714:タルウィチャム・3・2nd-1
本日のみ二話更新となっております。
こちらは一話目です。
「さて挑みましょうか」
「協力した私が言う事じゃないですけど、やる気満々ですね。タルさん」
「助かったでチュよ。シロホワ」
シロホワの協力も得て各種準備を終えた私は、掲示板にこれから挑むと言う書き込みをする。
いやぁ、流石に『噴毒の華塔呪』と『瘴弦の奏基呪』を短時間で13体ずつ作成してドゴストに収めるのは無理があったので、シロホワの協力はありがたかった。
邪火太夫との戦いの勝敗に関わらず、シロホワには試練後にお礼をしておこう。
「では」
私は呪術『魅了の邪眼・3』のスープを飲む。
すると前回と同じように私と化身ゴーレムの周囲に格子が出現し、地面の中へと沈んでいく。
また、私たちが沈み始めると同時にシロホワや、周囲に居た他のプレイヤーたちの前に半透明の画面が出現し、画面が消えると同時に格子が伸びていくのが見えた。
「到着っと」
「邪火太夫は……まだ出現していないようでチュね」
やがていつもの闘技場に到着。
邪火太夫の姿はザリチュが確認した通りまだない。
「アレについてはマッチング終了後に貴様が望んだタイミングで指定した場所に出現させるから、安心しろ」
「あら、そうなると事前準備を好きなだけ積んでもいい感じかしら?」
シロホワたちが到着し始める。
そして、周囲を確認し、戦闘が始まっていない事を確認すると、私たちの方に近寄ってくる。
見た限りでは、前回から3分の1くらいのプレイヤーが入れ替わった感じだろうか?
とりあえず、ストラスさん、ライトローズさん、エギアズ・1の三人は居るので、基本的な指揮はこの三人に任せていいだろう。
「くくく、構わんぞ。アレはその後が楽しいなら、多少待たされても文句は言わないからな。むしろ全力でやっておけ。私が許す」
「ふふふ、分かったわ。だったら、この闘技場を壊滅させるぐらいのつもりで準備をさせてもらうわ」
「それでいい。この闘技場は貴様が全力を出した程度で壊れるような柔な作りではないから、安心して初撃で決着させるつもりで撃て」
「あ、酷い事になるでチュね。これは……」
が、その三人含めて誰もが途中で歩みを止め、何故か揃って身を強張らせている。
一体どうしたと言うのだろうか?
まあいいか。
「さて、話は聞いたわね。今回は事前準備は好きなだけしていいそうだから、私の初撃が終わった直後に全員で畳みかけられるように準備をしましょうか」
「「「お、おー……」」」
今は準備を進めるべきだ。
と言う訳で、新顔と情報の擦り合わせをすると共に、作戦の立案、効果時間の長いバフの準備、事前準備が必要な諸々の用意をしていく。
そして私も行動開始。
「まずは『噴毒の華塔呪』を置いてっと」
「これが例の……」
「こうして並べると壁みたいだな」
「いや、実際壁として使ってくれと言う事なんだろう」
「まあ、見るからに頑丈そうだもんな」
最初に邪火太夫が出てくる場所を中心として、少し離れた場所に5:5:3の分け方で『噴毒の華塔呪』を置いていく。
その際、一まとまりの『噴毒の華塔呪』たちの隙間は出来るだけ詰めて、壁として使えるようにしておく。
それと、設置した『噴毒の華塔呪』たちは直ぐに成長を始めさせ、どれもビームを放てる能力と堅さを両立しつつ、高さ4メートルになる程度にまで伸ばしておく。
「次に『瘴弦の奏基呪』を出してっと」
「蜘蛛!? あ、これもゴーレムなのか……」
「演奏の蠍呪……うっ、頭が……」
「味方なら心強いから安心していいと思うぞ」
続けて『瘴弦の奏基呪』13体をドゴストから取り出し、ばらけさせていく。
なお、『瘴弦の奏基呪』の背中のポッドにセットされている楽器は、竜狩る瘴熱の洋琵琶だけでなく別の楽器もある。
「演奏効果はメインは精神系状態異常の回復と呪詛濃度過多の無効化、サブにしてもバフ系統でまとめて、対象は味方だけでいいでチュよね?」
「構わないわ。ああそれと、可能なら演奏は0.4秒ずつずらして開始し、演奏効果の発揮するタイミングもずらして」
「心配しなくてもそこは事前の調整でやってあるでチュよ」
「なら問題ないわね」
これでおおよそ0.4秒ごとに魅了が50前後は回復できるはずなので、邪火太夫の直接接触による魅了以外は問題なく解除出来るはずだ。
「さて、準備は完了か?」
「……」
私は『悪創の偽神呪』の言葉に少しだけ考える。
アレを使うべきか否か、少しだけ迷ったのだ。
なにせ、アレのリスクは他の諸々のリスクとは比較にならない程に重いのだし。
「いいえ、まだやるべき準備があるわね」
「ほう、そうか」
少し迷った結果、私はそれを使う事にした。
「タル様?」
「えーと、何をするつもりですか?」
「あ、やらかすです。熊ですには分かったです」
「コケェコォ、楽しみだな。これは」
効果時間は……20分と少し。
そんな長い時間、邪火太夫相手に戦えるとは思えない。
そうでなくとも、ここまで安全にバフを積み、状況を整えて攻撃を撃ち込めるのは最初の一撃のみ。
であれば、此処で切るのが、一番勝ちに繋がる可能性が高い、はずだ。
「直に戦闘が始まるから、全員構えておいて」
「「「了解!」」」
では使おう。
「『竜活の呪い』-暗梟の竜呪の骨」
私の言葉と共に『竜憑きの袋呪』ドゴストが有する呪術が発動した。