648:メイクパレスアイテムズ-3
「どう弄っていくでチュか?」
「そうね……まずは新しい打撃部を作りましょうか」
『陽憑きの錫杖呪』ネツミテは本体と呪詛の紐で結ばれた三つの打撃部を持っている。
打撃部の見た目はデンプレロの尾の先に似ており、私が振るって相手に当たれば、相手の体に突き刺さり、状態異常を付与する事が出来る。
今回変えるのはこの部分だ。
「じゃ、早速削っていきましょうか」
「でチュね」
私は鼠毒の竜呪の前歯、恐羊の竜呪の牙、牛陽の竜呪の牙、虎絶の竜呪の牙を持ってくると、丁寧に削っていくことで涙滴型に近いが、フレイルの打撃部とした場合には尖った部分が相手に突き刺さるように形を整えていく。
なお、どの打撃部にも『ダマーヴァンド』の毒液と私の血は十分に染み込ませておく。
「四つでチュか? ねつみての打撃部は三つでチュけど」
「四つよ。まあ、見てなさい」
私は呪詛支配をネツミテの持ち手から呪詛の紐へと及ぼしていき、呪詛の紐を解く事によって今の打撃部をネツミテから取り外す。
そして取り外した打撃部の代わりに、新しく作った打撃部を結び付けていく。
これで三つの打撃部の取り付けは完了。
でだ。
「『熱波の呪い』。呪詛を編み込んで紐にしてっと」
四つ目の打撃部を取り付けるために新たな呪詛の紐を出現させ、ネツミテと打撃部、両方に結んでいく。
「繊細な力業って感じでチュねぇ……」
「適切に力を発揮するためには繊細な技術が必要だから、何もおかしくはないわね」
出来上がったそれを軽く振ってみる。
うん、四つの打撃部が私の振るうネツミテの動きに合わせて、支障なく動いている。
では呪怨台に乗せよう。
「むむむ……etoditna『毒の邪眼・3』、ezeerf『灼熱の邪眼・3』、ekawa『気絶の邪眼・3』、evarb『深淵の邪眼・3』」
まあ、今回は本格改修ではなくマイナーチェンジの類だ。
手は抜かないが、本気を出す事もない。
呪詛支配に『七つの大呪』の活性をしつつ、対応する邪眼術を呪怨台に乗せたネツミテに向かって放つぐらいだ。
「出来上がりね」
「みたいでチュね」
と言う訳で、問題なく完成。
早速鑑定してみる。
△△△△△
『陽憑きの錫杖呪』ネツミテ
レベル:装備者のレベルと同じ
耐久度:100/100
干渉力:装備者の干渉力と同じ
浸食率:100/100
異形度:23
様々な素材を組み合わせて作られた、着用者の意思に応じて様々な姿を見せる杖にして指輪。
この世ならざる者に通じる気配を漂わせており、正当な所有者以外が着用すれば、恐ろしい呪いに襲われる事だろう。
与ダメージ時:装備者が習得している、対応する邪眼術の中から、ランダムに一種類の邪眼がコスト、CT無しで発動する。
対応邪眼術:『毒の邪眼・3』、『灼熱の邪眼・3』、『気絶の邪眼・3』、『深淵の邪眼・3』
※これらの効果は錫杖形態でのみ効果を発揮する。
周囲の呪詛濃度と気温に応じて強度が上昇する。
装備者による火炎属性攻撃の威力が20%ほど上昇する。
装備者による呪詛属性攻撃の威力が20%ほど上昇する。
装備者の周囲15メートル以内に存在する呪詛の支配を助ける。
周囲の呪詛、エネルギーの一部を吸収する事で耐久度が回復する。
耐久度が0になっても、一定時間経過後に復活する。
装備者の意思に応じて、指輪形態と錫杖形態、どちらかの形態に変形させる事が可能。
自己意思こそないが、呪いの塊であるその身は幾つかの呪術を習得しており、装備者がトリガーを引くことで使用が可能。
『太陽の呪い』『熱波の呪い』『埋葬の鎖』
注意:この装備をタル以外が装備した場合、1分ごとに着用者の最大HPと同値の恐怖が付与される。
注意:装備者は一定時間ごとに火炎属性ダメージ(微小)、灼熱(周囲の呪詛濃度)の状態異常を受ける。
注意:装備者の異形度が22以下の場合、1分ごとに火炎属性ダメージ(大)を受ける。
注意:装備者のレベルが35以下の場合、1分ごとに重力増大(周囲の呪詛濃度)を受ける。
注意:称号『竜狩りの呪人』を持たないものが装備している間、1秒ごとに灼熱(1,000)を受ける。
注意:この装備の周囲の呪詛濃度が10以下の場合、着用者の受けるダメージが増える(極大)。
注意:この装備を低異形度のものが見ると嫌悪感を抱く(極大)。
▽▽▽▽▽
「レベルと干渉力の部分がザリチュと同じ仕様になったわね」
「それよりも問題がある部分が幾つもある気がするでチュねぇ……」
ザリチュの言う問題のある部分は、錫杖形態で殴った時に与える状態異常が私の邪眼術……それも伏呪付きの邪眼術になった点だろうか。
これで伏呪を付与した後の相手へ暇だからと殴る訳にはいかなくなった。
まあ、殴らなければ問題はないわけだが。
後は……レベル低下、異形度低下、それにあるのかは分からないが、称号の剥奪がこれまでよりも怖くなったぐらいか。
「気を付ければ大丈夫よ。たぶん」
「だといいんでチュがねぇ」
振るう感覚は問題なし。
ネツミテの打撃部を今後増やす事も……たぶん大丈夫だ。
「さて、今後の為に今作るべき物の残りは……」
「恐怖の眼宮に居る収奪の苔竜呪の咆哮対策となる恐怖の耐性上げになるような何かじゃないでチュか?」
「まあ、それよね。と言っても、こっちはそれなりに時間をかけた方が都合が良さそうだけどね」
では本日最後の作業。
壺に入れた『ダマーヴァンド』の毒液に各種香草を投入、それから適度な厚みを持たせた恐羊の竜呪の肉も投入して、蓋をする。
「一先ずはこれを暫く放置するわ」
「でチュか」
料理にするか、薬にするかは出来次第だが……たぶんこれを加工すれば、一時的に恐怖と言う状態異常への耐性を上げる何かは出来るだろう。
と言う訳で、今日の作業はこれで終わりにすることにした。
09/03誤字訂正