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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
10章:『虹霓鏡宮の呪界』
639/1000

639:テラーパレス-3

本日一話目です。

「ーーー……」

「ふぃー……」

「やっと終わった……」

「流石に骨まで砕くとなると面倒くさいな……」

「あ、角はしっかり残ってるから、こっちで回収しとく」

「お願いします」

 塔状の緑色の何かを目指すこと暫く。

 私たちは次々に襲い掛かってくる恐羊の竜呪を地道に狩りつつ、少しずつ進んでいく。

 地上ではあり得ない、スケルトンになってもなお襲い掛かってくる敵の処理は厄介だが、面子が面子であるし、先手を取って『恐怖の邪眼・3(タルウィテラー)』を入れることであちらからの恐怖付与を防いでいるので、何とかなっている。

 なお、スケルトンになっても襲い掛かってくる都合上、『埋葬の鎖(ボレヴァルグ)』を使わなければ、回収できる素材は限定的だ。

 具体的に言えば、持ち手さえ付ければ、そのままマントデアや巨人二人の使う盾として使えそうな大きさの角か、数本の歯ぐらいなものである。


「さて、だいぶ近づいてきて、もう周囲には恐羊の竜呪も居ないし、相手の姿もはっきりと見えてきたわけだけど……」

「「「……」」」

 そうして私たちは塔状の緑色の何かがはっきりと見える位置にまでやって来た。


「アレを見てどう思う?」

「どうと言われてもでチュねぇ……」

「遂に本性を現したかとは思ったな」

「それは俺も思ったな」

「これまでも散々おかしいとは言われていましたからね。タル様が良く使っていましたし」

 塔状の緑色の何かは、やはり塔状の何かとそれに巻き付く緑色の何かだった。

 で、塔状の何かの正体だが、そちらは大量の骨、大小様々な……主体としては大型爬虫類に似た生物の骨を積み上げて塔にしたものだ。

 そして、この距離にまで近づいた事で分かったことが、この骨の塔は悍ましい程の量の呪いを生産し、蓄え、周囲に放出する事で、特殊な場を形成しているようだった。

 つまり、大多数の予想通り、この骨の塔を除去する事によって、恐怖の眼宮に存在する即時ゾンビ化の仕掛けを解除できるのだろう。


「あ、やっぱりアレってそうなのか」

「……。この場の呪詛濃度からして一筋縄ではいかないだろうな」

「と言うか、俺らの装備に含まれている奴大丈夫なのか?」

「そこは大丈夫。少なくとも今は妙な干渉を受けていないわ」

「タルが感知してないなら、まあ大丈夫か」

 では、そんな骨の塔に巻き付いている緑色の何かとは?

 まあ、簡単に言えば、シダ状の葉を持つ蔓植物。

 骨の塔に突き刺さる方の末端は苔むしていて、骨の塔の頭頂部にある方の末端は肉厚の花弁を持った真っ赤な花が咲いている。

 で、華の真ん中からは、ドラゴンの顔が出て来ていて、こちらを睨みつけている。

 要するにだ。


「どう見ても垂れ肉華シダが本性を現わしたようにしか見えません。本当にありがとうございました」

「それな」

「ですよねー」

「これはブラクロが正しい」

「逆に安心したまであるよな。何と言うか」

 カース化とドラゴン化を遂げた垂れ肉華シダが骨の塔に巻き付いているようにしか見えなかったのである。

 うん、これまで散々便利素材として活用してきた素材だし、こういう秘密が隠れているのは、むしろ安心する要素かもしれない。


「なんにせよ、まずはタルが鑑て……」

「そうね……」

 では、誰かが言ったとおり、駆除をするためにもまずは鑑定を。

 そう思って私が『鑑定のルーペ』に手を掛けた時だった。


「ーーーーー!」

「っ!?」

「「「!?」」」

 竜化した垂れ肉華シダがこちらに向かって咆哮を上げる。

 それだけで、私に恐怖(850)と言うとんでもないスタック値の状態異常が付与され、全身が異常に震えると共に力が抜け、身動きが取れなくなる。

 だが、私の症状はこれでもまだまだ軽微なものだった。

 プレイヤーによっては四桁の恐怖が付与され……。


「うぐっ……」

「心……臓……が……」

「こんな……事が……」

 そのまま息絶えてしまったプレイヤーまで居た。

 幸いだったのは、彼らまで即時ゾンビ化して、こちらに襲い掛かってくるような事が無かったことだろうか。

 いや、幸いでもないか、結末にほぼ変わりはないのだから。


「ジジジジジ……ジア、ジジダバガ……」

「こ、こ、こんなもの、ど、どうすれば……」

「お、怖気づいて死ぬとは……い、一生のふか、不覚だ……」

「せめ、せべ、鑑定を……」

「ざ、ざりちゅまで、きょきょきょうふとととか、しゃしゃれにならなでチュよよよ……」

 竜化した垂れ肉華シダが、シダの葉を翼や手のように使いつつ、骨の塔に巻き付いている体を少しずつ、少しずつ、私たちに見せつけるように外していく。

 その間に私はどうにか震える両手で『鑑定のルーペ』を手に取って、相手に向ける。


「こご、れれわ……」

 鑑定結果が表示された。



△△△△△

収奪の苔竜呪 レベル1

HP:???/???

有効:???

耐性:毒、灼熱、気絶、沈黙、出血、小人、巨人、干渉力低下、恐怖、乾燥、暗闇、魅了、石化、質量増大、重力増大

▽▽▽▽▽



「雑ぅ!」

「ジアジダバァ!」

 はい、どう見ても鑑定結果が偽装されています。

 本当にありがとうございました。

 そして、鑑定と言う行為が癇に障ったのだろう。

 竜化した垂れ肉華シダ改め収奪の苔竜呪は私含めた数人のプレイヤーの体をまとめて食い千切り、その一撃だけで私のHPは尽きたのだった。


 ただ、死に戻る時に少し感じた。

 収奪の苔竜呪もまた端末に過ぎず、得た情報と呪いは何処かに送られている、と。

08/27誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] ひょっとしてこれが巷に聞くぴえん(恐怖付与)超えてぱおん(心停止)超えてガオン(直食い)ってやつ? それにしてもやっぱり多頭竜がいるせいか竜が鳴き声を発するために大口を開けたら酒を叩き込み…
[一言] 羊の多頭竜→シダ=羊歯、アジダハーカ≠多頭竜 で恐怖の眼宮への配置に納得 アジダハーカ→シダ葉華 垂れ肉華シダ→シダれ肉華シダ 収(シゅう)奪(ダつ)の苔竜呪 もう全部シダが関係してる気が…
[一言] ≫「心……臓……が……」 トゥンク………(心停止) 本性を少しだけ現したシダ……色々と雑ぅい!? こやつ……レベルを誤魔化している事や、所属を隠す気がないっ!?
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