ、成形していく。
「で、たるうぃが今作っているのが練習用のアイテムでチュか?」
「ええそうよ。意思がないからか、周囲へ問答無用に呪いをばら撒く事しか出来ない様だし、強度も大したことはないようだけど、竜の遺骨も邪火太夫たちと同じような力を持っている。だから、これからの影響を防ぎつつ、逆に浸食して破壊……あるいは汚染出来れば、邪火太夫の攻撃を防ぎつつ、こちらからの攻撃を通せるようになる。はずよ」
「筈でチュかぁ」
「筈なのよねぇ」
「まあ、相手のスペックを考えたら仕方がないでチュね」
「偽神呪そのものでないとは言え、実力が桁違いすぎるものね」
はい、成形完了。
それから『灼熱の邪眼・3』、『暗闇の邪眼・3』で焼き固める。
で、呪怨台に乗せる。
「『沈黙の邪眼・3』」
あ、今更の話だが、『呪法・貫通槍』の強制付与。
アレはもしかしたら、この段階の呪詛支配の萌芽だったのかもしれない。
効果そのものは大幅に減衰するとは言え、ほぼあらゆる耐性を無視すると言うのは、私にとって不都合なものを排除すると言う今の呪詛支配に通じていると言える。
「さて鑑定っと」
では、出来上がったアイテム……私を害するものとして、月と水を模した図形を組み合わせたチャームが付いたピアスを鑑定してみる。
△△△△△
水月の竜骨耳飾り
レベル:45
耐久度:100/100
干渉力:150
浸食率:100/100
異形度:1
竜の遺骨を加工し、月と水をモチーフとした形にしたピアス。
彼らが抱く怨みは形を変えても変わらずであり、着用者が音を立てる度に害を為そうとする。
しかし、信じがたい事に、このピアスは作成者にとってはとある行為の訓練用である。
注意:レベル35以下のものが長時間、直接手にしていると、魅了(100)が付与される。
注意:異形度19以下のものが長時間、直接手にしていると、ランダムな呪いを1つ恒常的に得て、異形度が1上昇します。
注意:着用者が一定音量以上の音を発すると、被ダメージ増加、防御力低下、不意打ち耐性低下のいずれかの状態異常を受ける。
▽▽▽▽▽
「問題ないわね」
「まあ、たるうぃの目的には沿っているでチュね」
私は早速、水月の竜骨耳飾りを左耳に着用する。
とは言え、ザリチュに付いているシェードの関係上、その姿を見るのはよほどのローアングル限定になりそうだが。
「テステス。うん、しっかり状態異常はくるし……意識すれば防げるわね」
「でチュかー」
効果の確認も完了。
呪詛支配……いや、呪憲の施行さえしっかりとしておけば、防ぐことも問題なし。
「こちらからの浸食は……っう、流石にキツイわね」
「まあ、相手のがレベルが高いでチュからねぇ」
しかし、こちらから攻め込もうとしたら、体の各所の血管が弾け飛ぶような感覚を覚えると共に、HPが3割近く吹き飛んだ。
そう簡単には訓練完了とはいかないようだ。
「明日のイベント中にどれぐらい訓練できるか、かしらね」
「始める前からイベントの目的が変わってしまったでチュねぇ……」
「そんなものよ」
「まあ、分からなくはないでチュ」
まあ、そうでなければやり甲斐がないというもの。
明日からのイベントは現実世界では数時間だが、ゲーム内では五日間かかるもの、これを利用して、一気に鍛えさせてもらうとしよう。
△△△△△
『虹霓竜瞳の不老不死呪』・タル レベル40
HP:2,875/4,170 (-1251)
満腹度:22/150 (-45)
干渉力:139
異形度:26
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪憲・瘴熱満ちる宇宙、遍在する内臓、劣竜式呪詛構造体(劣竜血、劣竜骨髄、劣竜肉、劣竜瞳、劣竜皮)
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の王』、『灼熱の達人』、『沈黙の名手』、『出血の達人』、『淀縛使い』、『恐怖の達人』、『小人使い』、『暗闇使い』、『乾燥使い』、『魅了使い』、『重力使い(増)』、『石化使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『3rdナイトメアメダル-赤』、『七つの大呪に並ぶもの』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『竜狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『偽神呪との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹霓竜瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』、『雪山侵入許可証』、『海侵入許可証』、『いずれも選ばなかったもの』、『呪海渡りの呪人』、『泡沫の世界の探索者』、『確立者』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・3』、『灼熱の邪眼・3』、『気絶の邪眼・3』、『沈黙の邪眼・3』、『出血の邪眼・2』、『小人の邪眼・2』、『淀縛の邪眼・2』、『深淵の邪眼・3』、『飢渇の邪眼・2』、『暗闇の邪眼・3』、『魅了の邪眼・1』、『石化の邪眼・2』、『重石の邪眼・2』、『禁忌・虹色の狂眼』
呪術・原始呪術:
『不老不死-活性』、『不老不死-抑制』、『風化-活性』、『風化-抑制』、『転写-活性』、『蠱毒-活性』、『再誕-活性』、『魔物-活性』、『反魂-活性』
呪術・渇砂操作術-ザリチュ:
『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』、『鼠』、『化身』、『噴毒の華塔呪』、『瘴弦の奏基呪』、『禁忌・虹色の狂創』
呪術-ジタツニ:
『砂漠の呪い』、『抗体の呪い』
呪術-ネツミテ:
『太陽の呪い』、『熱波の呪い』、『埋葬の鎖』
呪術-ドロシヒ:
『虚像の呪い』、『貯蓄の呪い』
呪術-ドゴスト:
『竜息の呪い』、『竜活の呪い』、『埋葬の鎖』
呪法:
『呪法・増幅剣』、『呪法・感染蔓』、『呪法・貫通槍』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・破壊星』、『呪法・呪宣言』、『呪法・極彩円』、『呪法・呪晶装填』、『呪法・逆残心』
所持アイテム:
『竜鱗渇鼠の騎帽呪』ザリチュ、『地憑きの羽衣呪』ジタツニ、『陽憑きの錫杖呪』ネツミテ、『星憑きの玉輪呪』ドロシヒ、『竜憑きの袋呪』ドゴスト、鼠毒の竜呪の歯短剣×2、解き拒みの指輪、鑑定のルーペ、フェアリースケルズ、蜻蛉呪の望遠鏡、『虹霓鏡宮の呪界』の鏡扉除け、水月の竜骨耳飾り、etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール、呪詛貯蓄ツール×5設置、『熱樹渇泥の呪界』・『入子屋敷の呪地』・『塩砂湖畔の呪地』接続済み
システム強化
呪怨台参式・呪詛の枝、BGM再生機能、回復の水-2、結界扉-2、セーフティ-2、長期保管用カプセル、『満腹の竜豆呪』ハオマ
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