678:スティールモスドラゴン-7
「じゃあまずは確認ね」
私たちが解体と鑑定を始めると言う事で、他のプレイヤーたちもこちらに視線を向ける。
そして、何時何が起きてもいいように態勢を整える。
うん、妥当な行動だと思う。
「一つ目、竜の遺骨」
私はドゴストから竜の遺骨を取り出すと、『鑑定のルーペ』を向けてみる。
△△△△△
竜の遺骨
レベル:45
耐久度:87/100
干渉力:150
浸食率:100/100
異形度:1
竜と呼ばれる生物の骨。
彼らが抱く怨みは骨の髄にまで染み込んでおり、大量に集めれば、その呪いは周囲の空間、無関係の呪いにも影響を与える事だろう。
その強烈な力は手にする者を魅了し、無謀な試みへと駆り立てるに違いない。
余談だが、竜と呼ばれる生物が実在したという証拠は地上には存在していない。
注意:レベル35以下のものが長時間、直接手にしていると、魅了(100)が付与される。
注意:異形度19以下のものが長時間、直接手にしていると、ランダムな呪いを1つ恒常的に得て、異形度が1上昇します。
注意:一定本数以上が一か所に集まると、周囲の空間に異常が生じる。
▽▽▽▽▽
「ほー」
「なるほど。これが大量に集まって竜骨塔になると、変な現象が起きるんでチュね」
「余談が微妙に不穏ね……」
「後、魅了効果と異形度上昇も怖いな。特に後者」
「だな」
んー、私が使うなら、鍋で煮込んで『魅了の邪眼・1』の強化素材だろうか。
スパイスに竜骨出汁……具材が足りないか。
「じゃあ次行くわよ。スケルトン化した収奪の苔竜呪」
では次、スケルトン化して、繊維だけになった収奪の苔竜呪だ。
こちらは解体の必要はなく、そのまま使えば糸に、撚ったり織ったりすれば、他の用途にも使えるだろう。
肝心の鑑定結果はこんな感じ。
△△△△△
収奪の苔竜呪の骨繊維
レベル:45
耐久度:75/100
干渉力:150
浸食率:100/100
異形度:1
二度のアンデッド化を経て、最も堅い繊維だけが残った収奪の苔竜呪と呼ばれるカースの亡骸。
一見すれば柔らかく、手触りの良い糸だが、周囲の呪詛の濃度と状態に応じて強度が変化する。
通常、アンデッド化を経た素材は劣化が激しく、使い物にならない事が多いのだが、急速なアンデッド化と収奪の苔竜呪の特異性が合わさった結果として、この繊維は洗練され、死にまつわる力に至っては強化もされたようだ。
▽▽▽▽▽
「……」
「これ、偽装されてます?」
「されてるだろうなぁ……」
「でも、フレーバーテキストに嘘はなさそうだよね」
「だからこそ悪質だとも言えるが……」
「とりあえず今回は私がもらっておいていい?」
「構わないわ。情報なしにタル以外が扱うと怖い気がするし」
こう、なんだろうか?
色々とツッコミどころがある気がする。
まあ、私が使うならジタツニの強化だろう。
上手くいけば、即死耐性ぐらいは付くかもしれない。
ただ、注意して扱わないと……操り人形にされるか、ゾンビにされるか……何もないのに私たちが勝手に警戒している可能性もあるが、不穏な気配がどうしても拭えないのは事実である。
「あれ? と言いますか、これって地味に恐怖の眼宮限定の素材になるのでは?」
「そうだな。急速なアンデッド化を前提としているようだから、他の眼宮では駄目だと思う」
「そもそも他の眼宮や外じゃスケルトンなんて見もしないしな」
「後、二度のアンデッド化を経てとフレーバーにありますから、ゾンビ化時点で回収しても、別物になりそうですよね」
「……。気になるな」
「再出現……するんだろうか?」
「すると思うわ。超大型ボスの劣化版を用意するような運営だし、明らかに希少素材でもある。これで一度きりなんてしないでしょう」
なお、シロホワの言ったとおり、地味に恐怖の眼宮でしか回収できない素材でもある。
この調子で他の眼宮に居る収奪の苔竜呪にも、その眼宮でしか入手できない何かが存在するのだろうか?
んー、流石に怪しいか。
僅かに性質が違うくらいはあるかもだが。
「じゃあ、残りの素材行くわよー」
では次。
収奪の苔竜呪の死体と苔玉を取り出し、劣化やアンデッド化を防ぎつつ、解体を進めていく。
結果として死体からは、花弁、葉、蔓、竜頭柱頭の四種類のアイテムが、苔玉からは苔皮と核が入手できた。
鑑定結果はこんな感じ。
△△△△△
収奪の苔竜呪の花弁
レベル:45
耐久度:85/100
干渉力:150
浸食率:100/100
異形度:1
収奪の苔竜呪と呼ばれるカースが持つ肉厚で真っ赤な花弁。
周囲の呪詛濃度に応じて濃厚な臭いを発し、嗅いだものの正気を奪い取ろうとする。
見た目の柔らかさに反して、生半可な武器では傷跡すらつかないような強度を持つ。
▽▽▽▽▽
△△△△△
収奪の苔竜呪の葉
レベル:45
耐久度:97/100
干渉力:150
浸食率:100/100
異形度:1
収奪の苔竜呪と呼ばれるカースが持つシダの葉に似た部位であり、翼であると同時に手でもある。
周囲の呪詛を吸収して、自分の栄養にする性質を有する。
見た目の柔らかさに反して、葉一つでも金属の鎧を両断するような強度と鋭さを持つ。
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△△△△△
収奪の苔竜呪の蔓
レベル:45
耐久度:97/100
干渉力:150
浸食率:100/100
異形度:1
収奪の苔竜呪と呼ばれるカースの蔓状植物によく似た胴体部分。
周囲の呪詛濃度に応じて強度が向上する性質を有している。
繊維を取り出して適切に用いることが出来れば、布でありながら金属の刃を通さない事も可能だろう。
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収奪の苔竜呪の竜頭柱頭
レベル:46
耐久度:87/100
干渉力:150
浸食率:100/100
異形度:15
収奪の苔竜呪と呼ばれるカースの頭部であり、竜と呼ばれる生物のそれによく似ている。
己から放たれるものに、強く恐怖したものに死を与える呪いを付与することが可能。
また、噛みついた相手から何かを奪い取って、何処かへ送る事も可能なようだ。
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収奪の苔竜呪の苔皮
レベル:50
耐久度:76/100
干渉力:150
浸食率:100/100
異形度:1
収奪の苔竜呪と呼ばれるカースの本体を守る苔状の皮。
生半可な攻撃であれば、物理的なもの、熱、冷気、電気、浄化、呪詛、その他諸々あらゆる攻撃に対して極めて高い耐性を有していた。
だが、今となっては触れているものから情報を抜き取り、貯め込む事しか出来ないだろう。
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収奪の苔竜呪の核
レベル:50
耐久度:38/100
干渉力:150
浸食率:100/100
異形度:1
収奪の苔竜呪と呼ばれるカースの本体。
苔皮から得た情報を何処かへ送ると同時に、自身の身を守るために活用する。
現在は活動を完全に破壊されており、粉々に砕く事で、中に蓄えた大量の呪詛を得る以外の使い道はないだろう。
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「「「……」」」
鑑定結果に私以外の全員が唖然としているようだ。
まあ、その内復帰するだろうし、今はそれぞれの素材の使い道を考える。
えーと、花弁は『魅了の邪眼・1』の強化に使える。
葉と苔皮は保留。
蔓はジタツニ……については骨繊維のが良さそうだし、ドゴストの方だろうか。
竜頭柱頭は即死伏呪を狙えるだろう。
核は……DCにする以外に使い道はないと明言されてしまったような物か。
じゃあ早速核の方は砕いておこう。
うん、かなりの量の呪詛が『ダマーヴァンド』に補給されたようだ。
「じゃあ、ここら辺で今日は解散としましょうか。みんな、今日はご苦労様」
「「「お、お疲れさまでしたー」」」
と言う訳で、今日の所はこれで終わりとなった。
09/28誤字訂正