668:メイクパレスアイテムズ-5
「さて状態は……」
私は数日前に仕込んだ、『ダマーヴァンド』の毒液と各種香草の混合物に恐羊の竜呪の肉を投入、放置したものの状態を確認する。
「完全に液体化しているでチュね」
「そうね。香草含めて固形物は一切なしになったみたい」
壺の中には紫色の液体が入っているだけだった。
恐羊の竜呪の肉どころか、各種香草も完全に溶け切ったようだ。
臭いは何処かのキビャックモドキと違って、僅かにいい香りが漂う程度。
味は……匙で僅かにすくって舐めてみたのだが、旨味成分の塊的な感じだろうか?
とりあえず、塩味、甘味、酸味、苦味、渋味ではない感じ。
なお、状態異常は勿論のこと、バフの類も私に入る事はなかった。
「ま、これならちゃんと加工すれば、いい感じになりそうね」
なんにせよ恐怖対策の素材としては問題なさそうだ。
「じゃ、最新の情報確認をしてから作るわよ」
「検証班たちは何処まで解明したんでチュかねぇ。まあ、暗闇の眼宮がまだなのは考えるまでもないでチュが」
では、収奪の苔竜呪についての情報収集を掲示板で先にしておこう。
検証班がこれまでに分かっている事をまとめてくれているはずだ。
で、調べた結果は?
・収奪の苔竜呪は各眼宮で竜骨の塔に絡みつく形で存在している。
・収奪の苔竜呪は各眼宮ごとに異なる能力を有している。
・具体的には、眼宮に対応した状態異常を含むブレスまたは咆哮を持ち、竜呪の能力の一部を持つ。
・対応した状態異常のスタック値が多大な状態で収奪の苔竜呪まで50メートルと言う距離に近づくと即死させられる。
・回数制、時間制の状態異常無効化は判定前に剥がされるので無意味。
・装備品やバフによる耐性上昇は有効。
・最初の一撃を凌げれば、その後は普通の戦闘のはずだが、普通に強い。
・デスペナは眼宮内で入手したアイテムの奪取、レベル低下、最大HP低下、干渉力低下の状態異常。
・余談だが、50メートル以上離れて攻撃をすると、攻撃したプレイヤーの周囲に短時間の無敵と思われるバフが付与された竜呪が複数体出現してタコ殴りにされるので、超遠距離型でも50メートルまでは近づく事。
との事だった。
なお、収奪の苔竜呪が眼宮ごとに持つ竜呪の能力の一部だが……、
・毒の眼宮では竜骨塔から複数体の収奪の苔竜呪が出現する。
・灼熱の眼宮では超再生。
・気絶の眼宮では特定タイミング以外での攻撃無効化と攻撃者の引き寄せ。
・恐怖の眼宮では若干防御力が高い程度。
との事。
うん、やはり恐怖の眼宮に出現する個体が最も倒しやすそうだ。
なので、私が作るのもやはり恐怖の状態異常対策でよさそうだ。
と言うか、他の眼宮の収奪の苔竜呪はこれ、どう倒せばいいのだろうか……まあ、いずれ倒す時が来た時に考えればいいか。
「んー……これを使いましょうか」
「早速でチュね」
では、恐怖の状態異常対策アイテムを作ろう。
と言う訳で、紫色の液体に暗梟の竜呪の油塊を削ったものを投入していく。
暗梟の竜呪の油塊は非常に安定した物体であり、油のくせに常温でも固体、加熱しても固体と言う物体だが、加熱しつつ他の液体に触れれば、流石に僅かずつ溶けて混ざりあうようにはなる。
そうして十分に混ざり合い、液体だけになったら、冷やす。
で、手持ちの竜呪の素材の余りで容器を作成し、十分に冷えたものをかき混ぜつつ容器に注ぎ込む。
「むんっ!」
そして呪怨台で呪う。
デメリットの度合いは制限せず、とにかく恐怖の状態異常を欠片も通さない事だけを目的とする。
それこそ、暗梟の竜呪が特定の条件を満たさない攻撃は一切通さなかったようにだ。
で、可能ならば同時に挑むメンバー全員に効果が行き届くようにもする。
そうして出来上がったのは、香水のような容器に入った液体だった。
「さて、どうなったかしらね?」
「対策になるといいでチュねぇ」
では鑑定。
△△△△△
『虹霓竜瞳の不老不死呪』の呪詛薬・『抗怖苦薬』
レベル:40
耐久度:100/100
干渉力:135
浸食率:100/100
異形度:19
『虹霓竜瞳の不老不死呪』が作り出した、恐怖を感じなくなるための呪詛薬。
この世の物とは思えない気配を漂わせており、普通の人間ならば目にしただけでも気を失いかねない。
呪人、貴方は恐怖を感じますか?
使用すると、使用者の周囲50m以内に居るプレイヤーが、呪い『抗怖苦薬』を一時的に取得し、異形度が1上昇する。この効果は使用から24時間経過するか、HPが0になるまで続く。
呪い『抗怖苦薬』:恐怖の状態異常に対する抵抗性を255上昇させる。しかし、恐怖の状態異常のスタック値が1以上溜まると、HPが0になる。
注意:効果範囲内に居るプレイヤーはリアル時間で24時間の間、『虹霓竜瞳の不老不死呪』の呪詛薬と付くアイテムを使用する事が出来なくなる。
注意:効果範囲内に居るプレイヤーがリアル時間で24時間の間、『虹霓竜瞳の不老不死呪』の呪詛薬と付くアイテムの効果を受けている場合、そのプレイヤーに対しては効果がない。
▽▽▽▽▽
「偏執病かな?」
「完璧で幸福な呪人は恐怖を感じないんでチュね。分かるでチュ。と言うかこれ、ざりちゅは対象外じゃないでチュか……」
「残念ながら化身ゴーレムはお留守番と言う事ね……」
ネタな名前でガチ性能の呪詛薬になってしまった気がする。
とりあえず掲示板にこういう薬が出来たという話を乗せて……うん、明日の午後に恐怖の眼宮に生息する収奪の苔竜呪に挑むことになりそうだ。
「で、抵抗性255ってどのくらいなんでチュ?」
「そうねぇ……ジタツニの気温に応じた状態異常の抵抗性は、摂氏の度数がそのまま回避確率になる感じみたいだけど……」
「つまり255なら絶対回避でチュか」
「相手がこちらの抵抗性を下げる能力を持っていたり、付与確率が100%以上だったりしなければ、絶対回避になるわね」
「あ、1%ぐらいで通される奴でチュね。これは……」
「収奪の苔竜呪は私の影響も受けているでしょうしねぇ……」
とにかく薬は出来た。
そして、今後必要になるだろうと言う事で、私はそれぞれの眼宮に生息する竜呪の肉を各々壺に収め、今回と同じように『ダマーヴァンド』の毒液と各種香草で漬け込み始めた。
念のために『抗怖苦薬』の再作成準備もしておく。
そうしている間に、今日のログイン時間は終わったのだった。
09/19 抗怖苦薬の効果調整
09/20 抗怖苦薬の効果調整




