667:メイクパレスアイテムズ-4
「よし、焼けたわね」
『早速食べてみるでチュよ。たるうぃ』
暗梟の竜呪の解体が終わり、素材を分けるのも終わった。
と言う訳で、集まりを一度解散。
各自それぞれにやりたい事をする事にした。
で、私は現在、暗梟の竜呪の肉をただ焼いて、口に運んでいる。
「モグモグ、んー……鶏肉ねぇ……それもお高い鶏肉って感じ」
『梟なのに鶏の肉なんでチュか』
「まあ、猛禽類の肉よりは扱い易いし、使い道も多いと思うわよ」
≪呪い『劣竜式呪詛構造体』がアップデートされました≫
味の評価については美味しいの一言で終わらせていいだろう。
キビャックのように臭かったり、噛み切ると液状化したりと言った特殊なものはないようだし。
「で、『劣竜式呪詛構造体』がアップデートされたわね」
『でチュか』
では本題。
『劣竜式呪詛構造体』の強化についてだ。
私の『劣竜式呪詛構造体』は五つの呪いを含むが、そのいずれにも強化がある感じだ。
具体的には……
・劣竜肉:デスペナである最大HP低下と干渉力低下の状態異常の付与量が最大値の30%から25%に緩和。
・劣竜骨髄:純粋強化、デメリットに変化なし。
・劣竜皮:純粋強化、デメリットに変化なし。
・劣竜瞳:対象ごとに発動のオンオフが可能になると同時に、発動までの時間が2分に、発動する邪眼術の数も1~2個分に強化。
・劣竜血:発動する邪眼術の数が2~6個に強化。
と言う感じである。
『結構強化された感じでチュか』
「そうね。特に劣竜瞳の強化が大きいわ」
『これまでの集団行動中はかなり気を使っていたでチュからねぇ。たるうぃ』
1段階目の強化でこれなら、残り8種類の竜呪の肉を『虹霓鏡宮の呪界』で手に入れ、食べたら、相当の強化を見込めそうだ。
『しかし、こうなってくるとざりちゅの強化もして欲しいでチュねぇ……化身ゴーレムも込みで、でチュよ?』
「ザリチュの強化ねぇ……」
目に見えない部分、あるいは感じ取れなかった部分でも変化が起きていないか、念のために私は柔軟体操のような動きをする事で、確かめていく。
その間にザリチュの要望に応えるわけだが……。
「正直なところ、ザリチュ本体にせよ、化身ゴーレムの装備にせよ、『飢渇の邪眼・2』の強化を終えて、飢渇の眼宮が解放されてからにするべきだとは思うのよね」
『確かにざりちゅとの相性的にはそれが正解だとは思うでチュよ。でも、たるうぃや他のプレイヤーたちが強化される中で、ざりちゅだけ置いてけぼりと言うのは、ちょっと悲しいでチュよ』
まあ、本格的な強化をするタイミングかと言われたら、ちょっと微妙なのが現状である。
「じゃ、本格的じゃない強化はしましょうか」
と言う訳で、別な事をする。
『具体的には何をするでチュ?』
「竜呪の骨を砕いて、飢渇の泥呪の砂と『ダマーヴァンド』の毒液に混ぜ合わせる。そうして出来た新たな砂を材料に化身ゴーレムを作りましょう」
『折角だから奪塩奪水の水呪の結晶も合わせないでチュか?』
「んー……却下で。竜呪の骨と比べると、格が足りないと思うわ」
竜呪の骨は……うん、あまり使っていないので、大量に余っている。
と言う訳で、竜呪の骨、5種類を粉砕機にかけて、砂状になるまで砕いていく。
どれも非常に頑強で、その後を考えると呪いを抜く訳にもいかなかったので、相当の時間がかかったが……これまでにアップグレードを重ねて来た私の保有設備は頑張ってくれた。
5種類の竜呪の骨は無事に砂状になり、飢渇の泥呪の砂、『ダマーヴァンド』の毒液と撹拌機によって均等に混ぜ合わされた。
「えーと……etoditna『毒の邪眼・3』、ezeerf『灼熱の邪眼・3』、ytilitref『飢渇の邪眼・2』、pmal『暗闇の邪眼・3』」
『大盤振る舞いでチュねぇ』
そうして混ぜ合わされた泥の塊のような物体に向けて各種邪眼術を撃ち込んでいき、乾燥させていく。
「それだけ特別製って事よ。だから出来る限り使い捨てにはしない方向で行きましょう」
『分かったでチュ』
最後に呪怨台で呪う事で完成。
鑑定をしてみる。
△△△△△
竜呪骨の邪毒砂
レベル:40
耐久度:100/100
干渉力:150
浸食率:100/100
異形度:20
竜呪の骨を加工し、脅威的な毒を染み込ませて作られた黒い砂。
触れたものの心身魂を蝕み、災いをもたらす危険物でもある。
注意:接触したものに乾燥(10)、毒(周囲の呪詛濃度)、灼熱(周囲の呪詛濃度)、気絶(1)、恐怖(周囲の呪詛濃度)、暗闇(周囲の呪詛濃度)のいずれかの状態異常が付与されます。付与の判定は接触時、前回の判定から10秒間触れ続けた時に行われます。
▽▽▽▽▽
「うわエグい」
『ざりちゅは徒手空拳での戦い方も学んだ方が良さそうでチュね。これは……』
改めて言う事でもないかもだが、ザリチュの渇砂操作術によって生み出されるゴーレムは、素材になった砂の性質も引き継ぐ。
つまり、竜呪骨の邪毒砂と言う危険物を用いて作り出されたゴーレムたちも、同様の能力を持つわけである。
うん、今後予想される強化も含めて、実にエグイ事になりそうだ。
『とりあえずたるうぃ』
「分かってるわ。『化身』」
私が『化身』の発動キーを引き、化身ゴーレムが作成される。
見た目に変化はないが、中身はこれまでとは別物である。
実質的な耐久度も上がっているだろうし、色々と期待したいところだ。
「さて次は……そろそろアレがいい感じかしらね?」
「アレでチュかぁ……どうなっているんでチュかね?」
では、次に移るとしよう。
収奪の苔竜呪対策として仕込んでいたアレの加工だ。