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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
10章:『虹霓鏡宮の呪界』
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672:スティールモスドラゴン-1

「以上が今日までに集められた収奪の苔竜呪についての基礎情報になります」

 現在地は『虹霓鏡宮の呪界』、恐怖の眼宮の前。

 集まっているプレイヤーの総数は私含めて51名。

 ザリチュの化身ゴーレムは使うアイテムの都合で居ないが、本体は私が被っているので、必要なら『噴毒の(カースゴレム・)華塔呪(ザリチュタレト)』などで支援する事は出来るはずだ。

 で、今はストラスさんが収奪の苔竜呪についての情報を他のプレイヤーに伝え終わったところである。


「ではタル様」

「分かったわ」

 私はドゴストから『虹霓竜瞳の不老不死呪』の呪詛薬・『抗怖苦薬』と言う名前が付いた薬を取り出す。

 見た目は紫色の液体の入った香水であり、この場で使えばプレイヤー全員を対象にする事が出来るはずだ。


「アレが幸福薬か」

「今のお前の言い方、別のものが思い浮かんで仕方がない言い方だったんだが」

「完璧な呪人は恐怖を覚えないんですね。分かります」

「呪人、恐怖とはなんですか? 意味は分かりませんが反逆的な響きを感じますね」

「おや、貴方は恐怖を知っているのですか? 恐怖を知ろうだなんて反逆的ですね」

「お待ちなさい。どうして貴方は恐怖が反逆的なものだと知っているのですか? 知ろう、と言う言い方をするだなんて、貴方は恐怖について知っているからこそ出る発言ではありませんか?」

「しまっ……」

「「「ZAP! ZAP! ZAP!」」」

「幸福は義務です。呪人、貴方は恐怖を感じますか?」

「反逆者は無事に排除されましたね」

「次のマルファスは恐怖を感じません。きっとそう」

「前の僕は恐怖を感じる反逆者でしたが、今回の僕は恐怖を感じない完璧な呪人です。どうか期待してください」

「ああ、恐怖の抵抗に失敗して、スタック値が1でも溜まるとHPが0になるってそう言う……」

「なお、此処までのやり取りについて、事前の打ち合わせが一切無かったことを此処に示しておく」

「と言うか皆、あのネタは知っているのね」

「まあ、有名なTRPGだからなぁ……」

「ちなみに初版は1984年らしいぞ」

「俺の生まれる前だぁ……」

「止めろ、その言葉は俺に効く」

「あの、そろそろネタの切り所を探した方がいいのでは?」

「おっ、そうだな」

「そうね。いい加減に話を戻しましょうか。これを使えば貴方たちは次の貴方たちになるか24時間経つまで恐怖を感じない完璧な呪人になります。ですので、この薬の効果がある間に、あのにっくき共産主義者である収奪の苔竜呪を討伐し、恐怖の眼宮のギミックを解除するのです。いいですね?」

「「「はい、タル様!!」」」

「タル様ぁ!?」

 はい、と言う訳でだ。

 ネタの切り所が分からなかったので、無理やりに断ち切って『抗怖苦薬』を使用。

 容器を中心に紫色の薄い霧が広がって、この場に居る全員に呪い『抗怖苦薬』を付与する。

 ちなみに『抗怖苦薬』のレシピは使用している香草の種類、処理の仕方、分量、入れる順まで含めて完全に記したものを掲示板に上げてあるので、私が作った物と同等になるかはともかく、同じような代物を他のプレイヤーが作る事は可能だろう。


「……」

「どうしたのよザリア?」

「いえ、ちょっとね」

『あ、ザリアからメッセージでチュ。ああなるほど……さっきの流れで思わずタルの本名を言いそうになったんでチュね』

 なお、恐怖の眼宮への突入直前、ザリアが何か言いたそうな顔をしていたが……ああうん、なるほど、私の本名はアルファベット表記だとUIなので、一文字違いか。

 まあ、お互いにスルーするべき案件か。


「「メエエェェゲエエェェニャアアァァッ!!」」

「おっ、本当に恐怖が効かないな」

「これは楽でいいなぁ」

「ふはははっ、狩りの時間だ!!」

 では完全に話を戻す。

 恐怖の眼宮に突入した私たちをまず待ち構えるのは『深淵の邪眼(タルウィテラー)・3(アビス)』の照射だが、これは念のためにシロホワが張ってくれたバフで無効。

 続けて現れるのが二体の恐羊の竜呪。

 出現時に恐怖とUI消失状態を付与する叫び声を放つが、恐怖については完璧にシャットアウトされ、全員無事だ。

 どうやら恐羊の竜呪が使う恐怖ぐらいなら、完全に防げるようだ。


「ふんっ!」

「せいっ!」

「とうっ!」

「「メギャアッ!?」」

 そうして戦いが始まる訳だが……。

 うん、全員の装備の更新が終わっている事もあって、圧倒的だ。

 ライトリやロックオのような重装備なら、虎絶の竜呪の鱗や恐羊の竜呪の角で全身を固めて、恐羊の竜呪の攻撃を真正面から受け止め、耐えている。

 スクナやブラクロのような近接物理組なら、各竜呪の牙や骨を利用した武器で的確に相手の体を切り裂いていく。

 シロホワのような後方支援組はUI消失状態を無効化した上で、牛陽の竜呪の皮や恐羊の竜呪の毛で織られたローブによって時折飛んでくる攻撃を防ぐ。

 私やクカタチも自分に出来る動きとして、相手にデバフを与えて、動きを鈍らせていく。

 そして、ストラスさんがトドメの一撃を放つと、恐羊の竜呪の死体はゾンビ化することなくそのまま消え去った。

 なんでも、条件は色々とあるらしいが、倒した相手を検証班共用の巨大ストレージに自動で送る呪術を、恐怖の眼宮のために新たに開発したらしい。


「よし、何の問題もないわね。それじゃあ、収奪の苔竜呪に向かって敵を処理しつつ進みましょうか」

「「「おうっ!」」」

 私たちは収奪の苔竜呪に向かってゆっくりと移動し始めた。

09/23誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[良い点] そう言えばそもそもこのゲームのプレイヤーって時点で同期の王道MMOじゃなくダークファンタジーチョイスするようなゲーマー集団だったわ そりゃこんなネタの塊には全力で乗っかるよねww 仮称U…
[一言] 実際この世界のNPCもしくはタルより低位のカースがタルを見たらUV様と同じ扱いしても仕方ないと思うwwww
[良い点] パラノイアネタに溢れた一話www こんなん読んだら笑うてしまうやんwww いいぞwもっとやれーwww [一言] 事前の打ち合わせ無しのアドリブで流れるようにネタをかます面々wwwwww …
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