684:アップグレード-4
「じゃあ、適当に試していきましょうか」
「でチュね」
「「「ベゴッポベゴッポ!」」」
「「「メギャアアアァァァッ!」」」
接近できないし、このままだと干からびてしまう。
そう判断したのか恐羊の竜呪が私たちに向けて遠距離攻撃を開始する。
が、この距離ならば回避は難しくないので、私も化身ゴーレムも普通に避け、噴毒の華塔呪も純粋な防御力で耐えた。
では、反撃も兼ねて試運転と行こう。
「『竜息の呪い』……だけじゃ駄目なのか。えーと、『竜息の呪い』-ドゴスト-ズワムの鱗……発射ぁ!」
どうやら『竜息の呪い』の詠唱キーはかなり独特なものになるようだ。
初回だからなのか、わざわざ使い方がメッセージウィンドウを開いて出てきた。
では、ウィンドウに従って改めて実践。
私はドゴストの口を恐羊の竜呪の方に向けると、『竜息の呪い』を射出方法は1番、射出物はさっき大量に手に入れたズワムの鱗で放った。
するとドゴストの口から弾丸のようなスピードでズワムの鱗が一直線に射出され……
「メギャアッ!?」
「おおっ……」
「結構威力があるでチュねぇ……」
恐羊の竜呪の首の一本を引き裂きつつ、胴体に深々と突き刺さった。
まるで大砲か何かのようだが、反動らしい反動を感じなかったのを考えると、近代の無反動砲の方が近いだろうか?
私は軍事方面にはそれほど詳しくないので、直感的にそう感じただけだが。
「ズワムの鱗の異形度は15だから、15秒は回避ね」
「あの威力で15秒なら破格でチュねぇ」
では次に行ってみよう。
と言う訳で、ネツミテを指輪形態から錫杖形態に変更する。
「『竜息の呪い』-ネツミテ-ズワムの鱗……発射ぁ!」
続けて射出方法2……ネツミテの動きに合わせる形でズワムの鱗を放ってみた。
ネツミテの軌道は振り下ろし、私の感覚としてはネツミテを腕の延長として、ボーラを投げつけるような感じだ。
「メギャ?」
「あー……」
「これは堅いだけの物質じゃ駄目でチュね」
結果は、ズワムの鱗は回転しつつ放たれ、苦痛に喘ぐ恐羊の竜呪の胴体に当たった。
だが先ほどと違ってダメージは与えられず、ズワムの鱗は跳ね返され、その場で転がるだけだった。
まあ、所詮は人力で投げているような物、砲弾のように射出している射出方法1とは速さの桁が文字通りに違うだろうから、これは当然の結果なのだろう。
「ボーラ、黒バクチクの実、瓶入りの毒薬のように相手に当てること自体が重要な物か、眼球ゴーレムのように手早く数を揃える必要がある物か……あるいは、とにかく重くて単純な質量兵器として用いれる物。この辺が2番で投げるのに良さそうな物かしら」
「だと思うでチュよ。1番との差を生かすなら、着弾時に壊れる方が都合がいい物も、入ってくると思うでチュ」
私はネツミテを指輪形態に戻す。
まあ、射出方法2については、投げるものを考えて使えば、使い道は幾らでもありそうだ。
使用後CTの短さと言う分かり易いメリットだってある訳だし。
「じゃあ3番行くわよ」
「分かったでチュ」
では、『竜息の呪い』射出方法3、私の口からだ。
「『竜息の呪い』-タル-ズワムの鱗……発射ぁ!」
詠唱完了と同時に私の口の前にズワムの鱗が粉々に粉砕された形で出現する。
そして出現した鱗は私の口の中から湧き出るような呪詛の奔流に押されて、高速かつ拡散しつつ放たれ……離れた場所に居る恐羊の竜呪の体に届くことなく霧散した。
成果は私から少し離れた場所の地表を覆っていた砂を吹き飛ばしただけである。
「「……」」
「「「メメメメメ……」」」
私とザリチュは情けない結果に思わず黙る。
恐羊の竜呪は次の攻撃の準備を始めている。
「pmal『暗闇の邪眼・3』!」
「「「メギャアアアァァァッ!?」」」
「八つ当たりファイヤーでチュアアァァッ!?」
とりあえず呪法マシマシ伏呪付き『暗闇の邪眼・3』で恐羊の竜呪は始末して、ザリチュは抓っておく。
「抓るわよ」
「もう抓っているでチュよ!」
「抓ったわよ」
「過去形でチュが、現在進行形でチュよ!!」
さて、どうしてこうなったのかを考えなくてはいけない。
と言う訳で、ザリチュを抓るのはここまでにしておく。
「射出方法3は射出物の選択を考える必要もある。だけど、それに加えて『熱波の呪い』の使用も必要そうね」
「まあ、見るからに火力不足と言う感じだったでチュからねぇ」
恐羊の竜呪の死体は回収しておく。
使い道は幾らでもあるからだ。
「後はそうね……」
合わせて射出方法3での『竜息の呪い』の使い方も考えるが……とりあえず『熱波の呪い』の使用は確定、同時に呪詛の奔流の制御をする事も確定、専用の射出物の用意も考えていいだろう。
後は……仕様通りなら、他にも色々と組み合わせることが出来るものもあるだろう。
うん、とりあえず一つ思いついたので、後で準備はしておこう。
「これで残るはたるうぃ曰く問題児の臭いがする『竜活の呪い』でチュね」
「ええそうよ。試すなら……折角だしこれもズワムの鱗でいいわね。急に強化され過ぎても危険でしょうし」
「妥当だと思うでチュ」
その後、私はセーフティーエリアに戻って『竜活の呪い』をズワムの鱗を対価に使ってみた。
敢えてこの場では詳細を省く。
ただ、感想を幾らか述べるならばだ。
「ヤバいわね。これ」
「ヤバいでチュね。これ」
『竜活の呪い』は問題児ではなく大問題児であり、禁忌呪術……『禁忌・虹色の狂眼』と『禁忌・虹色の狂創』と並べてもそこまで遜色がないトンデモ。
完全に切り札として用いるべき呪術の類だった。
と言う事ぐらいだろうか。
そうして、この日の強化と確認は終わった。
『竜活の呪い』お披露目はしかるべき時にです。




