645:スタンパレス-1
「「「ごちそうさまでした」」」
「焼肉パーティはこれで終わり?」
「ええそうね。これで終わりよ」
いやぁ、食べた食べた。
現実では滅多に食べられないような牛肉をこれでもかと言うぐらいに食べられたので、私的には大満足である。
で、焼肉パーティが終わったところでライトリから話があるようだ。
「それでライトリ。話は?」
「牛陽の竜呪を狩ったのなら、次は虎絶の竜呪を狩りたい」
「素材の為に?」
「その通り」
ライトリの話の内容は虎絶の竜呪について。
まあ、鼠毒の竜呪、恐羊の竜呪、牛陽の竜呪と狩ってきて、そのいずれも十分な数を入手できるだけ集めたのだから、虎絶の竜呪の素材が欲しいと言うのは当然の流れだろう。
「虎絶の竜呪からなら、防御能力に優れた鱗を回収出来るはず」
「爪、牙、角、肉……色々と得られる可能性はあるでしょうね」
特に大きいのはライトリが言ったとおり、鱗だろうか。
他の三体の竜呪の体は毛皮に覆われており、鱗を持たないので、当然剥ぎ取ることも出来ない。
だが、虎絶の竜呪ならばほぼ間違いなく虎柄の鱗が剥ぎ取れる。
それは、虎絶の竜呪の防御力の一端を担っている素材であり、誰もが期待して当然の素材でもある。
他の素材もほぼ間違いなく魅力的な素材だろう。
「でも、虎絶の竜呪は無策で戦える相手じゃない」
「そうね。戦闘のペース……いえ、テンポかしら? とにかく虎絶の竜呪の能力から考えて、先に話し合いをしておくのは当然だと思うわ」
「まあ、イベントで見た限り、アレ相手に戦闘中に打ち合わせとか、自殺行為と同じでしょうね」
だが虎絶の竜呪は現状『虹霓鏡宮の呪界』で狩れる可能性のある竜呪の中では、恐らく最も強い相手である。
おまけにその能力は高速戦闘を強要する物でもある。
事前に話し合いをしておくのは当然だ。
「とりあえず『光華団』と検証班で探れた範囲の情報は出す」
「分かったわ」
さてライトリの情報によればだ。
まず虎絶の竜呪は三つの段階を持っているらしい。
一つ目はある種の無敵モード、あるいは睨み合いの期間。
外からの攻撃はほぼ無効化され、呪術による攻撃を仕掛けると、気絶を付与された上で虎絶の竜呪の目の前に転移させられる。
二つ目は弱点モード、あるいは虎絶の竜呪が気絶攻撃をする直前の期間。
襟巻を光らせつつも、気絶攻撃を仕掛ける直前で、このタイミングで攻撃をする事に成功すれば、大ダメージを与えることが出来る。
三つ目は暴走モード、あるいは気絶攻撃を終えてから、また無敵モードに入るまでの期間。
帯電し、暴れ回り、周囲に向かって激しく攻撃をする状態で、普通にダメージを与えることは出来るが、そんな事をしている暇がない状態でもある。
うん、私は二つの段階だと思っていたが、確かにライトリの言う三つの段階の方が、納得がいく感じだ。
「弱点モードへの攻撃に欲しいのは即時起動と言うよりは、動作キーによる素早い起動と即座に着弾する事。今回はそこを考えなくてもいいと思うけど」
「そうね。『気絶の邪眼・3』もだけど、私の邪眼術なら弱点モードに合わせるのは難しくないと思うわ」
「逆にタルが居ない状態だと、そこが困り所よね。何人かはタルの『気絶の邪眼・3』を真似た、劣化版気絶の邪眼とでも言うべきものを持っているけど……まあ、それはまた今度考えればいいわね」
そして、三つの段階が明らかになれば、私たちが取るべき戦術もおのずと見えてくる。
「だな。今考えるべきは弱点を突いた直後に俺たちがどんな攻撃を撃ち込むかだ」
「出来るだけ高威力の攻撃を、だがお互いの攻撃に巻き込まれないように考える必要はあるな」
「順番、向き、いずれも事前に打ち合わせて、規律正しくだな。間違えれば、同士討ちだけではすまない」
「……。最初で仕留めなければ、暴走状態の敵が動き出す、か」
つまり、無敵モード中に敵を包囲、弱点モードに私が邪眼術を放って隙を生み出し、その後の暴走モードに入るよりも早く他のプレイヤーが攻撃を集中させ、暴れさせる事無く仕留める。
これが私たちの取る戦術である。
「さて着いたわね」
「でチュねー」
「では、いつも通りに防ぎますね」
と言う訳で、私たちは気絶の眼宮の前にまでやってきた。
そしてシロホワのバフを貰った上で気絶の眼宮へと突入する。
「ダイガアアアァァァァ!!」
気絶の眼宮は灼熱の眼宮に比べると凹凸の少ない荒れ地であり、その空は雲に覆われ、雲からは時折雷のように炎が落ちてくる。
で、どの眼宮でもそうだが、入り口の周囲にプレイヤーが居ない状態で眼宮に侵入したプレイヤーが出ると、直ぐに特定数の竜呪が出て来るようになっている。
と言う訳で突入と同時に、一体の虎絶の竜呪が私たちに襲い掛かってくる。
「さて早速ね」
「でチュね」
「ま、二回三回程度ならミスっても守ってやれるから、安心して狙ってくれ」
「虎肉パーティもやる価値はあると思うから、数を稼ぎましょう」
「ダイガッ!?」
まあうん、襲い掛かる虎絶の竜呪には申し訳ないが、こっちは準備万端なのだ。
「ダイガアアァァァ!?」
そんなわけで、私たちによる虎絶の竜呪、高速周回はとても順調に進み、無事なパーツを繋ぎ合わせれば10個程度になる量の、虎絶の竜呪の死体を手に入れたのだった。
≪タルのレベルが39に上がった≫
「あ、レベル上がった」
「随分かかったでチュねぇ。やっぱり人数が多い分だけ、経験値が分散しているんでチュかねぇ」
後、周回が終わったところで、ようやく私のレベルが1上がった。
△△△△△
『虹霓竜瞳の不老不死呪』・タル レベル39
HP:2,835/4,140 (-1233)
満腹度:87/150 (-45)
干渉力:138
異形度:26
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪圏・薬壊れ毒と化す、遍在する内臓、劣竜式呪詛構造体(劣竜血、劣竜骨髄、劣竜肉、劣竜瞳、劣竜皮)
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の王』、『灼熱の達人』、『沈黙の名手』、『出血の達人』、『淀縛使い』、『恐怖の達人』、『小人使い』、『暗闇使い』、『乾燥使い』、『魅了使い』、『重力使い(増)』、『石化使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『3rdナイトメアメダル-赤』、『七つの大呪に並ぶもの』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『竜狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『偽神呪との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹霓竜瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』、『雪山侵入許可証』、『海侵入許可証』、『いずれも選ばなかったもの』、『呪海渡りの呪人』、『泡沫の世界の探索者』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・3』、『灼熱の邪眼・3』、『気絶の邪眼・3』、『沈黙の邪眼・2』、『出血の邪眼・2』、『小人の邪眼・2』、『淀縛の邪眼・2』、『深淵の邪眼・3』、『飢渇の邪眼・2』、『暗闇の邪眼・2』、『魅了の邪眼・1』、『石化の邪眼・2』、『重石の邪眼・2』、『禁忌・虹色の狂眼』
呪術・原始呪術:
『不老不死-活性』、『不老不死-抑制』、『風化-活性』、『風化-抑制』、『転写-活性』、『蠱毒-活性』、『再誕-活性』、『魔物-活性』、『反魂-活性』
呪術・渇砂操作術-ザリチュ:
『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』、『鼠』、『化身』、『噴毒の華塔呪』、『禁忌・虹色の狂創』
呪術-ネツミテ:
『太陽の呪い』、『熱波の呪い』、『埋葬の鎖』
呪術-ドロシヒ:
『虚像の呪い』、『貯蓄の呪い』
呪法:
『呪法・増幅剣』、『呪法・感染蔓』、『呪法・貫通槍』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・破壊星』、『呪法・呪宣言』、『呪法・極彩円』、『呪法・呪晶装填』、『呪法・逆残心』
所持アイテム:
『路竜の包帯服』ジタツニ、『竜鱗渇鼠の騎帽呪』ザリチュ、『陽憑きの錫杖呪』ネツミテ、『星憑きの玉輪呪』ドロシヒ、鑑定のルーペ、鼠毒の竜呪の歯短剣×2、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、鼠毒の竜呪の埋葬袋、フェアリースケルズ、蜻蛉呪の望遠鏡etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール、呪詛貯蓄ツール×5設置、『熱樹渇泥の呪界』・『入子屋敷の呪地』・『塩砂湖畔の呪地』接続済み
システム強化
呪怨台参式・呪詛の枝、BGM再生機能、回復の水-2、結界扉-2、セーフティ-2、長期保管用カプセル、『満腹の竜豆呪』ハオマ
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