698:タルウィセーレ・3-7
「くくくっ、見事だ。『虹霓竜瞳の不老不死呪』タル、『竜狩りの呪人』レライエ。最後などもはやどちらが人か分からないような戦いだったが、中々に見応えのあるものだったぞ」
「どちらが人かって……この場で人はレライエだけじゃない」
「……」
『悪創の偽神呪』が姿を現わす。
なお、兎ドラゴンの死体は既に消え去っている。
「おっと、そうだったな。まあ、私から見れば、貴様もまだ人の域に居ると言う事だ。『虹霓竜瞳の不老不死呪』タル。他の連中よりつま先ぐらいはこちら側に近いかもしれんがな」
「ふうん」
「……。カースでもまだ人、か」
『悪創の偽神呪』の言葉は……それだけ人と偽りと言えど神を名乗れる呪いとの間には差があると言う事か。
まあ、ゲームのシステム制御に関わっていると言うか、実際の運用をしているのであろう偽神呪と、一介のプレイヤー、モンスター、カースの間にそれほどの差があるのは自然と言うか、むしろ当然のことと言えるが。
「では、試練についてはこれで終わりとしよう。『竜狩りの呪人』レライエ、私が貴様への報酬にかけていた制限も、現時点を以って解除としよう」
「……。分かった」
「次も愉快なものを見せてくれることを楽しみにしているぞ」
「期待に沿えるかはそちらが用意する相手次第だと返しておくわ」
≪呪術『沈黙の邪眼・3』を習得しました≫
≪タルのレベルが41に上がった≫
そうして私とレライエは元の世界に戻され、検証班の前に現れた。
「あ、戻ってきた。時間は……10秒ちょっとか」
「録画停止。結構面白い映像になってるな」
「あ、タル様。こちら、タル様が試練を開始してから戻ってくるまでのこちら側での映像になります」
「ありがとうストラスさん。気になっていたから助かるわ」
「……。試練そのものの映像はこっちだ」
とりあえずストラスさんたちから動画を受け取って見てみる。
なるほど、傍目にはこんな感じに地面に飲み込まれて、試練終了後に戻ってくるように見えるのか……。
こう、クカタチが地面に染み込んだ後に、人の形を取りつつ出て来るような感じになっている。
「『沈黙の邪眼・3』の確認もするでチュよー」
「分かってるわ」
では、『沈黙の邪眼・3』の性能確認。
△△△△△
『沈黙の邪眼・3』
レベル:45
干渉力:140
CT:5s-5s
トリガー:[詠唱キー][動作キー]
効果:対象周囲の呪詛濃度×2+1の沈黙を与える
伏呪
トリガー:[詠唱キー]
効果:『呪法・増幅剣』を用いた状態で、対象の喉を狙い、与えた沈黙のスタック値が1,000を超える場合に発動、戦闘不能状態を付与する事がある。
この効果は対象に与えた沈黙のスタック値が多い程、成功確率が上昇する。
貴方の目から放たれる呪いは、敵がどれほど堅い守りに身を包んでいても関係ない。
全ての守りは破れずとも、相手の守りの内に直接静寂を生じさせるのだから。
そして、究極の静寂は月をも飲み込む死と共に。
注意:使用する度に自身周囲の呪詛濃度×1のダメージを受ける(MAX10ダメージ)。
注意:伏呪使用時にはダメージの上限値がなくなる。
注意:伏呪使用時にはCTが5s-60sに変化する。
注意:伏呪の効果が発動した時、戦闘不能状態の付与に成功したかに関わらず、判定終了後に対象の沈黙のスタック値は10まで減る。
注意:レベル不足のため、戦闘不能の付与に成功する確率が下がる。
▽▽▽▽▽
「ふうん……」
「即死付与ですが……これって意味はあるんですかね?」
「確かに普通の人間だと、このスタック値の沈黙を受けた時点で死亡確定でチュね」
伏呪使用時の詠唱キーは『沈黙の邪眼・3』。
流石に即死効果だけあって、制限やデメリットはキツイ。
で、意味があるかについて言うならばだ。
「意味ならあるわね。沈黙の回復手段持ちはそれなりにいるはずだし、モンスターだとこの程度では重症化しない種類も結構いるはずだから」
「なるほど。そういう使い方ですか」
「対人ではなく対モンスター、対カース向けなんでチュね」
と言う訳で、意味はちゃんとある。
恐ろしくタフだが、即死なら簡単に倒せる敵だって何処かには居るだろうし、無駄になる事はまずないだろう。
「「「……」」」
と、ここでレライエが提出した兎ドラゴンとの戦闘動画を見ていた検証班たちが信じられないようなものを見る目をこちらに向けてくる。
何を言われるかの予想はある程度付くが……言わせてみようか。
「はい、感想タイムです。お好きな感想をどうぞ」
「打ち合わせ通りだけど、タイミングが絶妙過ぎる」
「あの連携攻撃を受けて死んでないとか、兎みたいな見た目に反してタフ過ぎない?」
「煙幕の考察当たった。ヤッター!」
「動き速すぎて、動画でもまるで追えない。ナンダコレ」
「動画なのに変な声出たし、強制ログアウト喰らうかと思った」
「刃が伸びるとか怖すぎる。えっ、俺らもこれと戦うんですか? ヤダー」
「と言うか全体的にホラー案件。怖いなんて次元じゃない」
「すり抜け矢を実戦で使いこなせる人とか居たんですね」
「で、色々と感想を言ったわけだけどさ。最終的な感想としてはこれだよね」
「「「ドラゴンブレスを吐くとか、いよいよ人間辞めたな。コイツ」」」
「でっチュよねー! チュアアアァァァッ!? ちょっ、どうしてそこで捻り抓りをざりちゅにいいぃぃ!?」
とりあえずザリチュは抓っておいた。
事実である事や、私自身もそう思っていても、言っていい事と悪い事があるのだ。
と言うかザリチュにはこの程度で私が人間を辞めたとか言ってほしくない。
アレも知っているわけだし。
「ちなみに『悪創の偽神呪』に言わせれば、私はまだ人らしいわよ」
「「「えええぇぇぇ……」」」
「いや、それは色々とおかしいと思うでチュよ……」
そして、『悪創の偽神呪』の領域は更に遠い、と。
「……。さて、沈黙の眼宮の方も確かめないといけないな」
「そうね。そっちも確かめに行きましょうか」
「ザリア様たちへの連絡、予習用の動画投稿は済んでいますので、行ってみましょうか」
では、『沈黙の眼宮』に挑んでみるとしよう。
ぶっちゃけ嫌な予感しか既にしないのが本音だが。
△△△△△
『虹霓竜瞳の不老不死呪』・タル レベル41
HP:2,921/4,200 (-1251)
満腹度:22/150 (-45)
干渉力:140
異形度:26
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪憲・瘴熱満ちる宇宙、遍在する内臓、劣竜式呪詛構造体(劣竜血、劣竜骨髄、劣竜肉、劣竜瞳、劣竜皮)
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の王』、『灼熱の達人』、『沈黙の名手』、『出血の達人』、『淀縛使い』、『恐怖の達人』、『小人使い』、『暗闇使い』、『乾燥使い』、『魅了使い』、『重力使い(増)』、『石化使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『3rdナイトメアメダル-赤』、『七つの大呪に並ぶもの』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『竜狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『偽神呪との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹霓竜瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』、『雪山侵入許可証』、『海侵入許可証』、『いずれも選ばなかったもの』、『呪海渡りの呪人』、『泡沫の世界の探索者』、『確立者』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・3』、『灼熱の邪眼・3』、『気絶の邪眼・3』、『沈黙の邪眼・3』、『出血の邪眼・2』、『小人の邪眼・2』、『淀縛の邪眼・2』、『深淵の邪眼・3』、『飢渇の邪眼・2』、『暗闇の邪眼・3』、『魅了の邪眼・1』、『石化の邪眼・2』、『重石の邪眼・2』、『禁忌・虹色の狂眼』
呪術・原始呪術:
『不老不死-活性』、『不老不死-抑制』、『風化-活性』、『風化-抑制』、『転写-活性』、『蠱毒-活性』、『再誕-活性』、『魔物-活性』、『反魂-活性』
呪術・渇砂操作術-ザリチュ:
『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』、『鼠』、『化身』、『噴毒の華塔呪』、『禁忌・虹色の狂創』
呪術-ジタツニ:
『砂漠の呪い』、『抗体の呪い』
呪術-ネツミテ:
『太陽の呪い』、『熱波の呪い』、『埋葬の鎖』
呪術-ドロシヒ:
『虚像の呪い』、『貯蓄の呪い』
呪術-ドゴスト:
『竜息の呪い』、『竜活の呪い』、『埋葬の鎖』
呪法:
『呪法・増幅剣』、『呪法・感染蔓』、『呪法・貫通槍』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・破壊星』、『呪法・呪宣言』、『呪法・極彩円』、『呪法・呪晶装填』、『呪法・逆残心』
所持アイテム:
『竜鱗渇鼠の騎帽呪』ザリチュ、『地憑きの羽衣呪』ジタツニ、『陽憑きの錫杖呪』ネツミテ、『星憑きの玉輪呪』ドロシヒ、『竜憑きの袋呪』ドゴスト、鼠毒の竜呪の歯短剣×2、解き拒みの指輪、鑑定のルーペ、フェアリースケルズ、蜻蛉呪の望遠鏡、『虹霓鏡宮の呪界』の鏡扉除け、etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール、呪詛貯蓄ツール×5設置、『熱樹渇泥の呪界』・『入子屋敷の呪地』・『塩砂湖畔の呪地』接続済み
システム強化
呪怨台参式・呪詛の枝、BGM再生機能、回復の水-2、結界扉-2、セーフティ-2、長期保管用カプセル、『満腹の竜豆呪』ハオマ
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