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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
10章:『虹霓鏡宮の呪界』

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657:ボイルケイヴ-2

「えーと、pHの測定機、スポイト、ビーカーっと」

『完全に理科の実験のそれでチュね』

「完全にも何も、こんなのただの実験であり測定よ。効率よく中和をするなら、中和に必要な液体の比を出すのは必須だもの」

『でチュかー』

 『ダマーヴァンド』に帰ってきた私は早速入手した強酸と強塩基の中和を開始する。

 こういう時はやはり第三回イベントで入手した各種機器が役に立つ。


「んー、これで良し。呪いのせいか、元となっている液体の性質のせいなのか、比率が微妙にずれていると言うか、誤差が生じるようになっているみたいね」

『面倒でチュねぇ』

「まあ、強酸と強塩基と言うだけで選んだ液体でやっているなら当然だとも思うけど。そもそも中和したら必ずpHが7になる訳でもないのよ」

『でチュかぁ』

 測定完了。

 とりあえず良さそうな比率は分かったので、大型のビーカーに両方の液体を比率に従って投入し、中和。

 後は水分を蒸発させれば、塩が析出されるはずだ。

 と言う訳で、小さめの熱拍の樹呪の果実を恐羊の竜呪の毛で作った糸で吊るし、その状態で果実をビーカーの中に投入する。


『時間がかかりそうでチュかね?』

「そうね。でもまあ、こればかりは仕方がないと思うわよ」

 『死沸焼徳の呪界』産の液体であるためか、熱拍の樹呪の果実の熱量を以ってしても蒸発はゆっくりとしたものだ。

 が、それでいい。

 塩の析出はゆっくりとやった方が奇麗な結晶が出来ると相場が決まっているし。

 それに、この時間でやっておくこともある。


「じゃ、対策アイテムも作っていかないと」

『消灯空間対策の灯りでチュね』

「ええそうよ」

 私は熱拍の樹呪の果実の周囲を囲うように、適当な素材で囲いを作る。

 そして囲った二つの果実を縄で結んで、両端の打撃部が光り輝くボーラを作ると、呪怨台で呪って仕上げをする。

 鑑定結果はこんな感じだ。



△△△△△

熱拍の樹呪のボーラ

レベル:26

耐久度:100/100

干渉力:130

浸食率:100/100

異形度:18


熱拍の樹呪の果実を加工して作られたボーラ。

両端の打撃部からは常に高温の熱波と眩いばかりの輝きを放っており、絡みついた相手の燃え上がる姿を衆目に晒す。


与ダメージ時:灼熱(周囲の呪詛濃度×10)


注意:近くにあると、一定時間ごとに距離に応じた火炎属性のダメージと灼熱の状態異常が付与されます。

▽▽▽▽▽



『久しぶりのボーラでチュねぇ』

「そうね。ここ最近は使う機会がなかったけど、今回は使う事になると思うわ。十中八九ワイバーンでしょうし」

『鳥かつ竜だったら、最低でも飛行戦闘中心のドラゴンでチュからねぇ。大きく外れる事はないと思うでチュよ』

 と言う訳で、熱拍の樹呪のボーラを十数本作製し、消灯空間対策は製作完了。

 当たれば相手の動きを封じた上でダメージを与え、消灯空間でも相手の姿を晒してくれるはずだ。

 もしも私の予想通りに相手がワイバーンなら、命中さえすれば大幅に戦闘を楽にすることが出来る事だろう。


「こっちもそろそろ良さそうね」

『みたいでチュね』

 そうして熱拍の樹呪のボーラを作っている間に、熱拍の樹呪の果実を核兼熱源として析出させた塩の結晶も出来上がったようだ。

 赤、黒、紫色が入り混じった大きな結晶が出来上がっている。

 では、こちらも鑑定してみるとしよう。



△△△△△

死沸焼徳の結晶

レベル:25

耐久度:100/100

干渉力:130

浸食率:100/100

異形度:18


『死沸焼徳の呪界』に存在する液体から得られた塩の結晶。

大量の呪詛と熱を内包しており、組み込まれたものは死を沸かせ、徳を焼き、獣の如き姿を露わにさせると共に正気を求めるようになる。


注意:食べると異形度に応じたダメージを受けます。

注意:食べると火炎属性と呪詛属性のダメージを受けます。

▽▽▽▽▽



「ふうん……」

 鑑定結果についてはクカタチに送っておく。

 当然入手方法もだ。

 それにしても……魔物の呪詛と反魂の呪詛の影響が色濃く出ているように感じる。

 まあ、クカタチは『七つの大呪』の中からその二体を選んだようであるし、影響が出ていてもおかしくはないか。


『これ、使って大丈夫なんでチュか? たるうぃ』

「たぶん大丈夫よ。『暗闇の邪眼・2(タルウィダーク)』」

 私は死沸焼徳の結晶を封印中の暗幕の梟呪の死体の中に投入する。

 ついでに香草類も再投入し、毒液の方に『暗闇の邪眼・2』を撃ち込んでおく。

 なお、今日のゲーム開始時に死体の中に投入した炎視の目玉呪の毒腺と恐羊の竜呪の墨袋は既にドロドロに溶けてしまったようで姿は確認できず、放出される臭いは割と恐ろしい事になっている。

 腐ってはいないので、セーフだとは思うが。

 うん、再封印。

 明日の私には覚悟を決めて貰うとしよう。


「さて残りは……暗闇の状態異常そのものを治す手段かしらね」

『確かに準備はしておいた方がいいと思うでチュ』

 『暗闇の邪眼・2(タルウィダーク)』の強化に当たって必要な対策で後やるべきなのは、暗闇の状態異常を治す手段の確保。

 とは言え、ドゴストは私作成のインベントリお馴染みである、副作用がないと有毒化する仕様持ち。

 詰め込む回復アイテムは効果を上げるためにも、多少のデメリットを持つことになるだろう。


「じゃあまずは材料の確保ね。炎視の目玉呪を……十匹くらいはとりあえず狩ろうかしら」

『でチュねー』

 そうして素材を確保し、暗闇回復の代わりに軽微な灼熱の状態異常を受ける回復アイテムを作り上げたところで、私はログアウトした。

 さて、明日はまず『暗闇の邪眼・2』の強化からだ。

作中のタルの行動は割と適当な面もありますので、真似はしないでくださいね。

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― 新着の感想 ―
[一言] ph7にほぼぴったり合せられる精度の測定って何をしたんだ…まあタル(ry
[一言] >作中のタルの行動は割と適当な面もありますので、真似はしないでくださいね。 うん、そうね、中和前の液体の性質をしっかりと調べず大体のPhだけ調べて中和しようだなんて、毒ガス発生してもおかし…
[一言] 懐かしきミョウバン結晶実験……。 >明日の私には覚悟を決めて貰うとしよう。 それ、明日になったら昨日の自分を殴りたくなるやつですよねw >作中のタルの行動は割と適当な面もありますので、真…
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